【46】























なにが起きたのかわからなかった。
ただ、目の前にいた狼男が
目を見開いたまま前のめりに倒れた。

飛んできた赤い雫が1滴、
ボクの頬に付いた。








そして

……全く、世話焼かせやがって!

!!

倒れた狼男の背後から
悠然と現れたのは
鬼のような大男だった。




鬼は狼男の身体を
ゴミのように足で蹴り避けると
ボクの手首を掴んだ。

獣の分際で、逃げ出そうなんざ1千年早ぇんだよ!
おら、とっとと馬車に戻れ!


ボクは引きずられ、
最初の馬車に投げ込まれた。













硬い振動が伝わってくる。
どうやら馬車が動き出したようだ。

車輪の音に混じって話し声が聞こえる。

おいおい、商品なんだから手荒に扱うなよ。
価値が下がるだろ

しかたねぇだろ。
あの騒ぎのせいで他は全部逃げちまいやがった。
労働の割に対価が合わねぇよ。当たりたくもならぁな


さっきの鬼と、もうひとり。

話の内容から察するに
馬車に乗っていた他の獣人たちは
皆、逃げてしまったらしい。





ボク以外、みんな。




その1匹の価値を下げるな、って言ってんだ。
あれでも雌だぞ。みてくれが大事だ

けっ、雌の奴隷なんざ身体以外になんの価値があるっていうんだか。
それもあんなツルペタの幼児体型。欲しがる奴なんかいやしねぇよ

ばぁか。
獣人を欲しがる時点で性癖なんざ知れるだろ。お偉方はああいうのが欲しいんだよ、男も知らねぇようなウブいのが

……


ボクは
そういう人に売られるのか。




奴隷……奴隷として。

戦車に乗ったほうがよかったのかな



今更後悔しても遅い。

馬車はガタガタと車輪を軋ませながら
走って行く。







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