今日も俺は生命を無駄に削る。

世界は、こんなにもつまらない。

空と少年の出会いは突然だった。

空はいつも明るい女の子。

二人はすぐに打ち解けた。

少年は自分の人生を悲観的に見ていた。

電車がレールの上を走るように
誰もが同じ様な人生を歩み

そして

死んでゆく。

そんな少年にとって
いつも瞳を輝かせて生きる空は

悲観的な自分を明るい方へと導いてくれる
太陽のような存在だった。

空は少年が時折見せる悲しげな表情に
優しく微笑みを向けて寄り添った。

そんな穏やかな空との日々は
少年にとってかけがえのないものに
なっていた。

ところが

少年が明るい笑顔を自然と浮かべるようになった
ある日

空は一通の手紙を残し、姿を消した。

手紙には何も書かれていなかった。

今日も私は作り笑いを浮かべる。

人は、いつかは裏切る。

白と少女の出会いは突然だった。

白はいつも心穏やかな男の子。
二人はすぐに打ち解けた。

少女は人を信じることが出来ずにいた。

人は皆、自分が一番大切なんだ。

自分の本当の味方など

この世には存在しない。

そんな少女にとって、
いつも優しく微笑みを向けてくれる白は

空虚な繋がりしかない自分が唯一
心許せる存在だった。

白は少女が人を疑い、人を恐れるたびに
優しく微笑みを向け、寄り添った。

少女は固く閉ざした心を開き始め
人に少しずつ心を許し始めるようになった。

ところが

少女が人を信じ
素直になれるようになったある日

白は一通の手紙を残し、姿を消した。

手紙には何も書かれていなかった。

時が経ち

少年と少女は出会った。

白によく似た少年。

空によく似た少女。

二人はすぐに惹かれあった。

やがて二人は子供を授かった。

男女の双子。

二人は迷うことなく 白 と 空 と名付けた。

空は元気で明るい女の子。

白は優しく穏やかな男の子。

幸せを絵に描いたような家族だった。

それは

白と空が10歳の誕生日を迎える
数日前のことだった。

白と空は不慮の事故で

亡くなった。

少年だった男性と
少女だった女性は

突然、深い悲しみの淵に立たされた。

男性と女性は悲しみの底で
ふと、ある事を思い出す。

自分たちが少年、少女の頃に出会った
もう一人の白と空の存在。

二人は藁にもすがる思いで

手紙を手に取った。

『今、貴女は悲しい思いをしてるのかな。』

『今、貴方は悲しい思いをしてるのかな。』

『僕は、貴女たちと出会えてよかった。』

『私は、貴方たちと出会えてよかった。』

『人を信じることを教えてくれた。』

『世界は輝きで溢れてることを教えてくれた。』

『僕は』

『私は』

『『あなたたちの
子供に生まれて

本当に幸せだった。

ここまで育ててくれて、ありがとう。

それから

もし、願いが叶うのなら

またいつか、家族になりたい。』』

男性と女性の目から
止め処なく涙が溢れた。

少年の頃、いつも寄り添ってくれた空。

少女の頃、いつも寄り添ってくれた白。

単調なつまらない世界
希薄な人間関係

そんなものは、自分自身が作り上げただけのものだった。

こんなにも眩しく、かけがえのないものが
すぐ傍にあった。

あの子達は、
それを伝えに還ってきてくれたのかもしれない。

『ありがとう…』

二人は静かに呟いた。

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