ーーラムゴ小国跡・ノーツモニュメント
ーーラムゴ小国跡・ノーツモニュメント
…本当は、もっと綺麗な場所だったの…杜の都なんて呼ばれて…
目の前に広がる小国の跡をぼんやりと眺めながら、シューネスは言葉を紡いだ。
でも…戦争が起きて、全部壊されてしまった…
戦争って…ソドモとのアレか
…うん
全部、私のせいなの…アルマがここで命を落としたのも、シルフが悪魔なんて呼ばれてるのもーー
全部、全部ーー
ラムゴはね、元々『ロト王国』っていう大きな国が二つに分裂してできた国なの。
独立派の人々が立ち上げた『ラムゴ小国』と、大国主義派の人々が立ち上げた『ソドモ公国』…正反対の国は、五世代にも及んでにらみ合いを続けてきたの。でも、ラムゴは少なくとも戦う意思はなかった…だから、近いうちに小競り合いは起きても、あんなに大きな戦いが起こるなんて、誰も思っていなかったわ。
アルマとシルフが、王家の修行としてラムゴを訪れたのは、ちょうどその頃…戦争が起こる、15年前のことーー。
ーー戦争の15年前・ラムゴ小国宮殿
……という事情で、人間の一生分…約百年近くになりますが、貴国の領内に滞在させてほしいのです
100年…それはまた随分な修行だね…天族は大変だな…
そういうことなら私は構わないよ。空き家を用意した方がいいかな?
そんなあっさり!?…あの、僕が言うのも何ですが…本当にいいんですか…?
……裏でもあるんじゃ…
こらシルフ、そんな事言わない!!
まあ、そう思うのが普通だよね…ラムゴ王家は代々こんな空気の人だらけだからなぁ…
まあでも、他意はないから。
ラムゴ小国は、国を挙げてあなた方を歓迎しますよ…アルマ王子、騎士シルフ。ようこそ、我が故郷へ
はい!よろしくおねがいします!!
ほらシルフも!!
……よろしくおねがいします
2人が訪ねてきたとき、私はまだ四つだったわ。謁見の間の扉をちょっと開けてね、そこから覗いていたの。
何が起きてるのかは分からなかったわ。でも、なんかすごい人たちが来たんだなーって、そんなふうに思ってた。
それからの二人の順応能力は凄かったわ…いえ、正確には『アルマの』と言うべきかしら。すぐに国民たちとも打ち解けて、国民からの評判もすごくよかったみたい…反して大変だったのはシルフね…あの子、本当にアルマとしか話そうとしなかったらしいから…私も、仲良くなるまですごく時間がかかったわ。
七つになって、脱走グセがついたの。やっぱり、外の世界を見たいじゃない?誰にもバレずに外に出て、賑わうマルシェを見るのがすごく楽しかったの…そんなある日。アルマたちは、そこで初めて私と出会ったの。
ーー戦争の12年前・噴水広場
あれ?君1人?お母さんは?
わあ!?
ひゃ!?ご、ごめん、驚かせちゃったね…
なんだ、迷子か?
多分…
んーん、シュー、迷子じゃないよ!遊んでたの!
ふーん…違うって。行こ、アルマ
遊んでるって…1人で?
アルマ…
だって心配じゃん!こんな人多いところでこんな小さい子…見ない顔だし…
お兄ちゃんたち、このまえきゅーでんにいたよね?シュー見てたの!
宮殿の近くに住んでる子かな…送ってあげようか?
えー!大丈夫だって!!
よく見たらそんなに幼くないみたいだし…遅くなっちゃうよ、帰ろ?
大丈夫大丈夫!まだこんなに日差し高いし…何ならお兄さんが遊んであげよっか!
アルマ!?何言ってんだよ!!
!!
うん!!シューあそぶー!!
わーい!!遊ぼ遊ぼー!!行くよシルフ〜♪
おい、アルマ!!待て!!
その日以来、アルマは私を見かけると必ず声を掛けてくれたわ。まだ私に王族っていう自覚が芽生える前だったから、普通の町娘として接してくれたの…私、それが本当に嬉しくて…宮殿の中じゃ、そんなふうに接してくれる人、いなかったから…それが心地よくて、自覚が芽生えてからも、私はずっと身分をかくしつづけたわ…二人の態度が変わってしまうのが怖かったから…でも…早く言っておけばよかったの…そうすれば、アルマたちがあんな目にあうこと、無かったかもしれないのに…
成長して、日々を追うごとに、私の中でアルマの存在はどんどん大きくなっていったの。最初はただの友達で、それが親友になって、大親友になる…それだけだった。でも、12歳になる頃…アルマのことを考えるだけで、すごくドキドキして…顔も熱くなって…本当に病気だと思ったわ。
その頃にはシルフとも普通に話せるようになってて、慌てて相談したの。
ーー戦争の7年前・秘密基地の水源
うう…シルフ…
!?ど、どうしたんだシュー?そんな泣きそうな顔して…
わ、私、病気かもしれないの…最近、妙に顔が熱くなることがあって、動悸もひどくなることがあって……
………あのさ、ひとつ聞いていい?
な、なに…?
まさか前例が…
『アルマのことを考えると』とかじゃなく?
!
………二人して同じ質問してくるとかほんとバカップルかよ…
ばかっぷる?
ただいまー!今日はいっぱい木の実取れたよ!パイでも作ろうか♪
おかえりアルマ。そしておめでとう。両想いだぞ
は!?
え!?
かなり間抜けで締まらない絵面になってるけど…こうして私とアルマは恋人になったの…すごく幸せだった…でも、これが原因で、益々自分の身分を明かせなくなっちゃったの…こんな大事なこと、どうして隠してたって、幻滅されるのが怖かった…だって恋人なんだもの…ずっとそばにいて欲しかった…私、本当にわがままだったわ…そして、そのワガママが、そのまま戦争に直結していったの……
それから6年たったある日…ソドモから王家宛に書簡が届いたの。内容は…近いうちに、本格的にラムゴ国内に兵士を送り込むって言った…所謂宣戦布告だった…。
ラムゴには戦う意思はなかった。だから、大きな軍なんて持っていなかったわ…いるのは王国兵や城下にたむろする傭兵くらいで…それでも国は守らなきゃいけなかった。父様は何とか停戦に結びつけようと、ソドモに何人も使者を送った…努力は実ったわ。ソドモから、停戦の条件が提示されたの。その条件は…私が、ソドモの王子と婚姻を結ぶことだった…。
私がこの条件を快諾すれば、戦争は起こらなかったのよ…でも…どうしても嫌だった…だって、私はアルマが好きなの。結ばれるなら、アルマと結ばれたい…そう、思ってしまった…。
誰も私を責めなかった。むしろ、当然だって言って笑ってたわ…みんな、優しかった…一層の事罵倒してくれたら、覚悟だって出来たのに…いえ、それも私のわがまま…ただの言い訳に過ぎないわ……。
書簡が届いて1年後…遂に、ソドモが攻め込んできた…でも、数少ない兵でも、3年持ったのよ…みんな頑張ってくれた…でも、日を追うごとに、少しずつ死亡する人が増えてきて…最終的には、宮殿と、攻め落とす価値無しと判断された林間部だけが残されたーー。
ーー開戦から3年後・ラムゴ小国
シュー、すまない…多分、ここももう長くは持たない…
父様…
お前だけでも逃げてほしい…少し前、アルマ王子の元に使者を送った。使者が無事にたどり着く保証はないが…でも、賭けないよりマシだ。
私だけ逃げろって言うの!?そんなの嫌…!!
みんなが残るなら、私も…!!
命令だ
!!
お前は逃げろ…そして、アルマ王子の許で生きろ…
ずっと、そうしたかったんだろう…?
で、でも…!父様は…父様たちは…!
………………
早く行け…時間がかかればかかるほど、逃げ道は少なくなる…シューネス、これは命令だ…逃げて、生き延びろ
とう、さま…
…………………………………
…………さようなら……
こうして、私は逃げた…秘密基地を目指して、ひたすらに走った…そこに行って、すべて話そうって…もう、後悔したくないって…泣きながらずっと走ってた…そしたらね…
シュー!!
あ、ある、ま…!!
迎えに来てくれてた…私はそのままの勢いで、アルマに飛びついた…安心で、訳が分からなくなっていて…何も言えなくて…
シュー…怖かったね…大丈夫。もう大丈夫だよ…僕がいるから…
うう…ふえ…アルマ…アルマぁ…!!
急に使者が来た時はびっくりしたよ…暫く小国に近づくなって言われた時も相当だったけど…そんなに酷いのかい?
………もう、だめ…ラムゴは、もう…
…僕らが加勢できれば…何も力になれなくてごめんね…
…ううん…アルマのせいじゃない…わたしの…わたしのせい…
シューのせいでもないよ
だ、だって、私が婚姻をーー
だって、シューはただの国民だろう?
………え…?
そう言えば…ほかの人たちがまだ見えないね…逃げ遅れてるのかな…
あ、アルマ!!使者からはなんて言われたの…?何を、頼まれたの…?
え…?えっと…『残された国民の保護を頼む』って…
そん、な…
小国の人々は、さいごまで優しかった…私に、ちゃんとチャンスを残していてくれた…この機会を逃したら、きっと私は言えないまま一生を終えることになる…だから、言ってしまおうと思ったわ…もう、国民は逃げてこない…誰も残っていない…私だけが、逃がされてきたのだと…でも……
…アルマ、わ、私実は…!!
シュー、伏せて!!
え…きゃっ…!!
な、何…!?
ソドモ兵…いろんなところから狙われてる…!
僕から離れないで、シュー!!
逃げ惑う私たちを、潜伏していたソドモ兵たちがものすごい勢いで攻撃してきたわ…でも、その一つ一つをアルマは確実によけていって、どんどん兵を退けていった…付けられているから、すぐに基地には戻れない…でも、暫く走るうちに、足音が二人分だけになった…私達は、ソドモ兵を撒くことが出来た…そう、思ったわ…
…なんとか、撒けたみたい…
はぁ…はぁ…ほんと…?よかった…
少し休もうか…そしたら、基地に向かおう。シルフが待ってる…
…うん
私はずっと繋いでいたアルマの手を放して、すぐ側の木の根元に歩いていった…そうして、腰掛けて休もうとした…でも…それが間違いだった
きゃあああっ!!
うわあああっ!!
木の根元に、小規模の地雷が埋められていた…私は、それを起動させてしまったのーー
かかったぞ、行け!!
知らない人の声がして、私はすぐに囚われてしまった…爆破の衝撃で、足が全く動かなかった…
う……ある、ま…?
拘束を振りほどく力もなく、私は首を巡らせてアルマを探した…心做しか視界が狭くて、すぐに見つけられなかった…でも…
シュ…がぁッ……!!
名前を呼ぶ声が、聞こえた…でも、それは叶わなくて、すぐに呻き声に変わった…
アルマ…!!
……あ、あ、あ…!
見なければよかったって、反射的に思ってしまった…私が見つけた時、アルマは……
あ"……ぐ、……ぅ……!!
体を縦に切り裂かれていた…
すごい量の血を流していて、普通の人間なら、死んでいておかしくない程の致命傷だった…でも、アルマは『人間』じゃなかった…だから…
……しゅ、ぅ……!シューを…はな、せ…!!
おい…こいつまだ生きてるぞ…!
気持ち悪りぃ…バケモノかよ…!
殺せ!!早く殺しちまえ!!
アルマ!!アルマ!!!
お願い!!いやよ…いや…!!もうやめて…!!
このままじゃ…アルマ…アルマがぁッ…!!
アルマは悪くない!!死ぬのは、死ぬのは私だけで…!!
必死に叫んだ…死ぬのはアルマじゃない、私だと…でも、兵士達は、聞き入れてくれなかったーー
その後、私は一週間拷問を受け続け、火あぶりで処刑された…痛みや苦しみは、感じなかった。ただ、ぐちゃぐちゃにされたアルマの遺体が、目に焼き付いて離れなかった…それを、ずっと見続けさせられる方が、よっぽど辛かったーー。
死んでからね、なんか、実感がわかなかったの。どうしてなんだろうって思ったら…私、成仏出来なかったのね…処刑された自分の遺体…そのすぐ側に座っていたわ。それで、真っ黒になった体が、どこかに運ばれていくのをぼんやり見てた…その時ね、まだ処刑会場に残っている人がいるのに気づいたの…見間違えもしなかったわ…
……シルフ…?
……………………
シルフ…!よかった…あなたは無事だったのね…!!
……え…?
ふれ、られない…?
そうだ…当然じゃない…死者が生きているものに触れることが出来るわけがない…こんなに、泣きそうな顔をしているのに、慰めることも出来ない…ここにいるよって、教えてあげることも出来ない…でも、何とかして彼と意思疎通がしたい…そう思って、考え始めた時だった…
お兄ちゃん?
…………………
どうしたの?大丈夫…?
どこか、痛いの…?
………どうも、しないよ…痛くない…
本当?……
お兄ちゃん、一緒に屋台回らない?
………は?
なんかね!せんそーに勝ったから、国を挙げてのお祭りなんだって!!色んな美味しいものとか、可愛いものとか、いっぱい売ってるんだって!!
きっとお兄ちゃんも元気になれるよ!!
子どもは、なんの悪意もなく、本当にシルフに元気になって欲しくて、そういったんだと思うわ…戦争の意味も、よく分かってなかったみたいで…でも…それで……
………せえ……
え……?
シルフは、腰に差していた長剣の柄を握って…
シルフ、待って!!!
……お前も、死んじまえ
いっ……!!
その子の首を、切り落とした……
ぶっ壊してやる…お前らの幸せも、日常も…お前らがやったように…全部…!!
シルフは、ずっと笑ってた…でも、それと同じくらい、ずっと泣いてた…きっと、こんなことしても何もならないって、わかってたんだと思う…でもーー
………どうして、お前らが死ななきゃならない…?
どうして、俺を置いて、2人で逝っちまったんだ…?
それが横暴だったから?時間を守らなかったから?…直すよ…なおすから…
もう遅刻しない…もう暴力だって振るわない…!!だから…だから…!!
俺を、一人にしないで…
もし、それも許されないなら……
一層の事、殺してくれーー
…………そんな、ことが……
正直…ここまで酷いとは思っていなかった…シューネスは1通り話し終わると、涙一つ流さずに立ち上がった。そして、俺に向かって深く頭を垂れた…
お願い…私には何も出来ない…!だから、あなたに頼るしかないの…!スコアホルダーのあなたなら、全てを終わらせることが出来る…!!
それって……
アルマを…終わらせてあげて…シルフを、解放してあげて…!!お願い…!!
アルマを終わらせること…それはつまり、俺がアルマを利用して、奏者としての役目を全うさせること…俺が、アルマにトドメを刺すこと……俺に、出来るのか…?
……アルト、やりにくいならさ、アルマに聞いてみりゃあいい
え…?
俺、ちょっと考えたんだけどよ…奏者を殺すってのは、本当に『殺す』ってんじゃなくて、あるべき姿に戻すってことなんじゃないか?
あるべき姿に…?
これは俺の推測だが…奏者になるには条件がある….その第一条件が、『すでに死亡していること』…いくら残酷な神様でも、このイマガイを治める神なんだ…自分の世界の生き物を、そんな簡単に殺すことを許すと思うか?
願いを叶えた時、奏者は漏れずに死体へと還る…だから、先代のスコアホルダーや挑戦者が『殺す』なんて表現を用いたんじゃないかって思うんだ
それじゃ…俺が直接アルマを手にかける必要も…?
うまく行きゃあな…まあ、アルマなら大丈夫だろ…お前の願いを、そして、たった今シューネスに言われたことを、そのまま伝えてやれよ…それなら、やれるだろ?
もし、その仮説が本当だったとしたら…やってみる価値は、充分ある…シューネスは恐る恐るというふうに顔を上げて、俺の表情を伺った…それに、俺は強く頷いて応えた。
正直なとこ、俺もどうなるかわからない…でも、やってみるよ。だからさ…成功するように、祈ってて。それなら、君でもできるだろ?
アルトさん……ありがとう…!
私、祈るわ。ずっと、祈ってる…!
…こうなったら、早くふたりに追いつかなきゃね!!希望神殿への道、ちゃんと見つけなきゃ…!
はいはい♪そこでまたまた俺登場!
その方法も、ちゃーんと馬車の中で見つけておいたぜ♪
仕事が早い…!ネプトはカバンから一冊の本を取り出し、あるページを示す…
えーっと…『希望は天にあり。道は王が知っている』…?
希望は天に…天ってのは、クラヌスの事だな…そして、王ってのは多分、そこを治める王様……今は、アルマの弟だな
弟…!?弟なんていたのか、アルマ…
ああ…アガト・カミエル…多分あったらビックリすると思うぜ。ホントにアルマにそっくりなんだ
それじゃ、まずはクラヌスに行って、その…アガト?に会えばいいのね!
クラヌスかぁ…確か、空の上の世界なんだよな!
……どうやって行けばいいんだ?
どうやってって…そりゃ、ワープしかねえな。実際それしかイマガイの民がクラヌスに行く術はない
ええ…でも、それじゃ…
ルナが胸元に手をやる…そこには、小さなメモリが一つ、揺れていた…そう…ワープでデータにかかる負担は大きい…若しかしたら、何らかのエラーが生じてしまうかもしれない…もしそうなったら、トミーは……
それも心配いらねえよ
ネプトはルナからメモリの付いたネックレスを外し、それを自分の手首に巻き付けた…それはつまり…
悪いなトミー。ちっと俺と留守番してようや
ネプト…!
行ってこい、ルナ。お前はアルトのパートナーだろ?お前が帰ってくるまで、のんびりここら辺観光して、たーっくさん知識詰め込んどいてやるからさ。
帰ってきたら、ちゃんと話聞かせてくれよな?2人で楽しみに待ってる
ネプト…じゃあ、ここで…?
ちゃんと願い叶えてこいよ?お前なら大丈夫だ!
………うん
そんじゃ、早速観光にでも行きましょうかねー!シューネス、案内できるか?
…うん、任せて!
………アルトさん、ルナさん……2人を、よろしくお願いします…
そう言うとふたりは、ノーツモニュメントから歩き出した…気にするなって、そういうメッセージなんだろうな…残された俺たちは、程なくしてルナの転送魔法でその場を離れたーー。
こうして、ラムゴのノーツモニュメント…後に、ある義賊と王の手によって『弔いの場』とされるそこには、誰もいなくなったーー。
ーーラムゴ小国跡・秘密基地
む……ふあぁ……
…あれ、シルフがいない…木の実でも取りに行ったのかな…?
シルフ、戻ってきたの?
起きれなくてごめんね…僕も一緒に行ければ……
!!…なんで、君がここに…!?
よ、アルマ…やっぱりここにいたんだ
やっと見つかった♪探すの苦労しちゃったわね…
やっぱり…?って、どういう…
ちょっとゴメンよ?
え…ッ!?
アルマー、そろそろ起きてる?木の実取ってきたから朝飯に……
!!
やあ、シルフ。3日ぶり…かな?
しる、ふ……助け…!!
アルマ…!てめぇ、アルマを放せ!!
あ、動かない方がいいわよ、シルフ
今のアルト…あなたに裏切られて相当参っちゃってるから…何するかわからないわ
っ…!!
そうそう…まんまと利用されたわけだよな、俺…ちょっと傷ついたよ…友達だと、思ってたのにさ…
利用といえばさ、アルマ?お前もいい加減気づいた方がいいよ?
シルフに利用されてるってさ!
………え…?
俺が…アルマを利用…?何言って…
アルマさ、自分が奏者だって、教えてもらった?
……え?僕が…奏者…?
そう。奏者。君は今回のスコアゲームの奏者なんだ…そして、シルフは例外的に願いを叶える権利を与えられた第3の存在…番人…
なに、それ…そんなの、聞いてない…!!
スコアゲームで願いを叶えるには、奏者が必要…知ってるよね?スコアゲームのルールだ…で、君はシルフに…番人に連れ出されてここに来た…誰にも内緒で、お前に正体を明かすこともせずに…….おかしいと思わない?
………………
俺達はともかく、アルマ本人にまで奏者と番人という重要な役割の説明を欠いていた…もしくは、躊躇っていた…どうして、そんなことをしたと思う?友達なのに…信頼で結ばれるべき、主人と騎士の存在だと言うのに!!
………たしかに…昨日、教えてって言った時も…明日教えるって、引き伸ばしてた……
それは…!
僕を利用して……願いを叶えるため……?
アルマ!!それは違う!!
酷いなぁ…俺だけじゃなくて、アルマまで騙してた…お前は本当に酷いやつだ…
違う…!違うんだアルマ!!俺は、そんなこと考えてなんか…!
………ごめん、シルフ……もう、いいよ…
アルマ…!!
色んなことがありすぎて…もう、分からないんだ……何を信じればいいのか、わからない……君のことも、信じられなくなっちゃった……
アルマ…そんな…
……シルフ、お前、希望神殿への道、知ってるんだろ?案内してくれよ
だ、誰が…!!
いいの?俺、今何するかわからないよ?
っ…………!
………わかっ、た……
やった!それじゃ、間違えないように案内してよね♪裏切り者の、悪魔さん♪
………くそ…!
第七楽章 シュー、託す fin
次回
第八楽章 シルフ、希う