俊之達の通う高校では、
すでに文化祭も体育祭も終り、つい先日、
2学期の中間テストが行われた。
俊之達の通う高校では、
すでに文化祭も体育祭も終り、つい先日、
2学期の中間テストが行われた。
そして今日、その成績表が生徒達に配られて、
絵美と由佳と木綿子の3人は
俊之の家に集まっている。
因みに俊之はアルバイトで居なかった。
んで、絵美、あんたは何番だったのよ?
えへへ~。
何、勿体付けているのよ。
じゃあ、発表しまーす。
早く言いなさいよ。
37番でした。
すごいじゃん。
本当に!?
本当だよ。
ほら。
絵美が成績表を二人に見せた。
確かに、殆どの教科で
絵美には完敗だったけどさ。
絵美って、
こんなに頭が良かったの?
私も自分でびっくりしているんだ。
ここまで差をつけられるなんて。
いぇーい。
絵美は由佳に向かってVサインをした。
なんか、すごいショック。
何でよー!?
運動神経以外はどんな事でも、
絵美にだけは負けないと
思っていたからさ。
あははは。
酷ーい。
だって、あんた1学期の
期末テストは何番だったっけ!?
ははは。
それを訊かれると困るけど。
何、今更、困っているのよ。
311番。
信じられないよね~。
絵美、ズルをしたんじゃないの!?
ズルなんてしていないよー。
ちゃんと勉強をしたんだから。
それにしても、
311番から37番って。
俊君が言っていたよ。
何て?
ウチの高校じゃ、真面目に勉強を
している奴なんて、そんなには
いないから、 ちょっとでも勉強を
すれば、全然、成績が違ってくるって。
確かに、
そうかもしれないけどね~。
それで、その山ノ井君は何番だったの?
1番だったんだって。
さっきメールで喜んでいた。
やっぱり、
山ノ井君って頭がいいんだね。
俊君に勉強を教えて貰うと、
先生に教わるよりも、全然、
面白いんだよ
そうなんだ。
だから、私も勉強を
好きになっちゃってさ。
それが考えられないんだよね。
絵美が勉強を好きだなんて言う事自体。
あはは。
自分でも、そこは本当に
不思議だったりもする。
私も少しは勉強をしようかな~。
じゃあ、一緒に勉強をしようよ。
私が教えてあげるよ。
あんたに勉強を教わったりなんか
したら、恥だわ。
何を言っているのよ。
188番のくせに。
うっさいわね。
まぐれでいい点を取ったからって、
いい気になって
いるんじゃないわよ。
まぐれじゃないも~ん。
ねぇ、木綿子。
一緒に勉強をしない!?
別に構わないけど。
由佳と私じゃ、
勉強にならないんじゃないかな。
確かに、そうなのよね~。
木綿子とじゃ、
あーでもない、こーでもないって、
くっちゃべって終っちゃいそう。
よっぽどショックだったんだね。
そりゃ、そうでしょ!?
絵美にだけは負けっぱなしで
いる訳にはいかないわ。
私はどうでもいいけどね。
あんた、冷めているよね。
そうかな!?
それに木綿子は私よりも
成績は良かったもんね。
良かったって言っても139番だよ。
絵美には、とても敵わないわ。
だから、みんなで一緒に
勉強をしようよ~。
みんなで、ね。
ははは。
俊君が居る時は
俊君に教えて貰えばいいじゃん。
あんたは、それでいいわけ!?
何で?
だって、
山ノ井君と二人きりの方が、
いいんじゃないの!?
別に勉強をする時は俊君と
二人きりじゃなくてもいいよ。
そうなんだ。
由佳や木綿子も一緒の方が
楽しそうじゃん。
まあ、あんたはそれで
いいのかもしれないけど、
山ノ井君はそうじゃないのかも
しれないじゃない。
それは今日の夜に訊いてみる。
じゃあ、山ノ井君がOKだったら、
そうしてみようかな。
木綿子はどうする!?
そうなったら、
私も付き合うしかないじゃん。
じゃあ、それで決まりね~。
とにかく、絵美に負けっぱなしは、
私のプライドが許さないわ。
私も少し熱くなってみようかな。
そうよ。
私達だって、ちゃんと勉強を
しさえすれば、絵美になんて
負けるはずはないんだから。
100番以下の人達に
"なんて"なんて、
言われる筋合いはないじゃん。
あ、今のちょっと
カチンときたかな。
いい気になっていられるのも、
今の内だって。
ふ~ん。
いいも~ん。
それじゃ、ちょっと私は
お風呂掃除をしてくるね。
絵美が立ち上がる。
あんた、本当にそこは
偉いって思うよ。
もう花嫁修業を
しているんだもんね。
えへへ~。
そして絵美がリビングから出て行く。
ねぇ、由佳。
何?
本当に勉強をする気なの?
だって、絵美に負けっぱなしは
我慢がならないもん。
そっか。
それにさ。
何?
絵美と山ノ井君が、
どういう風に勉強をしているのか、
見てみたくない!?
それは、ちょっと見てみたいかも。
でしょ~。
それとさ~。
何?
ウチの親、勉強しろしろって、
うるさいんだよね。
そうなんだ。
木綿子は言われないの!?
ウチの親は何も言わないな~。
いいな~。
私、今度のテストの成績を
見せたら、もっとうるさく言われそう。
そっか~。
だから、
いい機会かなって思ってね。
木綿子に付き合わせちゃうのは
悪いけどさ。
気にしなくていいよ。
私もちょっと本気で勉強を
してみようかなって思うから。
そっか。
それに私達、どうせ大して、
する事がないじゃん。
そうなんだよね。
彼が出来たら、勉強なんてして
らんなくなるのかもしれないし。
そうだよね。
だから、それまでは
勉強をしてみるのも、
悪くはないかなって。
なるほどね。
それにしても、絵美って
変わっているよね。
あはは。
確かにね~。
でも、山ノ井君も
変わっていない!?
そうだね。
だから、本当にお似合いなんだけどね。
山ノ井君、アルバイトがない時、
私達と一緒に帰る様に
なったもんね。
そうそう。
普通は二人っきりになりたいって
思うはずよね。
ねぇ、由佳は今、二人っきりに
なりたい人はいるの?
今はこれって思える男の子は
いないんだよね~。
そうなんだ。
木綿子はいるの?
うん。
誰?
大竹君。
やっぱり。
やっぱり!?
だって木綿子、時々、
大竹君の話をしていたじゃん。
そうだよね。
由佳にはバレちゃっているよね。
木綿子って、面食いだよね。
自分でも、そう思う。
でも、大竹君って
彼女がいるみたいじゃん。
そうなんだよね。
だから、勉強をしてみても
いいかなって。
そっか~。
私もさ。
うん。
井上君っているでしょ!?
純君?
違う。
名前なんだったかな~。
じゃあ、孝太君かな!?
そうそう。
その孝太君に付き合って欲しいって
言われたんだけどさ。
そうだったんだ。
全然、タイプじゃないっていうか、
有り得ないでしょ!?
あはは。
そうだよね。
私は絶対に嫌。
でしょ。
私だって嫌だよ。
それって、いつの話?
もう夏休み前の事なんだけどね。
絵美は知っているはず。
そうなんだ。
純君の方だったら、
まだ有り得ないって程じゃないけどさ。
そうだよね。
孝太君は有り得ないって。
あははは。
だって、あの子、
私の胸の辺りばかり、
じろじろ見てさ~。
やだ~。
本当に気持ち悪いったりゃ
ありゃしないっての。
本当に有り得ないよね。
まあ、そんなんだからさ、
ロクな男の子がいないな~、なんてね。
それは言い過ぎじゃないのかな~。
そうなんだけどさ、
ちょっとでも、いいかなって
思う男の子がいてもさ。
うん。
そういう男の子って、すでに
彼女がいちゃったりするじゃん。
それは、そうだね。
大竹君だって、そうじゃん。
うん。
それに私の場合、絵美みたいに
堂々と付き合ったりは
出来ないからねぇ。
それは絵美の方が
おかしいだけだよ。
それは、そうだけどさ。
ウチの親は本当、嫌になる。
由佳のお父さん、すごく
厳しいって言っていたもんね。
厳しいなんてもんじゃないわ。
子供を可愛がるにも程があるでしょ!?
ウチのお父さんは
厳しくない訳じゃないけど。
うん。
お母さんに完全に尻に
引かれちゃっているからさ。
そうなんだ。
お母さんさえ味方につけちゃえば、
平気かな。
ウチとは全然、逆なんだね。
羨ましいな~。
でも、お母さんに怒られている、
お父さんの姿を見ると複雑だよ。
あはは。
そうなんだ。
ウチはそんなところ、
見た事がないからねぇ。
そして絵美がリビングに戻ってきた。
何の話をしていたの?
そう言いながら、絵美が木綿子の対面に座った。
親の話をしていたんだ。
絵美んチの親は亭主関白なの?
う~ん、どうなんだろう。
ウチは完全に亭主関白だわ。
ウチも表面上は、そうかな~。
表面上って?
だから、表面上はお父さんの方が
主導権を握っている感じ。
それは分かったわよ。
うん。
でも、実際に主導権を握っているのは、
お母さんだと思うな。
それって、絵美と山ノ井君も、
そんな感じじゃないの!?
そうかな!?
私は全部、俊君に
任せちゃっているけど。
だって山ノ井君、
普段は偉そうだけど、絵美に対して
だけは頭が上がらない感じじゃん。
あはは。
私がむくれた時だけは、
そうかもしれないけどね。
絵美んチの親は、
そういう感じじゃないの!?
ウチは殆どは、お父さんが
決めるんだけど、いざって時になると、
お母さんが強くなるんだ。
そうなんだ。
私が俊君をお父さんとお母さんに
紹介した時にさ。
うん。
お母さんが私に、お父さんが
反対をしても、お母さんが何とか
してくれるって言ってくれて。
そうなんだ。
でも結局、お母さんの出番は
なかったんだけどね~。
絵美はお父さんが、
お母さんに怒られているところって
見た事ある?
それはないかな~。
普通はそうだよね。
由佳は見た事あるの?
私はある訳ないじゃん。
木綿子の方よ。
そうなんだ。
ウチはそんな事は
しょっちゅうだよ。
ウチは逆だったら、
しょっちゅうだけどね。
ウチはお母さんがお父さんに
怒られているところも、
余り見た事はないかな。
そうなんだ。
ちょっと窘める様な感じの
場合はあるけどね。
絵美んチの親って仲がいいんだね。
そうなのかな!?
ウチのお父さんも、あんなに
威張っていて、お母さんはよく
怒られてはいるけど、決して
仲が悪いって訳じゃないんだよね。
ウチも、そうも思うんだけどさ、
お父さんが怒られていると、
なんか、可哀相になってくるんだよね。
そうなんだ。
山ノ井君のお父さんって、
どんなお父さんだったんだろうね?
俊君も余り覚えていないんだって。
そうなんだ。
お母さんは気さくで、
とても優しそうなお母さんだよね。
私もそう思った。
絵美、山ノ井君のお母さんとも
仲が良さそうだもんね。
うん。
すごく良くして貰っていると思う。
絵美は姑さんにも恵まれているんだね。
まだ結婚が出来るって、
決まった訳じゃないよ~。
そうかもしれないけどさ。
でも、私は俊君と結婚が出来たら、
いう事はないかな。
はいはい。
ご馳走様。
本当にいつもこれだもんね。
それじゃ、私達はそろそろ帰るね。
由佳が立ち上がる。
絵美はまだ居るんでしょ!?
木綿子が立ち上がる。
うん。
どっちみち、こっからは絵美とは
帰り道が逆じゃん。
そうなんだけどね。
絵美が立ち上がって玄関まで二人を送る。
そんじゃ、またね。
またね。
バイバイ。
由佳と木綿子は自分の自転車で
自宅へと帰って行った。
絵美は二人を見送ると、洗濯物を取り込みに行く。
隣の家にある柿の木が実をつけているのが
絵美の目に入ってきた。