サユリがキララたちに
手伝いを頼んだ日の夕方、
最初に戻ってきたのはアリスだった。
アリスは商品が空になったカバンと
新規の契約書を持って店に入る。
サユリがキララたちに
手伝いを頼んだ日の夕方、
最初に戻ってきたのはアリスだった。
アリスは商品が空になったカバンと
新規の契約書を持って店に入る。
ただいまー!
お疲れ様です。どうでした?
もうバッチリ!
アリスはカバンと契約書、
そして売上の入った袋をサユリに手渡し、
得意気な顔をする。
それを見たサユリは途端に目を白黒させる。
ど、どうしたんですっ!?
まさか全部売れた上に
新規の契約まで
取ってきてくれたんですかっ?
これがわたしの実力ってもんよ。
すごいですっ!
これからも
うちで働いてくれませんか?
あはは、それはパス。
本当は幸運が重なっただけなんだ。
でもお役に立てたでしょ?
はいっ、ありがとうございますっ!
サユリはアリスの手を取り、
瞳を潤ませるほど喜んでいた。
それを見た瞬間、
アリスは全身の疲れが一気に吹っ飛んだ。
その直後、店にシャムが戻ってくる。
ただいまぁ!
シャム、おかえり~っ!
お疲れ様です。
シャムさんはどうでした?
うーん、やっぱり難しかった。
新規の契約は取れなかった。
でもまぁまぁ売れた。
シャムのカバンにはまだ商品が残っていたが、
それでも普段よりは売れているようだった。
これだけ売れれば御の字ですよ!
ありがとうございますっ!
えへへ、私はやれば出来る子。
おいーす。戻ったぜ。
シャムから遅れること数分、
最後にキララが店に戻ってきた。
ローズが頑張って売ったおかげか、
カバンの中の商品はほぼ空になっている。
その空いたスペースに
新規の契約書100件と前金が入れられていた。
なお、ローズは売上とカバンをキララに渡し、
すでに地獄へ帰って本業を再開させている。
キララ、おかえり。
おかえり~。
キララさん、お疲れ様です。
ほらよ、サユリ。
商品はほぼ売ってきてやったぞ。
それと新規の契約を100件ほど
取ってきてやった。
ど、どうやってそんなにっ!?
まぁ、あたしの人脈ってヤツだ。
礼はいらねぇぜ。
ありがとうございますっ!
キララさんっ!
よーっし!
んじゃ、あたしは帰るぜ。
わたしも一緒に帰るよ。
私も。
んじゃな、サユリ。
今日は本当にありがとうっ!
感激するサユリは
キララたち3人の姿が見えなくなるまで、
店の前で見送ったのだった。
それから店がどうなったのかというと――
翌日、サユリの店に
西地域の契約世帯やオフィスから
領収書や接客に関する苦情が多数届いた。
数件の契約解除の申し出も届いている。
一方、北地域を担当している
パートのおばちゃんたちは、
新規契約となった場所へ
翌日に初めて配達をすることとなった。
当然、そこは暴力団事務所やヤミ金など
目つきの鋭い強面が勢揃いした場所ばかり。
結果、パートのおばちゃんたちは
次々と辞めていってしまった。
こうして店は圧倒的な人員不足となり、
サユリは学校を休むどころか
不眠不休で手伝わざるを得ない状況となった。
サユリの父親も過労で再び倒れそうだとか。
あは……あはははは……。
あははははははははっ!
キララ、シャム!!
抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺……。
ひゃははははははははははっ!
今宵も米泥区の空に
壊れたサユリの不気味な声が響く……。
おしまいっ!