山の奥深く、大きなお屋敷がそこにあった。
こんな山奥に人ごみもない所にそのお屋敷はそびえ立っていた。男は思った、人生に一度くらいなら盗みに
入ってもバチはあたらないと。そして、彼自身は貧しくって、もう一度人生をやり直すにはもってこいな時だと。
誰かーたすけてくれー!
山の奥深く、大きなお屋敷がそこにあった。
こんな山奥に人ごみもない所にそのお屋敷はそびえ立っていた。男は思った、人生に一度くらいなら盗みに
入ってもバチはあたらないと。そして、彼自身は貧しくって、もう一度人生をやり直すにはもってこいな時だと。
彼は高い塀を越え、高い壁を登り屋根の小窓から中へ
入りこんだ。そこには背の低い小さい男が手招きをして、「ようこそ、何でも好きな物を持って行きなさい。」と勧められて、彼はその様に手渡された手提げ袋にお宝をごっそりと入れ込んだ。彼は小男に礼を告げ、先に来た道のりを自転車に乗り急ぐのであった。と、その時スピードを飛ばしてきたトラックが彼を跳ね飛ばし、彼はそのトラックの運転手の手で病院へと運ばれた。その病院において、彼は顔の判別のできないほどの重症と診断された。その彼の手の中には屋敷から盗んだ財布があっただけだった。その財布には一枚の運転免許書があった。彼はその免許書の人物として病院に留まった。勿論、彼を訪れる人は無く、ただ日々を退院の日までを何をするのでもなく、過ごしていた。退院の日が訪れ、彼の顔の包帯がはずされ、鏡にうつしだされた、その顔は、もはや彼自身のものではなかった。すると、盗みに入った時に出会った、小男がそこにやって来て、「ご主人さま。」と彼に向かって言った。「ご主人様、こちらです。」と、迎えの車へと連れて行かれた。
また大きなお屋敷へと、連れ戻され、彼が見たものは
彼の姿をした他人がそこに立っていた。
その彼の姿をした他人の男は彼に向かって、叫んだ、
「今日からお前が私の過去を償うのだ!」と。
暗がりから、恐ろしげな女と男が現れ、彼は闇の中へ引きずりこまれていった。
彼の姿をした他人は小男に言った、
「どうも、ありがとう。私は今日より新しい人生を暮らして行ける。」と。
小男は言った、「ご主人さまの為なら。」と。