第八話
鬼の念仏


DEAD OR BET?

生ける屍か、転生か

選べ

お前の魂の在り処を

寸胴デモニキュリオ

グググ

楊 金満

すみません。
この寸胴いくらですか。

そこのオンボロの事?
いいよタダで譲るよ。
明日産廃業者に引き取ってもらうところだったから丁度都合いいや。

楊 金満

本当ですか!?
ありがとうございます。

楊 金満

うん、良し良し。充分綺麗になった。

楊 金満

お袋も死んでしまって、借金まみれでバイト雇う金も無くてさ。

味音痴の俺がこの店守るしかないんだ。

お前も俺も死にかけだったろ?
一蓮托生。
生まれ変わった気持ちで頑張ろうな。

寸胴デモニキュリオ

頑張ル。

あの『満』とかいう中華屋、ワンタンスープだけはすげえ美味いよな?

ああ、あれでワンコインは美味いし安いし本当に助かる。ただメインは食えたもんじゃないけどな。

寸胴デモニキュリオ

頑張ル

浅草絶品中華グルメ特集

ちょっと行きつけの飯屋あるんだけど行かない?きっとビックリすると思うよ?地味に美味いっつーかさ。

え、気になる~。楽しみ~

寸胴デモニキュリオ

頑張ル

浅草でいまなんとワンタンスープ一杯で行列を作ってしまうという異色中華料理屋さんがあると聞いてやってまいりましたが、ご主人、お話を伺ってもよろしいですか?

楊 金満

はい、去年他界した母のレシピを元にオリジナルにアレンジしてみました。

お恥ずかしながら調理全般は点でダメなのですが、なぜかこれだけは上手くいくんですよね~

またまたご謙遜を~
何か秘訣があればこっそり教えていただけませんか?

楊 金満

いえいえ本当に。

多分、スープに使ってる寸胴がラッキーアイテムなんだと思うんです。

ボロボロで捨てられる寸前だったこれがなんだか自分の心境に重なって、思わず引き取ったのです。

すごく愛着を持って使っています。

なるほど。
まさに捨てる神あれば拾う神あり、といった素敵なエピソードですね。

ありがとうございます~

寸胴デモニキュリオ

頑張ル

青鬼

あれ、一瞬にして火事場の台所が?

もしかして今のは全部…

赤鬼

今頃、気づいたか。
デモニキュリオが見せたフェイク(幻想)さ。
彼女が愛しいこの店を本気で燃やすわけないだろう?

赤鬼

取り立て屋の俺たちを追い出したかっただけ。
そうだろう?

寸胴デモニキュリオ

帰レ

赤鬼

まあ聞けよ。
かつて俺が裁いたデモニキュリオの中にも、今回とよく似たケースがあった。

赤鬼

君だって一度は想像したことがあるはずだ。

モノとしてでなく、人間の女として触れられたいと。

寸胴デモニキュリオ

女…

赤鬼

ちなみに件のデモニキュリオも女形でね、彼女は最終的に転生する事を選んだよ。

千年かけて人間に生まれ変わり、人生を謳歌している。

愛する者のそばに寄り添いながら…多分。

青鬼

ん、最後のトコだけ何か歯切れ悪い?

赤鬼

それに仮に俺たちに出会わなかったとしても、遅かれ早かれ君は彼と別れることになる。

せっかく君の頑張りで取り戻したお金を彼はあろうことか全てギャンブルに費やしてしまい、もう借金の利子すら払えない状態にいる。

きっともうすぐ、この店を借金のカタにはめるだろう。

赤鬼

業の深い人間によくある話だ。
もう彼は地獄に両足を突っ込んでいる。

君の思いを無碍にしてまでね。

寸胴デモニキュリオ

黙レ

赤鬼

君だって気づいていたはずだ。そしてこう思ったはずだ。




もし私が人間なら
彼を止められるのに。

幸せにできるのに。

寸胴デモニキュリオ

ドウスレバ、
イイノ?

赤鬼

やっと話を聞く気になったかい?

続く

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