……うちの学校は、少しばかり変わっている。
……うちの学校は、少しばかり変わっている。
まず、学校の中に礼拝堂がある
それ自体は、ミッション系の学校ならさほど珍しくないのかも知れない。
珍しいのは……
…………
あ、神父様
……また貴女ですか。
授業はどうしました?
ヤダなあ、いまはテスト期間中ですよ? もうとっくに終わってます
なら、早く家に帰って勉強するべきでしょう
私、こう見えて頭が悪いもので。
今からあがいても手遅れなんです
堂々と宣言してどうするんですか!?
うーん、いいなあこの鋭いツッコミ。
まあまあ。大丈夫ですよ、うちはエスカレーター式ですから
大丈夫ではありません。
主に私の心が
あんまり悩みすぎるとハゲますよ?
今すぐ出て行きなさい
調子に乗りましたごめんなさい
神父様は小さくため息をついた。
ハア……わかりました、こちらへ
……礼拝堂で騒ぐわけにはいきませんからね
神父様の部屋、相変わらずキレイですね
あまりじろじろ見ないでください
神父様はそっけなく言うと、キッチンへと入っていった。
どうせ貴女のことですから、お腹がすいて寮に帰りたくないんでしょう?
カチャカチャと、食器の触れ合う音がする。
さすが神父様! 名推理ですね!
まったく……それを飲んだらすぐ帰るんですよ
……いい匂い
どうぞ。時間が経つと風味が落ちますから
いただきます!……あっ
?
神父様、袖のところ! こぼれてますよ!
ポタポタ……
神父様の袖口から、真っ赤な血が滴っていた。
もったいない! 舐めてもいいですか?
ダメですよ、行儀の悪い。
そのカップの中身だけで我慢しなさい。
カップを開けると、甘い香りがさらに強くなった。
あまい、あまい、ちのかおり。
……うん。やっぱり神父様のが一番おいしいです
そうですか。飲み足りないなら、まだおかわりがありますよ
神父様は穏やかに笑うと、ザックリと割けた手首を差し出した。
包丁かなにかで切ったばかりなのか、いまだ血のいきおいが止まらない。
あんまり飲んで、神父様が死んじゃったら困るしなあ……
神父様の家族は、神父様がこどもの頃に……吸血鬼に襲われて全滅した
一人だけ生き残ってしまった神父様はというと……
……私にとって家族とは、悪魔と同義でした
ですから、私は貴女達のしもべになりますよ
こうして人間の神父様は、吸血鬼の学校に住み着くことになったのでした。
……神父様も、いい感じに壊れてますよね〜。
私たちはおいしいごはんにありつけて嬉しいけど!
そうでしょうか?
ただ私には、貴女達(バケモノ)よりも…
ニンゲンの方がよほど恐ろしい。
……ただ、それだけのことですよ