やあ、奏さん。
今日はお話してくれるかな?

ぁ……。

蓮蛇が現れ、奏との会話を求めると奏はわずかに動きを止め、蓮蛇の方を伺う。

あの……す、好きって言ってくれた人と話すのってなんか、すっごく、緊張するんですけど。

緊張?

な、なに話していいか解らなくなるし!
それに、なんか、こう、意識しちゃう!

奏の言葉と可愛らしい恥じらう姿を見て、蓮蛇は目をぱちぱちさせた後、シュルシュルと舌を鳴らして目をつむる。

それはありがたいね。
奏さんが少なからず緊張するということは脈があるっていうことだからね。

脈?

私を異性として意識してくれているということだろう?

それは!でも、蓮蛇さんは……蛇、だし……。

たしかにそれは君には重要なことだろうね。

君には……?
蓮蛇さんには関係ないっていうんですか?

少し、むっとしたように問いかける奏。
蓮蛇はゆっくりと言葉を紡いで応える。

私は神の使いだからね。
相手の種族にはさほど拘らないんだよ。
まあ、意思が通じるなら。
という但し書きは付くけれどね。

……つまり、気にするのは私だけってことですか?

勿論、君が私を選ぶことで申し訳ないと思うこともあるよ。

え?

蓮蛇の言葉がよくわからない、という顔の奏に、蓮蛇はさらに言葉を紡ぐ。

私は神の使いとはいっても神そのものではないからね。
おたかの時も、お登勢の時も彼女たちには辛い思いをさせてしまった。

何か……酷いこと、したんですか?

した、というか出来なかったからこそ辛い思いをさせたかもね。
私と人間では子供ができないんだよ。

あ。

おたかも、お登勢も。
私の子供を産めなかったのが心残りだと言っていてね……。

……よくわからないです。

まぁそうだろうね。
少し意識はしてくれたようだけれど。
まだまだ奏さんは私に対して明確に好き、という気持ちがあるわけではないようだから。

もし、本格的に好きになったら……。
そういうことも、考えちゃうんでしょうか。

それは奏次第だね。
傍にいるだけでいい。
そんな好きも世界にはあるのだから。

そっかぁ……。

奏は、その言葉を最後にその日は口を閉ざした。
だが、その無言はネガティブなものではなく。

傍にいるだけでいい「好き」かぁ……。
蓮蛇さんは優しいし、一緒にいると落ち着くし。
でもそういう扱いってずるくないのかな。
いいのかな……。
また、話そう。

蓮蛇のことを考えるために必要な沈黙だった。

好きってこと、蓮蛇との障害

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