……咲姫(さき)、僕たち、別れよう

月岡咲姫

え……ちょ、ちょっと待ってよ!

 そんなことを言われたのは突然だった。あたしが幼いときから恋をしている幼馴染。その幼馴染に勇気を出して、告白して、オッケーを貰えたのは一年とちょっと前。丁度一週間前に一年記念日だったわけで……。今まで円満に恋人関係を続けられていたはずだった。なのに、何故か突然フラれるわけで……。

月岡咲姫

理由だけ聞かせてよ。じゃないと納得できない

 泣きそうになるのをこらえて、あたしはそう言った。それを聞いて、幼馴染は少しだけ、悲しそうな顔をする。そんな顔するぐらいなら、どうして別れるなんて言ったのよ。なんて考えが頭をよぎる。それに、悲しいのはこっちだ。

……咲姫はね、完璧すぎるんだよ。この学校の理事長の娘で、この国トップの財閥のお嬢様でもある。そんな咲姫に僕は釣り合わない。それだけだよ

月岡咲姫

っつ……!!

 何なのよ……。ありえない。彼氏とか、付き合うとか、あたしは初めてだった。それに、初恋だった。恋のドキドキとか、トキメキとかも初めてで……。本気で好きだった。

 確かに幼馴染は一般的な普通の家庭の生まれで、お嬢様のあたしとは身分が違う。それは嫌と言うほど分かっていた。それを幼馴染も分かって、付き合っているんだと思っていた。

じゃあね、咲姫。これからも幼馴染としていい関係を築いていけたらいいと思ってる。……咲姫にはもっとよくて、釣り合う人がいるよ。……ありがとう、こんな一般庶民に夢を見させてくれて

 幼馴染は、そう勝手なことを言って、あたしに別れを告げた。……あたし、月岡咲姫(つきおか さき)は初めての彼氏で、初恋の相手に今日、フラれました――。

あなたは私の王子様
東雲茜
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月岡咲姫

場合

第1話 突然の別れ

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