トマス

「何故、私の夢には出てきてくださらなかったのですか」

総裁

「無理じゃないかと思っただけだ」

トマス

「無理とは」

リチャード・リースが入ってきた。

リチャード・リース

「何してらっしゃるんですか」

総裁

「あ、リッチーくん」

リチャード・リース

「まさかと思うけど、夢のこと」

総裁

「うん、トマスが・・・その、夢に出てきてくれなかったと言ってるんだよ」

リチャード・リース

「あー・・・でも夢の中の殿下ってすんごく無表情で怖かったですよ」

トマス

「怖い、のですか」

リチャード・リース

「うん、怖いの。白い布被って静かに話していて…時々、なんか、ね」

総裁

「どうしたと言うんた、リッチーくん」

リチャード・リース

「うーーーん、トマス殿はその…もう一回累ガ淵、あ。だめだった…」

真っ青になっているトマス。

トマス

「そ、その話は、その」

リチャード・リース

「四谷怪談とか…トマス殿っっっ」

総裁

「だから言ったんだよ、無理だって」

ひっくり返っているトマス。

リチャード・リース

「思い出しただけで、コレじゃ無理…ですよね、殿下」

総裁

「うーーーん…予想外」

リチャード・リース

「僕、予想してましたけどね。確かジャパニーズ・ホラーの話、兄上のオーベルジュでしたらやはり…」

総裁

「私より駄目だったのか」

リチャード・リース

「でしたよね。そりゃ…どうします、トマス殿」

総裁

「うん、まあ、この後は私がなんとかするから」

リチャード・リース

「なんとかなるんですか」

総裁

「ならないかも…」

リチャード・リース

「いずれにしても」

総裁

「いずれにしても」

総裁

「どうしようか、これ。ねー、リッチーくん」

リチャード・リース

「どういたしましょうか、これ、ねー殿下」

ラヴェル艦長が入ってきていた。

ラヴェル艦長

「何しているんですか、お二人とも」

リチャード・リース

「あ、フランシー」

ラヴェル艦長

「ちゃっちゃっと目覚めさせて旗艦にお戻りを、殿下。それから我が君、お父様とお母様、それに姉上様もお待ちでいらっしゃいますよ、わかってらっしゃるんですか」

リチャード・リース

「あ、いけね」

ラヴェル艦長

「さっきまでめちゃくちゃ攻撃されていた私の身にもなってくださいまし、陛下」

リチャード・リース

「フランシーの「陛下」呼ばわりの方が僕、怖い」

総裁

「…ああ、そういうことね」

リチャード・リース

「殿下、また後でね」

二人が去っていく。

総裁

「はいはい。でも、ほんとにコレ、どうしよう…」

気が付きそうもないトマスを眺めるだけの総裁殿下でありましたとさ。

夜も昼もなくあなたが恋しい そんな私があなたの夢に出てきてませんか

エピローグ・白い布

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