それじゃあ、母さん行ってくるよ。
時々手紙送るから・・・。
えぇ、無理はしないで。
辛くなったらすぐにでも帰ってきなさい、貴方までも父さんみたくなる必要はないのだから・・・。
ましてや、アルマニド地方の方には魔物という恐ろしい生き物が人々を襲っていると聞くは。
本当に無理はしないでね。
わかってる。
じゃあ、行ってくる!
行ってらっしゃい・・・。
さて、「ゼノア」でも呼びに行くか。
よぉ、遅かったじゃないの。
やっぱり手こずったのか?
ま、まぁね。
でも、珍しいねゼノアが僕が呼びに行く前に家の外で待ってるなんて。
まぁな、意外と持ってくものが少なくてさ。
準備に時間をかけるつもりが、大幅な時間短縮になったよ。
なるほどね、それじゃあ最後に師匠に挨拶していこうか。
そうだな。
そういえば、聞いたかアルマニド地方の事。
あ、あぁ母さんから少しね。
聞いた話だと、魔物とかいうやつら相手に国の凄腕の兵士ですらも歯が立たないらしいぜ。
そんなやつらが、こんなちんけな村に襲ってきたら一瞬なんだろうな・・・。
そうならないように、僕たちが修行に出るんだ、その間は「アラン爺」がなんとかしてくれるよ。
ははっ、そうだな。
!!
!!
いい反応だ。
それなら、背後からの攻撃にも対応できる。
アランさん。
あ、アラン爺。
おいおい、エデン「爺」はやめろよ、こう見えてまだ40代だぞ。
だったら、その不細工な髭、どうにかしろ。
わぁかってねぇなぁ、こいつがいいんじゃんよ。
お前にもいつか俺がこうして髭を伸ばしてる意味が分かる時が来るさっ!
そんなのはどうでもいいけど、父さんと僕がいない間に母さんに何かしたら殺すからね!
ま、まぁそういう話はさっ、お友達がいないところで・・・。
・・・。
あれま、完璧ゼノアにも引かれちまったなこりぁ。
ったく、エデンの野郎わざわざこういうときに言わなくてもな・・・。
ま、その話はさておきだ、お前たちも少しくらいは耳にしてると思うが魔物とやらの話だ。
実際俺も、戦ったわけではないがかなり強力らしい・・・。
恐らく力のつけた兵10人でやっと魔物を1体殺せるかどうかだと聞いてる。
つまりやつら(魔物)が500体なんて襲ってきたときにはこの村どころかエルニドみてぇな小国なんざ一瞬だ。
ましてや、そいつらの行動範囲は徐々に広がりつつある、そんな中にお前らのようなひよっこが出ていったところで、奴らの餌にしかならねぇ、だが俺もそんな中に突っ込もうとしている弟子二人を笑顔で見送れるほど完璧に育てた覚えはねぇ、まだまだお前らには教えなきゃならないことが山ほどある。
そこでだ、お前ら、二人で俺に傷一つでもつけられたら、村から出ていくことを許可する。
待ってくれ、俺たちもう村長と話がついて!
ゼノアっ!
!!?
傷一つでいいんですね?
おい、エデンまさかお前。
ああ。そうだ傷一つでいい。
待てよエデン、アランさんがどんな人だったか知ってんだろ?
知ってるよ、でも今思ったんだ、アラン爺のような人相手に傷つけられないようじゃ万が一魔物と相まみえた時何もできずに餌になるだけだ、魔物だけじゃない盗賊だっているだろうしおそらくいろんな奴らが村の外にはいるんだ、そんな中に身の程も知らないような僕たちが出ていったところで、殺されて終わりだ。
おいっ、じゃあ外に出んのをあきらめるってのかよ。強くなるために村を出ていろんな国に行っていろんな剣術学ぼうって言ったのはエデン、お前だぞ!
ゼノア、僕は諦めるなんて一言も言ってないよ。
僕が言いたいのは・・・。
みんなに認めさせて村を出ようってこと。
一人でも僕たちの修行で外に出ることを納得していない人が居たとして僕たちが死んでしまったとき、きっと村の中で言い争いが起きてしまう「あの時、俺は反対したのにぃ~」みたいなねっ、だったらみんなに僕たちの強さを認めてもらえたらそんなことも起きないんじゃないかな。
おいおい、エデンなに、自分たちが死ぬ前提で話をしてるんだよ・・・。
まっ、それもエデンらしいとこの一つか・・・。
なるほど。
そういうことなら、アランさん早速ですが始めましょう。
言っときますが、あなたが思っているほど俺たちひよっこのままじぁないですから。
へっ、ゼノアお前も言うようになったじゃねぇか。
っと、その前にエデン、村の全員に認めさせるんだろ?
だったら全員呼んだらどうだ?
そうだね、今呼んでくるよ!
おそらく、アラン爺は僕たちの力量を確かめるために手を抜いてくるはずだ。
なら、チャンスは最初にしかないそれを逃してしまえば僕達にはおそらく傷どころかかすり傷一つつけられずに終わってしまう。
この勝負僕とゼノアの初手にすべてがかかってる・・・。