…………
探したぞ、風音
ソールさん……どうして?
……どうして寝てないんですか?あんなに傷だらけだったのに
お前に頼みがある。十四郎を救いたい
……本気で言ってるんですか?
そのためにお前にこうして会いに来たのだからな
ソールさん、セヘル様の正体が何か、教えてあげましょう。あの人は先代の将軍様です
名は……榊 迦楼羅
……それを私に教えてどうだというのだ?
あまりに無謀だということですよ。ソールさんも榊迦楼羅という名前に心当たりありませんか?
……確か、十国建国以来の神童だとか
そう。兄上は現十国最強と言われていますが、迦楼羅将軍――セヘル様は十国史上最強なんです。兄上も、一太刀もかすらせたことすらなかった
だから、十四郎を諦めろというのか?
私が行ったところで返り討ちにあうのがオチだから、おとなしくしていろというのか?
それは……
見くびるな、風音。力の差で怖気づくなら、私たちはそもそも戦争を止めに入ったりしない
ここまで来て、十四郎を見殺しにするわけにはいかない。たとえ返り討ちがオチでも、私は十四郎を救いに行く
……そこまで言えるんですか
ですが、ソールさん。あなたでは髪を倒すことはできない。セヘル様の仮面は人を識別するんです。そして、十国以外の名前を持つ者の攻撃を完全に遮断する……。あなたに勝ち目などありませんよ
それじゃったら、何の問題もないのぅ
出た!!
人を化け物みたいに言うでない……
あなたは……?
風音副将軍殿、お初にお目にかかる。この村の村長をして居る者じゃ
先の名前の件じゃが、この男なら何の問題もないぞ。寧ろ、神を倒せるのはこやつしかおらぬ
……あの、あなたはセヘル様に恨みでもあるんですか?随分楽しそうですけど
そんなことはない。わしも若いころは迦楼羅様の軍に従軍しておった。その忠誠は今も変わらんよ
じゃが、神になられてから迦楼羅様は変わられてしまった。力と権力に身を任せ、独占的な神になってしまわれた
あの頃の勇敢で偉大な迦楼羅様が変わってしまわれたなら、それは時代の変わり目かもしれん
まぁ、水男殿の男気に心打たれたのもあるがのぅ!
風音よ、十四郎に聞いたことを、そっくりお前に投げよう
お前が本当は何がしたいのか、神にではなく自分に聞いてみろ
…………救いたい、たったひとりの兄なんです。救いたいに決まってる!!
けれど、僕とソールさんの二人だけでなんて、どう考えても…………
風音よ、誰が二人だけだと言った?
……は?
二人とも、私に触れろ。少し頭が揺れるだろうが、我慢してくれ
何のプレイじゃ?
……?
というわけなんだが、どうだ?
どうだ?じゃないでしょ!アンタ俺より重症だったの忘れたんすか!!っていうか、いくらなんでも不可能ですって!!
念話魔法を繋げたままにしておけと言われて、何をすると思ったら、本当に意地の悪いお方だ
あの、これ私達も聞いちゃってよかったんですか?
いちいち他の人間を介するのも面倒だからな。レーグルは起きてるか?
ええ、頭痛は酷いですけど
あと、普通に考えても無理でしょう。戦争でもなんでもなく、敵国の将軍を救うために軍を動かすなんて
っ………ソールさん
それをどうにかするために、お前にも念話を繋いでいるんだ。被害は勿論最小限に抑える
そういう問題ではなくて!!……めちゃくちゃですね、あなたって人は
いいことを教えてやろう、レーグル。先生は責任は自分が取るから建前上のゴーサインだけ欲しいって言ってんだ。それ以上のことは友人を救い出してからだってな
……指揮官をなんだと思ってるんですか、あなた達は
ちなみにっすけど、先生。俺もシャルムも勿論お供しますよ。国に喧嘩売ったんだ、今更神様に喧嘩売ろうが、何も怖くありませんよ
…………お兄様
適当に流せるところは流すべきだぜ、指揮官殿
…………いいでしょう
ここで十国の将軍に恩を売っても悪くないでしょう。ディスナティ軍はこれより、榊十四郎将軍救出のサポートに回る!!
……はいっ!
乗りかかった舟です、私も全面的に協力しましょうぞ
同時に、作戦の指揮権をソール・グルナディエに委託します
…………
……いいだろう
これより榊十四郎救出作戦を開始する!皆、私に力を貸してくれ!!