チーム・ブラックガード その2
みなさま昨晩はお疲れ様でした。大変苦労なされたようですね。
ほんとよ。簡単そうな依頼ほど、大変なんだから……油断なんない。ほら、スネイクなんてまだ回復してない。
ほがー
朝方の事務所でくつろぐ3人。アルマド、ククリ、スネイク。
3人とも揃っているな。客だ。準備をしてくれ。
扉が開き、登場したのはリーダー、リチャード。この4人が、ブラックガードのメンツである!
――☆――☆――☆――☆――☆――☆――
酒場でよそ者が毎晩暴れている?
ええ、ここのところ毎晩。お陰で客先は遠のき、商売上がったりですよ。
ふがー……はっ!
商売上がったりだぁ~? 負けてられねえなあ。ツケで売上落として店を潰すのは、俺の得意技だぜ!
無視してくれ。
なんとかゴロツキどもを退治してもらえないでしょうか。
いいだろう、引き受けた。ククリ準備してくれ。
はいな、はいな。アルマドは事務処理をお願いね。
俺も行くぜ!
アルマド、静かにさせて。
一緒にお昼寝しましょう。
ひえー! 男はゴメンだ!
夜。問題の酒場にて……!
机を占領し、床に料理をぶちまけ、給仕にちょっかいをかけ盛大に騒ぐ数名の男たち。
なるほど、いい騒ぎっぷりだ。これでは都民は利用できまい。……おい、いいだろうか。
ぐわっはっは、飲め飲め……あぁ? なんだてめえらは?
依頼請負人よ。あんたがたの行動で迷惑してる客がたくさんいるのよ。さっさと出てって。
噂に聞く依頼請負人か! さすがギルド中心国のリーグレンだな。
で、なんだって? ここから出てけ?
はっ やなこった! 金なら払ってんだ。何の文句があるってんだよおお! 世界の酒場は俺様の胃袋なんだよぉ!
俺様の胃袋とは大きく出たわね・・・
金は払っている、か……なるほど一理ある。どうする、ククリ?
論外。金を払ってるって、それ他の客に迷惑をかけていい理由になるの?
じゃあしょうがない。武力行使だ。
あっリチャードこんな狭いところで――
痛ってええええ! 貴様!
どうした、意外そうに。酒場で喧嘩なんぞ、日常茶飯事だろう?
最初に手を出したのはそっちだからな! 後悔させてやるぜ! おおおらっ!
ぐっ!
おらおらっ!
くっ 尊大なのは態度だけじゃないってか。腕もなかなかに立つ……!
どうした! それで終わりか!?
終わり? どうかしら。あたしたちの目的は、あんたに「勝つこと」じゃあないのよ。
……?
動かないで! ギルドの懲罰委員会の者よ! ここで殴り合いをしているとの報告があったわ!
ギルド懲罰委員会。荒くれ者が集まる、ギルドメンバーの横暴を監視する組織。ギルドの活動が盛んなこの国では、警察のような存在である。
なんだと! 騒ぎを聞きつけたにしちゃ、来るのが早すぎる……!
ふふっ
あらかじめ呼んであった、と言ったら?
な……に……!?
このリーグレンの平穏を乱すものは許しません。3日は懲罰房から出られないと思いなさい!
さあ、暴れるな暴れるな。
牢屋で臭い飯を食らいな。
ぐぐっ……! てめえ、最初からそのつもりで……
だが、喧嘩してたのはてめえも同じだろうが!
俺が、自分が捕まる方法を選ぶと思うか?
俺は、あのギルドの者と
知り合いでな――
よって捕まるのは、お前だけだ!
き、貴様 謀りやがったなぁーーー!
さすがリチャード。その顔の広さ、頼りになるわ。
はめられる手錠、冷たい肌触り。響く絶望の鍵音。その数は……ふたつ。
あれ。
僕の両手にも手錠が見えます。不思議。
あー、あー、ベルティーナさん、これはどういうことでしょう。
どうもこうもありますか! また騒ぎをおこして! あなたも一緒に懲罰房で反省してなさい!
俺とお前の仲だろう!?
厚かましい! あなたのことなど、たいして知りません。いつも問題を起こす、不良請負人!
おら、とっとと歩け!
牢屋まで楽しくエスコートしてやる!
ああーーー!
叫びはこだまし、声の主は抵抗むなしく連れ去られた。
……えーと。
(……知り合いだから融通がきくって、リチャード、あーた……)
ああいうのは、ただ知ってるだけの人って言うのよ!
ま、いいや! とにかく一件落着ということで!
ありがとうございます! お連れ様の身を犠牲にした勇気ある行為、感激いたしました!
たとえその身が星になろうとも、わたくし、その行動を決して忘れませぬ……!
や、殺すのはやめてあげて……
3日後、無事戻ってきたリチャードは「ギルドなど今後信用するものか」としきりに言っていたそうな。
チーム・ブラックガード 完
続く