[仮装]

いらっしゃいませ、ご主人様。
ご注文、お決まりになりましたか?

ワシ、ご主人様じゃなく帝王様

これは失礼いたしました

木を隠すには森というがな

――帝王様。
さっさとご注文され、寝所へお戻りになられるコースがお勧めですよ?

……メイド喫茶でもワシの扱い、
変わりなし?

まだ陽のある時間帯ですのに

たまには、従者の働きをその眼で見んとな

お伝えしていたはずですが

……"メイド喫茶店へ"と書かれたメモ、
気にならないわけがあるまい

あの、メイドさんを見るのも
好きですけれど、
ちゃんと自分でも働いていますから

いや、そういう話じゃなくな?

――なるほど、わかりました

まぁ、気にかけすぎだというのなら、
悪かったが

正装だと想っていましたが、
帝王の趣味だったのですね

うん?

あの、帝王がメイド喫茶に通う姿は、
教会の眼にもつきますし。
私一人で我慢を

ワシ、メイド好きだなんて話、
一言もしてないよね?

あら、違ったのですか?

別に、メイド姿に興味があるわけではない

でも、ここはそういう場所ですよ?

だからこういう場所は嫌がるかと、
想っていたがな

逆に、なりきるのは自然ですね

――能力を考えて、と、理解はするが

……大丈夫ですよ

心のご主人様は、帝王だけですから

……っ!

で、では、この『萌え萌えオムライス』をもらって帰るとするか

かしこまりました

――こちらになります

 "西日での萌えまでアト五分♪"

――これ、漢字違くね?

お早く♪

帝王、外でもブレない従者にふるえる

(……本当の主に、仮の姿を見せたくはありませんので)

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