「小説クッキング」
第一回ホワイトソース編
「小説クッキング」
第一回ホワイトソース編
ごきげんよう。
小説クッキングのお時間です。
初めまして。講師の蜜谷です。
こんにちは!助手の友利です!
ところでみつや先生、どうして小説なんですか?料理番組を小説でやろうだなんてそんな馬鹿げた事、よく思いつきまし
ば…!?
もう小説は始まっている、後にしろ馬鹿ゆうり
ごほんっ…失礼。
それでは、今日は初回ということで
あ、そうだー
みつや先生!この服どう?
私も初回だと思ったら気合い入っちゃってね、さっき急いで縫ってきたん
ゆうり?ちょっと黙ろうか?
そのワンピースは悪くない。だがこれは小説だ。
そしてこの「小説クッキング」は通常の小説に見られる情景、人物、設定描写がオールフリーの、むしろ「会話クッキング」だという事を理解した上で自ら裁縫が得意だと自己アピールを会話に織り交ぜた事は大いに評価をしてやろう。
ただ、今はその時ではない、
黙ってろ!
ぐむっ…苦し…せんせ…
首…締めないで…グッガッ…ゴッファアアア(吐血)
さて、今日は初回なので、
猿にでもわかるホワイトソースの作り方を勉強していきましょう。
うぐ…
…っっっ、はぁーはぁーはぁー…
あー、あーびびったー死ぬかと思ったーーー…ひゅこーひゅこー(酸素吸入)
それではさっそく、
材料を見ていきましょう。
〈材料〉
小麦粉 最高で味噌汁1杯分
牛乳 1リットルの半分くらい
バター 大きいスプーン1杯くらい
チーズ 2、3枚
コンソメキューブ 1、2個
玉ねぎ 1個(絶対)
命令①
玉ねぎを好きなように切れ。
え、みつや先生?
これ、分量…おかしくないですか?
おん前はまたそうやって余計な口を挟む。…、そういえばこの前ゆうりに似合いそうだと思ってamaz◯nのポイントで買った猿ぐつわがここら辺に…お前小顔だからちょっと大きいかもしれないが
(無視)いや、だって
牛乳1リットルの半分?とか…え、ホワイトソース?ですよね?あの、ドリアとかの上にかかってる…
しかもなんですかこの超適当な計量は!
◯mlとか、大さじ◯とかちゃんと書いてあげないと読者の皆さん分かりませんて!
先生!まだ間に合います、赤ペン先生に添削してもらいに行きましょう
小説一回とめて…ほらここにちょうどいい血糊もあるし、赤ペん先生赤大好きだから袖の下に持ってけば絶対なんとかしてくれ
いいか、料理は面倒くさい。
…え?
面倒くさいが故に、効率が非常に大事になってくる。今から作る分量は、約8人分だ。
(赤ペん先生…とは…?)
はちにん…て…8人!?
そんな一気に作ってどうすんですか?
今時8人家族なんて滅多にいませんよ?
そんなレシピ需要あると思ってんですか頭おかしいんですか!?バカなんですか!?バーカバーカ!みつや先生の低血圧!ドエス!はーげ!ロリコ
…っゆうり、お前、後で口縫う約束な。
はい、ゆーびきーりげんまん
ひっ!?じょ、冗談ですよ〜
みつや先生馬鹿だなーて思ってる限界がきてしまっただけで、いつもそんな「馬鹿だなみつや先生ポケット」が溢れかえるくらいの馬鹿だななんて思ってないですから〜、
今はさすがに馬鹿だなポイントが溜まりすぎてポケットが決壊してしまっただけであって、いつもは
ゆうり
はいぃ!助手としてあるまじき暴言!
や、やるならせめて私のお気に入りの青い糸でお願いじまず!(号泣)うぅ…っ
要するに、始めから多めに作り、
小分けにして冷凍庫で長期保存できる調理法を調教してやろう、という訳だ。
毎日保育園の送り迎えが忙しい主婦にも、朝冷凍庫から冷蔵庫に移して出かければ、夜帰ってきたら即使えるんだぞ。「働きながら子育てに家事に忙しい私にもぴったり♪」ってやつだ。ぺッッ!
ちょっとみつや先生、今つば吐きましたね、信じられない、しばらく私に話しかけないで。ずびっ…
そして、大さじやら小さじやらの計量も、非常に面倒くさい。俺の教えるレシピでは上達を促す為にもあえて目分量で…
...........。
?ずびっ…
みつや先生どうしたんですか?
続きをどうぞ?自分で言うのもなんですけど珍しく私、今邪魔してないです。目薬さすので手一杯なので。
…うむ。最初に言っておこう。
ごほんっ…
俺のレシピは、絶対に失敗する!
失敗する…!失敗する…!失敗する…!(セルフエコー)
えっ…えっ
ええええええええ!?
せ、先生ーーー!?!?!?
な、な、何て事言っちゃってくれてんですか?そんなこと言ったらこの先誰も読んでくれなくなっちゃうじゃないですか、何言ってんですかー!!
あ、えっと、皆さん、嘘ですよ〜先生のレシピ通りに作れば絶対に失敗知らずで超簡単♪不器用な私でもできた〜今までの苦労が嘘みたい♪ですよー???
そんな誰にでも簡単に出来るお手本レシピは勉強になどならん。
どうせその料理を作る度にいちいちレシピを引っ張り出してきて、毎回同じ分量で同じように作るんだろう?
最初から答えが出ているのだから上手くできるのは当たり前。ただしそこまでだ、上達はない。
えー…えー、えー
じゃあ、先生の、絶対に失敗するってどういうことですか?
「失敗は成功のもと」というだろう。
大抵の人間は失敗したら原因を追求したがる。
本来ならば毎日の料理の中で失敗、原因追求、改善を繰り返していくうちに自然と上達していけるのが望ましいが、
ただ、料理の経験が浅いと、自分がどこで失敗の原因を作っているのかすら分析できず改善のしようがなく、中には料理自体を諦めてしまう人間をよそおった生ごみまでいる。
先生って、やってる事優しいはずなのに、なんかいつも何かが余計で全っ然優しく見えないんですよね。
だから俺が、最初から失敗できる箇所を指定してやり、後はその失敗した部分について
自ら考え調節する事さえ出来れば、いちいちレシピを見なくても自由自在にその料理を作る事ができるようになる。
先生、小学生の時好きな子程いじめる派だったでしょ?
逆に言うと、今から俺が教えよとする事は、料理に慣れている熟練の主婦ならば息をするように毎日自然とやってのけている事なので、夫に愛想尽かされ自分の寂しさを紛らわす為不倫に走るような年増女は
今すぐ帰れぇ!
「そんなの一般常識でしょ、教わるまでもないわ」などと鼻で笑われるのは分かりきっている!
あーもう、みつや先生〜
ウォホンっ…あー、あー…
…読者の諸君!
幼気な迷える子羊の君たちを、息をするように浮気の出来る熟練の羊…いやむしろ羊飼いになるまで、この小説クッキングを通して立派に育てあげるのが俺の使命だと思っている。
時には家族や大事な人への罪悪感に苛まれ、繰り返す失態に精神的にきつい時期もあるだろう…。だが、成長に障害は付き物、そして乗り越えてこそ立派な大人になれるものだ。
無事俺の命令を余す事なく全て遂行できた暁には不倫という輝かしい自由と解放感を手に入れられる事を約束しよう、
異論は認めない、ついてこい!!
…例えが斜め上ぶっちぎりすぎてて全然ささってないと思いますけど、
多分これでもめちゃくちゃデレてるんです、みつや先生。貴重です。
ていうか先生?あんまりイっちゃってる事ばっか言ってるとせっかく読んでくれてる読者さん達、本編すら入ってないのにみんな帰っちゃうかもですよ…?
大丈夫だゆうり、心配いらない。
こんな得体の知れない小説をここまで読んでくれているんだ。みんな料理好きか変態に決まっている。
そして料理好きと変態は研究熱心でもある。失敗しただけ、気付いたらどんどん美味しく、見た目も綺麗になっていくんだ。楽しくない訳がないだろう。
…変態って単語、抜いてもう一回読んでもらってもいいですか?
誰に言っている?
読者にですけど。
フンッ何を言っているのかよく分からないがまあいい、話を本題に戻すぞ。
失敗といっても、失敗していい箇所が決まっている。
え、なにそれどういう事ですか?
失敗できるという事は改善できるという事だが、俺が指定している命令はこれ以外の方法をとると失敗する確率が高い、逆にやりやすい方法、あるいは正解があると分かっている所だ。
従って、自由にやれと書いてある所で思う存分失敗した方が効率は良い。
お前の失態が良い例だ、ゆうり。
え?
以前、俺の命令に背き、片栗粉をお湯で溶いて使い物にならなくした事があったろう。
ああ!熱々のフカヒレスープにとろみを付けようとした時の事ですか?
水で溶くより、お湯で溶いてそれ入れたほうがスープがぬるくならないかなって…
私なりの気遣いです!
ほんと余計な気遣いだったな。
でもでも、あれはびっくりしました!
まさか水とお湯、温度が違うだけなのにどうしようもないゴムが出来上がるなんてすっごいですよね!しかも一回ゴムになった片栗粉はお湯で溶かそうとしても頑なにゴムを貫いてましたもんね、もうほんっっとうに使えないゴムでしたぁ!
使えなくしたのはお前の頭がゴムのせいだけどな。
ただ、俺の命令を無視し、失敗しなくていい箇所まで自ら失敗に持っていく…
ゆうり、お前はなんて勉強熱心なんだ、思い出したら嬉しくなってきた。
良くやったぞ、ご褒美だ飴をやろう。
やったあ飴だぁ!
ごっくん
せ、め、て、噛、め!
丸呑みは感心しないと言っているだろう!
…お前には分からないだろうが飴は本来、甘くて美味しいものなんだ。
チッ、仕方ない、ほらもう一回口を開けてみろ
俺が直々に嫌という程舌に擦り付け嗜好品としての飴本来の楽しみ方を教えてや
ぎゃあああああ!!
《おいみつや、巻け》
(ぐっ…!?…、
今何か!? 脳に直接響いて?)
?ゴホンっ…
というように、とても時間を持て余している暇人どもはゆうりのように俺の命令に背いてみるのも勉強だ。
(ぐっ…
さっきの声は一体…
…いや、それにしても気持ち悪い声だった…)
みんなも上手く失敗出来たらみつや先生、飴くれるかもよ?
ちょっとこの飴味はしないんだけど、この喉を通る感じがたまらない!
ただ一つ、注意点だ。命令に背くならば一ヶ所にしろ。後の失敗原因の追求が楽になる。
今回のホワイトソースで例えるならば、牛乳と小麦粉を入れる順番だけを逆にし、あとは素直に命令に従ってみろ。
まあ、順番を逆にしたらしたで自動的に食えなくはなり、この量を全て生ごみにするのはあまりオススメはしないが興味があるやつは自己責任でやってみろ、とても勉強になる。
はいはーい!
これ、みつや先生に教わる前、他のレシピで牛乳を先に入れるって書いてあって
やったことありますけど、全然大丈夫でしたよー?
!ゆうり…まさかお前…っ
牛乳と小麦粉まぜるのだまだまになっちゃって、全部溶かすまで5時間くらいかかりまして、
さらに言うと、完成したグラタン食べた時、しぶとく生き延びた小麦粉のダマが口の中でぷはぁって弾け不味さ加減もトラウマ植えつけてくれまして
それから一年、グラタンを作ろうとすると吐き気を催します!
ん、それは「全然大丈夫」とは言わないんだ。よく頑張った。
飴もうひとつ舐めるか?…いや、やめておこう。
なぜ!?
あと、一つ言っておくが、
俺は俺にしか教えられない事と料理に必要な最低限の事だけしか教えるつもりはない。
え、何なに?どういう事ですか?
もったいぶらないで全部教えてくださいよ、みつや先生のケチ。
例えば、
卵白はアルカリ性であるから、レモン汁を加え弱酸性にすると泡立ちが良くなる。
こういうやつだ。これは省くからな。
なんかいつもだったら「何言ってんだこいつ一般人にも分かるように話せや」っていう内容なはずなのに、今までのみつや先生の例え話聞いてたら、なぜか一番めちゃくちゃすっきり分かりやすい。
すごく分かりやすいです、先生!
なるもんはなる、ならないもんはならない、だからここは大人しく命令に従っていろという事だ。
ただ、どうしてこうなるのかを理解していた方が手順として覚えやすい人もいるだろう。その時はインターネットで検索すればいくらだって他のレシピ、解説が載っている。
そうですよね、みつや先生のレシピ、くそ分かりにくいんで、違うレシピで作ればいいってことですね!(禁句)
《あー、まじみつやの説明長いわー、何回同じような説明すりゃ気がすむんだ老人かよまじだりー。
…あ、やべ。(かっこ)つけ忘れた》
(ぐっ…!?まただ、
今なんか…いや…空耳、か?)
そ、そろそろ料理に取り掛かるとするか。
ここまでオープニングとか、さすがにまずい気がしてきた。
え、みつや先生にも危機感とか備わってたんでか!?ゆうりびっくり!
\やっと本編/
〜猿でも分かるホワイトソースの作り方〜
講師:蜜谷/助手:有利
《ああもう!二人してうだうだやってるから、今回はもうタイムリミットだよ!次回に続く!!》
え?何!?
いきなり次回に続く!!?
ていうかお前、羽島だな!!
ぐわぁぁぁ何ですかこの気持ち悪い声えぇぇぇ!?
先生、今私の脳に直接何者かが、グッ、頭が割れ・・・
《第二回に続く》
蜜谷&友利
羽島あああああ
皆さんこんにちは。最後の最後で登場、新キャラの羽島だよ。あの馬鹿二人の料理教室「小説クッキング」の書記を担当してます、よろしくね。
あーそれにしても疲れたなー、ほんっと長いんだよねあいつらー、無駄話挟まないと料理出来ないとかほんと料理辞めれば?(禁句)
次回からは、何が何でも料理に入らせるから。
読者のみんなも疲れたよね、ありがとうね、読んでくれて。
これから一緒に勉強しながら美味しいもの、いっぱい作っていこうね。
じゃ、僕は片付けと説教が残ってるから、また次の回で!
「小説クッキング」第一回ホワイトソース(序章)編
ここまでお付き合い下さり、誠にありがとうございました。またね、ばいばーい!
講師:蜜谷
助手:友利
書記:羽島
提供
amaz◯n
赤ぺん先生
《はーい
みつや、りぃちゃん、お片づけだよーー》
うぐっ、声が直接脳に…!
終わったなら機械通して話すのはやめろ、早くスタジオ降りてこい!
ぐああ、やっぱりいつ聞いても気色悪い声ですぅぅぅ…
次回に続く