追い出された……

 いや、正確には“取り残された”というのが正しいのだろう。

 話を始める前に、

あ、そこの実際はきもそうなおっさんはいなくていいから。これは麗花同士のお話だから

 と言われ、近くの教室に二人は移動してしまった。

きもそうって……、おっさんと言われちゃおっさんなんだが

 しかしこの間をどうしたものか……。

 あれ、よく考えたら今碧の中に“麗花”がいるのなら“桜子”はどこにいるんだろう。

 まさかアイツ……ちゃっかり“桜子”の魂だけ持ってるんじゃぁ……。

そのあたりについては大丈夫よ

うわあ!!!

 俺は驚いて尻餅をつく。

――ちゃんと、先生は配慮してくれているから

そうかよ……

…って、“先生”?

まさか、お前――。

初めまして。大内桜子さん

わたし、『大内桜子』といいます。よろしくね

 ――どうやら品川は、『桜子』に身体を貸したようだ。

ふふ。こーんな背の高い身体になれるなんてたーのしー

あ、ねぇねぇ。麗花ちゃんはそこの部屋でお話してるのかな?

 『桜子』は麗花たちのいる教室を指差したので俺は頷いた。

――そう

麗花ちゃんはね、ずっとさみしかったんだって

――さみしかった……

うん。ずっと。両親は仕事で忙しくてなかなか帰れなくて、いつも家では一人

 前に麗花が言っていた通りだった。

家には使用人がいたけど、どうしてもうまく使用人たちと話せなくて、どうしたらいいのかわからなくて

…それは学校でも同じ。クラスでの馴染み方なんてわからなくて…むしろ初めから金持ちのお嬢様とかで距離を置かれてね

だからもう誰にも心を開こうとしなかった

そもそもわたしたちの出会いってね、わたしが一人で下校する麗花ちゃんに声を掛けたのが始まりなの。 

…………

はぁ…なんかもうやだ、こんなずっと一人なんて――

城ヶ崎さん

……!大内さん?

ごめんね、独り言、聞こえちゃった

……っ。…あっそ、さすがの大内さんも引いたでしょ。つーか独り言勝手に聞くなし、どっか行――

――わかるよその気持ち

消えてなくなりたいって思うんだよね

……

――ねぇ

わたしと手を組まない?

そんなこんなで今になります

…………

わたしは――わたしたちは消えたかった。でも、消えるわけにもいかなかった

両親や学校の友達や先生がずっと騒ぐに決まっていたし、麗花ちゃんも、家が家だしね

だからわたしたちは『転生』を選んだ

……別に、消えたいとか、お前らまだ小学生だろ。まだまだ先があるじゃねぇか

――だからよ

……?

あーあ。意外と早く見つかっちゃうもんだなぁ…

…桜子

桜子って気安く呼ばないでよ

あなたにはわかる?わたしがどんなに辛い思いして生きてるか

みんなの期待に応え続けなきゃならないわたしの気持ちが!!

知るかっ!!!

 廊下に叫び声が響いた。

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