神立、恥を忍んで訊きたいんだけど
ん?なぁに?
小説ってどうやって書くの?
そう言えば小説書きたいって言ってたけど、書き方からなのかぁ
やっぱ自然にわかるもんなの?
わかる人はわかるだろうけど、わからない人の方が圧倒的多数だからね。初めはわからなくても恥ずかしくないよ
やっぱ神立も誰かから教わったとか?
私が描いてるのは漫画だけど、ストーリーの組み方は高校の時の漫研の部長に教わったの
やっぱ先輩から教わったのか
ううん、先輩じゃなくて同学年の方の部長
そうなん?見た目頼りなさそうだったけど、頼りになる部長だったんだなぁ
神立って、事ある毎に部長の話出すよな
ねー。よっぽど頼りになる人だったんだなって思いながら聞いてるけど
それで、小説の書き方だっけ?私が教えられるのはストーリーの組み方までなんだけど
あー、そうなるよな。我孫子も文字書きだっけ?
おう、俺も文字書き。だからある程度は書き方教えられるな
ねーねー、先輩にも訊いてー
談合坂先輩はレベルが高すぎてついて行けなさそうで
あ、はい
でも、話の組み方の基本は変わらないし、談合坂先輩からも聞いてみて損は無いんじゃない?
話を上手く組む事に関しては談合坂先輩が一番慣れてるだろうし
そっか、それもそうだよな。
それじゃあ、あの
うんうん、教えるよ。
聞く準備はOK?
あ、今メモを出します
よし、出したね。
とは言っても、そんなに難しいことは言わないよ
そうなんですか?
うん。初めてでいきなり難しい事しろって言われても大変でしょ
それはそうですが
だから、まずは箇条書きで書きたい部分をガーッと書いていって、それから書きたい順番に並び替えるの
え?それで話になります?
ならないかもしれないけど、初めは最後まで書くのが大事。
途中書くのが面倒なところは飛ばして良いから
え?え?そうなんですか?
面倒くさいところまで書けるようになるのは、最後まで書くのに慣れてからで良いってのが談合坂先輩の方針なんだ
私も初めて聞いた時は驚いたけど、確かに言われると、最後まで書く癖を先に着けた方が良いんだよね
このやり方だと、所謂完成度の高いお話を作れるようになるまでは遠回りかも知れないけど、いくら完成度が高くても、完結してないお話は不完全な物だからね
なるほど、そうなんですね
それと、ちょっとこわい話しようか
え?こわい話?
未完の物語は生み出した親のあとをいつまでもついて回るのよ。それがいくつもいくつも重なっていくと、愛憎にまみれた物語が、いずれ自らの親を攫って行ってしまうんだって
えええ、それはさすがに実話じゃないよな?
実話では無いと私は思うけど、実話じゃ無いって言う証拠も無いからね
まぁ、未完の物語に攫われないように気をつけような
気をつけざるをえない