アルモと別れた俺は、一度フォーレストの城下町まで引き返し、あの宿屋で一夜を明かした後、生家のあるフォーレスタ村へと向かっていた。

アコード

俺に魔法の素質があるなんて…母さんからは何も聞いていないけど、実際の所は…

 考えても答えの出ない水掛け論に終始しながらも、主人を失ったフォーレスト城で騎馬を拝借した俺は、全速力でフォーレスタ村へと急ぎ、数日かかった(といっても、あの時は修道院でレイスと戦ったり、ガイーラに助けられたりだったので、本来真っ直ぐ村から城へ向かえば徒歩でも3日程度の距離なのだが…)往路を2日で戻ることに成功した。

 村の入口に到着すると、そこには門番としての責務を全うしているシューが立っていた。

シュー

……アコードじゃないか!どうしたんだ?その馬は、確か城の衛兵が使っている城の騎馬のようだけど…

アコード

シューか!お前が今日の門番で良かったよ…

シュー

…そう言えば、アルモの姿が見えないけど、どうしたんだ?
それに、そのショートソードの紋章……どこかで見たような気が…

アコード

その辺りも含めて、話したいことがいっぱいあるんだ

 騎馬から飛び降り、鬣を撫でてやる俺。

“ブルルルルル…”

シュー

とりあえず、馬舎に向かいながら話そうか?

アコード

そうだな!

サリット

…てことは、あなたにアルモみたいな魔法の素質があって、それが何なのかを調べに戻ったって訳ね

 馬舎に向かう途中で勘の鋭いサリットとも合流し、俺は村を出てから今までのいきさつを2人に話した。

シュー

思い出した!!!

サリット

シュー?何を思い出したの?

シュー

アコードの腰にある、ショートソードのその紋章だよ

サリット

??それ…森にある『祭壇の洞窟』の入口にある紋章と同じものだわ…

シュー

そうなんだよ!
それにしても、そのショートソードって、アルモが森を救ってくれた時に、お前がアルモから借りたものだったよな?
その時、そんな紋章はついていなかったような気が…

アコード

…そうか!俺もどっかで見た紋章だとは思っていたけど…祭壇の洞窟にある紋章だったのか!

アコード

…父さんがまだ生きていた頃、一緒に洞窟の前に来た時、紋章のことを聞いても『大人になったら』って言って、教えてくれなかったんだっけ…

シュー

…どうした?アコード…

アコード

いや、小さいときのことを思い出していただけだ。
…ショートソードの紋章は、別れ際にアルモからもらったんだ

サリット

…中央に『CA』って描いてあるようだけど…

アコード

Crescent Alliance…三日月同盟っていう秘密結社の略称だ

サリット

三日月同盟…聞いたことないわね

アコード

ある訳ないさ。
村長一族の俺ですら、その存在をアルモから聞いて初めて知ったんだから…

シュー

その紋章が、この村にある祭壇の洞窟の入口にあるということは…アコード、村に引き返したのは、正解と見て間違いないだろうな!!

アコード

そうだな!

 そうこうしているうちに馬舎に到着した俺たちは、馬を馬舎に繋ぐと今度は俺の生家へと急ぐ。

アコード

…そう言えば、俺が旅立ってから、村で何か変わったことはなかったのか?

シュー

…お前が居なくなって、それまで別々の組織だった自警団が青年団の下についたのと、自警団の団長が俺になったことくらいかな…サリット?

アコード

シューが団長になったのか!!

シュー

へへっ。まあね!!

サリット

ちょっとシュー!!自分のことばかり…城下町からたくさんの人が避難してきて、村長さんの指示で仮設住宅が急ピッチで作られているじゃない!!

シュー

そうそう。村の人口の半分位の人たちが避難してきたぞ。村長さんから話は聞いているけど、フォーレスト城が教団に制圧されたそうじゃないか?

サリット

その件と、アコードが旅から引き返した件って、やっぱり…

アコード

ああ。大いに関係しているさ。俺とアルモのせいで城が制圧された訳じゃないけど…

 俺は、その理由を話すことを躊躇した。

 なぜなら、その理由はフォーレスト城が『魔法の研究』をしていたからに他ならず、それを2人が知れば、半ば強制的に俺とアルモの戦いに2人を巻き込むことになるからだ。

アコード

サリット

どうしたの…アコード?

アコード

…いや、何でもない

シュー

…俺たちにはまだ話せない、という訳か…

アコード

…すまない。シューの言う通りだ…

サリット

…分かった。私とシューには、あなたが話せると思うようになったら話して

アコード

ありがとう。サリット…

 シューとサリットは、まだこの世界の理を知らない。

 知らない方が幸せということも、この世の中には多くある。

 俺は、アルモと旅立ってそのことがよく分かる気がしていた。

 でも、俺に後悔は微塵もない。

 俺の血に、アルモが進むべき道の痕跡がある以上、俺は知らなければならない。

 俺の血筋に、一体何が隠されているのかを。

 気が付くと、いつの間にか俺たち3人は俺の生家の前にたどり着いていた。

サリット

…さぁ、アコード!

アコード

…あぁ!!

アコード

ただいま、母さん!!

 俺は生家のドアを開いた。

第2話 に続く

Episode6「ワイギヤの血筋」 第1話 ~幼馴染との再会~

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