リチャード・リースが入ってきた。
「何故、私の夢には出てきてくださらなかったのですか」
「無理じゃないかと思っただけだ」
「無理とは」
リチャード・リースが入ってきた。
「何してらっしゃるんですか」
「あ、リッチーくん」
「まさかと思うけど、夢のこと」
「うん、トマスが・・・その、夢に出てきてくれなかったと言ってるんだよ」
「あー・・・でも夢の中の殿下ってすんごく無表情で怖かったですよ」
「怖い、のですか」
「うん、怖いの。白い布被って静かに話していて…時々、なんか、ね」
「どうしたと言うんた、リッチーくん」
「うーーーん、トマス殿はその…もう一回累ガ淵、あ。だめだった…」
真っ青になっているトマス。
「そ、その話は、その」
「四谷怪談とか…トマス殿っっっ」
「だから言ったんだよ、無理だって」
ひっくり返っているトマス。
「思い出しただけで、コレじゃ無理…ですよね、殿下」
「うーーーん…予想外」
「僕、予想してましたけどね。確かジャパニーズ・ホラーの話、兄上のオーベルジュでしたらやはり…」
「私より駄目だったのか」
「でしたよね。そりゃ…どうします、トマス殿」
「うん、まあ、この後は私がなんとかするから」
「なんとかなるんですか」
「ならないかも…」
「いずれにしても」
「いずれにしても」
「どうしようか、これ。ねー、リッチーくん」
「どういたしましょうか、これ、ねー殿下」
ラヴェル艦長が入ってきていた。
「何しているんですか、お二人とも」
「あ、フランシー」
「ちゃっちゃっと目覚めさせて旗艦にお戻りを、殿下。それから我が君、お父様とお母様、それに姉上様もお待ちでいらっしゃいますよ、わかってらっしゃるんですか」
「あ、いけね」
「さっきまでめちゃくちゃ攻撃されていた私の身にもなってくださいまし、陛下」
「フランシーの「陛下」呼ばわりの方が僕、怖い」
「…ああ、そういうことね」
「殿下、また後でね」
二人が去っていく。
「はいはい。でも、ほんとにコレ、どうしよう…」
気が付きそうもないトマスを眺めるだけの総裁殿下でありましたとさ。
夜も昼もなくあなたが恋しい そんな私があなたの夢に出てきてませんか