ーーハコニハ・ノクスゼロ入り口

ツヴァイ

なんで…こんなことになっちゃったんだろう…

あの……を差し置いて…

あんな子…………清々するけれど…

ツヴァイ

どうして、俺なんかが急に…勇者なんて…

ツヴァイ!!

ツヴァイ

……あ…

アインス

良かった、間に合った…!

ツヴァイ

アインス…

アインス

みんな意地悪だよね!ツヴァイの出発の時間、間違って教えてくるんだ…疑って良かったよ

ツヴァイ

……アインス、ごめん、俺…

アインス

ごめんって、何が?

ツヴァイ

……勇者…本当は、お前が勇者になるべきだったのに…俺があの時、冗談半分で…剣を…

アインス

ああ、それか!
確かにびっくりしたよね…僕にしか抜けないって言われてたのに、君、あっさり抜いちゃうんだもん!!

アインス

何も謝ることはないよ。勇者の剣は、僕じゃなくて君を選んだ…剣の選択は絶対だよ。だから、自信を持って!

ツヴァイ

アインス…

アインス

君一人じゃ、ちょっと心配だし、正直ついて行きたいけれど…旅の仲間は決まっているからね。

アインス

ちゃんと仲間を頼って、強くなって…魔王を倒してね。応援してる!

アインス

あっ…でも、無理はダメだよ。君、すぐに無理するんだから…

ツヴァイ

………うん

アインス

ツヴァイ…

ツヴァイ

……!

アインス

いってらっしゃい。僕、待ってるから。

ツヴァイ

…………うん

ツヴァイ

行ってきます。

ツヴァイ

………そうだ…あの時…あんなこと、思わなければーー

一週間前

ーーハコニハ・ノクスゼロ郊外

ツヴァイ

………誰か来た…

ついに来週だってな

ああ…アインス様が旅立たれるんだっけか

そうそう!我らが勇者様がよ!!

やっと報われるんだな…あんなきっつい『修行』…俺だったら絶対投げてたぜ。

な!ホントすげえや、アインス様は…

おら、餌だ

ツヴァイ

………

んだよ…あんまし見んなよ忌み子!!死んだらどうすんだ!!

落ち着け。あまり突っかかると、本当に殺されるぞ

ちっ…お前も、魔王と一緒にアインス様が消してくれれば良いのにな…

……まあ、それは言えてるな。勇者が生まれた年に、忌み子まで一緒に生まれちまうなんて…とんだ厄年だ

おまけにアインス様は、何を思ったかお前をたいそう気に入っておられる…それを知らず、お前に手を出して病院送りにされたやつは何人もいる…

なあ、どんな呪術を使ったんだよ?お前は、アインス様に何をした?

ツヴァイ

………

……はあ…めんどくせえ。アインス様が旅立たれたら、これを擁護するやつはいなくなる。

それまでの辛抱だ

ツヴァイ

………!

まあ、そうだな。アインス様さえいなければ、お前なんてーー

僕が…何だって?

なっ…!?

あ、アインス様…!!

アインス

食料を持ってきたら、すぐに帰るように言っていたはずだよね?無駄話をしている暇があったら、自警団の仕事に戻ったらどうだい?

は、はい!!申し訳ございません!!

失礼いたします!!

アインス

まったく…

アインス

大丈夫、ツヴァイ?何もされてない?

ツヴァイ

ああ、何もされてないよ。ありがとう。

アインス

なら良かった!

アインス

村の人は、みんな乱暴だからね…たまたま不幸が重なったってだけで、君は呪われてなんかいないのに…

ツヴァイ

アインスがそう思ってくれてるだけで十分だ。いつもありがとうな。

アインス

そんな…お礼を言われる様なことは、何もしてないよ。僕ら、友達だろう?

ツヴァイ

……ああ、そうだな

ツヴァイ

で…今日はどうしたんだ?こんな早い時間に来るなんて、珍しいじゃん。

アインス

ああ…実は、今日から『勇者の剣』が見られるようになったんだ。だから、一緒に見に行こうと思って…

アインス

お願いはしてみたけれど、やっぱり、君が抜刀式に参列するのは難しそうだから…

ツヴァイ

…そっか。

ツヴァイ

でも、頼んでくれたんだな…俺なんかのために…ありがとう。

アインス

ダメだったけどね。

アインス

君に一番見てもらいたかったのに…あんまりだよ

ツヴァイ

……見に行くんだろう?案内してくれよ

アインス

…そうだね。行こう!

ーーノクスゼロ・キング教会

これは、アインス様!剣の下見ですかな?

アインス

ああ。これから、長い旅の相棒になるんだから、早めに見ておこうと思ってね

左様でございますか…

……それも一緒に、ですか?

ツヴァイ

………

アインス

もちろん。ツヴァイも一緒に、ね。

……変な動きをしたら、つまみ出すからな

ツヴァイ

っ…!

アインス

しないよ。失礼だなぁ…

アインス

行こう、ツヴァイ

ツヴァイ

……うん

…なぜ、アインス様はあそこまで…

ツヴァイ

これが…勇者の剣…?

アインス

あはは、魔王の剣って言われた方が説得力有るね!!

ツヴァイ

本当だな…ふふっ…!

アインス

…来週…これを抜いたら、僕は…

ツヴァイ

……不安?

アインス

そりゃあ、ね…魔法も護身術も、一通り習って身につけてきたけれど…仲間と上手くやれるかとか、お金のやりくりとか…心配事は山積みだよ。

ツヴァイ

そう…だよな…

アインス

でも…ツヴァイのためにも、僕頑張るから!
絶対に、魔王を倒して帰ってくるからね!

ツヴァイ

……うん。頑張れよ。待ってる

ツヴァイ

アインスがいなくなる…か。

アインス

それにしても、おっきい剣だねぇ…僕、ちゃんと振れるかな?

ツヴァイ

……俺、アインスが帰ってくるまで、生きていられるかな…

アインス

ねえ、ツヴァイ!

ツヴァイ

な、なに…?

アインス

剣、握ってみる?

ツヴァイ

へ…?いいの?

アインス

ああ!抜けないのはわかってるし…僕が触らなきゃ、問題ないと思う!

ツヴァイ

本当?じゃあ…ちょっと持ってみるか

ツヴァイ

…もしこれで、俺が剣を抜くことができたりしたら…

ツヴァイ

アインスは、勇者にならなくて済むのかな…?
そうすれば、俺はずっと…

ツヴァイ

アインスに守ってもらえるかもしれない

ツヴァイ

…なんて…まあ、無理な話だけーー

アインス

…………へ…?

ツヴァイ

………は…?

ツヴァイ

いま…俺…なんで…?

アインス

つ、剣が…抜けた…?

ツヴァイ

あ、アインス…!

アインス

へ…?う、うん…!?

ツヴァイ

ど、どうしよう…!

アインス

どうしよう…!

ーーハコニハ・アンネシアへの道

ツヴァイ

……

ツヴァイ

それから、あれよあれよという間に話が進んじゃって…こんな…

ツヴァイ

村…もう、見えない…

ツヴァイ

アインス…俺は…どうすれば…!

アインス

ツヴァイ…

アインス

……どうしたの、みんな揃って…僕に何か用かな?

…お前、勇者じゃなかったんだな

アインス

そうみたいだね。勇者は僕じゃなかったみたいだ

そう…なら…

殺しても問題ないわね

アインス

…………

今までさんざん偉そうにしやがって…痛み付けられた奴らの恨み、思い知らせてやる!!

アインス

…………

死ね!!

Lv.1 忌み子のツヴァイ

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