AM : 8:45
曇り一つない空。快晴である。
青い天井の下、所狭しと敷き詰められた建築が並ぶ住宅街。その一角で奇怪な音が部屋の主の覚醒の為、丁度声を上げ始めた所だ。

ピィエエ――――
ピィエエ――――

……ん?
タイマーが……

あれ、朝…?
はあ…!?

穏やかな住宅街。
その一角で部屋の主の覚醒の為、奇怪な音が声を上げている。今空を照らす太陽が昇ってから実に5度目の出来事である。

―――階下

もぐもぐもぐ

バタバタバタ

ん…
やっと起きたのかー

ガタッ

と音を立てて、女性の背後の扉が開く。リビングのテーブルで朝食を取っていた彼女は露骨に眉をひそめた。

姉貴!!なんで起こしてくれなかったの!!

何言ってんの!よく寝てたからでしょ!

ほんとに起こしてなかったのかよ!

にこやかにほほ笑むと女性は自身が手にするお椀を掲げた。

ほらー。いいからあんたもちゃんと朝ご飯食べなさいって。

ガタガタ…バタンッ…ゴソゴソ

馬鹿ねき…遅刻するだろ…!
いってきまふ…

姉の言葉をスルーしながら、彼は食品棚から漁り出した食パンを加えると廊下へと飛び出して行った。

だ、誰が馬鹿ねきじゃ…!

姉への文句を忘れることなく…

あーもう…なんでこうなるんだ…

…あれ

鬱々とした気持ちで玄関の扉を開けると、視界に見慣れない…いや、ある意味見慣れたものを見つけた。

……

門の扉に手をかけてこちらを窺っている、自分と同じ制服を着たその男を彼は知っていた。

木田?
なんでここに…

……よう、水野。おはよう。
これから学校か?

そうだけど…遅刻するぞ。どうしたんだよ

……うん、それはな

そわそわとしながら、どこか落ち着きなく。
木田は視線を落とした。
いつにないその様子に水野は首をかしげる。

おれ、お前を迎えに来たんだよ。

は。
お、俺を?

そう。

異様な雰囲気を醸し出しながら木田は一度自分の口を手で押さえた。そして水野の目を真っ直ぐ見ると――

今日、日曜だぞって。

丁度その時、水野の背後からバタバタと足音が聞こえ、玄関の扉が開いた。

ちょっとー、あんた日曜に制服着てどこ行く気…

あれ?木田くん?なに今日学校だったの?

いや、日曜ですけど。
俺は自主的に制服着てます。

なにそれ。流行ってんの?
浩平も感化されて制服着てんの?
変わってんねー。

う…うぅ…

なに唸ってんの?
木田くんと約束してたんじゃないの?
まーだ寝ぼけてんだからもー

な。水野。デートだよなデート。

う、うるさいわ!!

青い空の下、所狭しと敷き詰められた建築が並ぶ住宅街。その一角で悲しい少年の叫びが響き渡った。

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