バイト君

店長って、好きな人いるんスか?

店長

いるんだけど、なかなか出てきてくれないんだよねー。パソコンの中から

赤ずきん

いらっしゃいませ! お惣菜沢山買って下さって有難う御座います

お客様

君は偉いね、色んな人に声をかけて

赤ずきん

いいえ、喋るの好きなんですよ

お客様

そうなのか……

 そのお客様は、その翌日も更にその次の日も、買い占めるかのように惣菜を買っていきました。だけど、これはこれで問題があって……。

お客様

おい、弁当がもう無いじゃないか!

お客様

おかずが無いなんてどういう事!?

 と言うように、レジを務める私や、店長にまで苦情が入るようになりました。

 だから、惣菜を増やしたりと工夫はしたけれど、やっぱりあのお客様が早朝にいらして惣菜を買い占めていくのです。

 だからある日、私はその人に直接言いました。

赤ずきん

あの……お惣菜、買ってくれるのは嬉しいのですが、他にもお惣菜やお弁当を買いたい人が困っているみたいで……

お客様

おや、そうなのかね

赤ずきん

どうして、お惣菜を沢山買うんですか?

お客様

……

 その人は、私の問いに答えず、商品を買っていかれました。

 翌日も、更にその次の日も……。

 やがて、私は見ていて気づきました。その人の視線の先を。

オカミさん

いらっしゃい。ごめんね~惣菜もう売り切れちゃったのよ。待ってくれるなら、今から作ろっか?

赤ずきん

ってことがあってね

それからどうなったんだ?

赤ずきん

あのね、私、不純な動機で無理に惣菜を買い占めるのって、違うんじゃないかなって思ったの。だから言ったんだ

何て?

赤ずきん

お客様、あちらの惣菜の女性は、アニソンを熱唱しますよ? ジェネレーションギャップに耐えられますか? ってね

……ヒドい

赤ずきん

そんな顔するけど、だってそうじゃない? そんな程度のことで嫌がるの、本当の愛だと思えないもの

……赤ずきん

赤ずきん

まぁ、その人は帰っていかれちゃったんだけど

……そっか

赤ずきん

あ、いらっしゃいませ!

お客様

こくっ

 白髪のお客様は、真っ直ぐと惣菜売り場の方へ行くと、小さな惣菜を一つ、手に持った。

オカミさん

あら、アンタわざわざ買いに来たの? 帰ってもたらふく食わしてやるってのに

お客様

たまには食べたいと思ってね、職場の味も

赤ずきん

さっきの話の続きだけどね、どうやらあの人もアニメが大好きだったらしくてね? 結局は私の言葉に後押しされる形で、翌日あの人はプロポーズして、二人は結婚したんだ。それが、今のオカミさんとあのダンナさんなんだよ

へぇ……素敵だな

 ……何時か俺も、あの二人のようになれればな。

21・買占め! スーパー独占欲

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