思いつめた様子で三角帽子の少女がつぶやく。
そこは宗教施設の、私室というプライベートな空間だった。
転生したい。
思いつめた様子で三角帽子の少女がつぶやく。
そこは宗教施設の、私室というプライベートな空間だった。
転生なんてないのよ。なんでそんなことをいうの。
森の中のあばらやでさ、ひもじい毎日、村の連中には怪しい目で見られる。
あんたとは友達なのに近寄ると色目で見られる。
もうやだよ。
心底辟易しているというように吐き捨てる少女に、修道服の少女は言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
そんなこと言ってもね……仮に転生があるとして、それをしてなにが変わるの?
全部だよ!全部!このちんけな村から飛び出して都会に生まれてさ!もしかしたら社長令嬢になれるかも!
夢に目元を緩めて笑う三角帽の少女に、修道服の少女は滾々と言い聞かせる。
世界の僻地の朽ち木の中で虫けらになるかもしれないわ。
なんでそういうこというの……。
人生を悲観して逃げるのはいいけど、逃げた先に楽園はあるのかしら?
問いかける修道服の少女に、三角帽子の少女は叫ぶ。
良いじゃん逃げたって!自分を変えても、なにしても周囲が変わらないなら逃げてもいいじゃん!
それともそんな魂の自由もないの!?
そうね、それも、いいのかもね。
何かをあきらめたように微笑む修道服の少女に、三角帽子の少女は違和感を感じながらもナイフを取り出す。
……止めてくれないんだ。
だって貴女が欲しいのは留める言葉じゃなくて……
道連れでしょう。
そう囁かれて三角帽子の少女は一番の動揺を見せる。
……逃げないんだ。
独りじゃ怖いんでしょう?いいのよ。
でも貴女はきっと後悔することになる。
ぎらつくナイフを寝かせて構える三角帽子の少女は、修道服の少女の言葉をはったりだと切り捨てる。
私は後悔なんかしない!一緒に逝ってくれる貴女と来世で別れても!
肉を裂くのに音は出なかった。
ただ修道服の少女の足元に血だまりと、部屋の中に血の臭いが広がっていく。
ほら、今回もこうなるの。
そして貴女は……。
修道服の少女の言葉をきっかけにしたかのように三角帽子の少女が叫びをあげる。
あ、ああ、あ゛ーーーーーーーーー!
私、私また、また貴女を……!
そうして貴女は首を斬る……くるくる回る私たちの世界の始まりで、また会いましょう。
呪いの様な修道服の少女の最期の言葉通り、三角帽子の少女は首を斬る。
絶望した顔にあふれる涙を乗せて、一気に喉をかっさばく。
そして誰もいなくなる。
なによ!村の悪ガキ!
ちょっと力が強いからってバカみたい!
薬草は毒にもなるんだから渡せないって言ってるのに!
死んじゃえばいいんだ!
どうしたの魔女の小間使いさん。死んじゃえなんて言っちゃだめよ。
何アンタ。
アンタもなんか文句あるわけ?
そういうのじゃないの、私の名前は……。
転生なんて、ないんです。