互いの力が、周囲に響き渡る。
――さぁ、決着をつけよう
――ふん、残念なことだがな
互いの力が、周囲に響き渡る。
やるな!
貴様こそ!
知らず私は、乾いた剣撃の音のように、
心を冷たくしながら――
なぜか、笑みを浮かべていた。
長い戦いの果て。
疲弊した身体に、最後の力をこめる。
――出会いと育ちが、違えば
――共に高め合うことも、できたのかな?
つなぎあうような、互いの言葉。
『だがそれも、叶わぬ可能性』
ここで退けば、また人と魔の戦いが、仕切り直されるだろう。
泥沼の争いを策謀する者達は、用心深い。
――この身の犠牲と、大いなる敵の喪失。
その転機にしか、油断を誘えない。
だが転機さえ作れれば、後は仲間が、良き世界へと導いてくれるはず……!
さぁ、行くぞ?
あぁ
敵の誘いをありがたく想いながら、私は、剣を握りなおす。
……そんなに悲しい顔をするな、勇者よ
……そんなに優しくするなよ、魔王
そして私達は、計ったように足を踏み出し。
――ふと、願ったのだ。
――もし叶うなら、違う世界で。
――平和な好敵手として、再開したいと……。
――互いの顔に、衝撃が走った。
……あなた、魔王なの?
……お前、勇者なのか?
互いを見つめ合い、驚愕する。
――双子アイドルとして活躍している、自分達。
よく似た互いの顔に今、他に重なるものがある。
それは……かつて命をかけて戦った、好敵手のものだった。
この世界の私と、前世の記憶が混じりあい、心が揺れる。
転生、か。
神か邪神か知らぬが、面白いことを
嘲笑するような笑みが、妹の顔に浮かぶ。
……確信する。
また、私達は、出会ってしまったのだと。
ど、どうしよう
……チャンスだわ♪
はっ?
謎な妹魔王の呟きが気になりつつ、私は、一つだけ確信していた。
――姉妹にも、好敵手にも、割り切れない。
互いに、前みたいな関係には、もう戻れないのだと。