心霊スポットとして有名なとあるトンネル。

 僕は、霊なんて存在しない!

 という証明をするために、カメラを持って冒険に来ていた。





ここか……

 



 見渡す限り真っ暗な、まさに一寸先は闇。

 この暗さはさすがに何か出そうで、足が怯む。





でも、行くんだ!

 




 僕は強い決意を胸に、カメラを片手に一歩進んだ。
















…………




 水音と、僕自身の靴音だけが響く。

 何度かカメラを構え、シャッターを押す。



 何も映らないはずだ。

 そう、何も……。

 映ってはいけない。



 霊なんていないことを証明するために、何度もシャッターを押す。





……

 


 1人で来たのは間違いだっただろうか。

 真夏だというのに肌寒く、背筋に冷や汗が伝う。








 何かが、

 ぬめっとした何かが背中に当たった。

 僕は直立で固まる。

 恐る恐る振り向き…………








カーット!!

 


 パパパッと証明がつき、あたりは明るくなった。


ちょっと!
もっと驚いてもらわないと困るよぉ!

すみません

これは『夏の肝試し大作戦!これでアナタも驚かせ上手!!』っていう特番なんだからさぁ

はぁ

引っかかるほうがもっと驚いてくれないと。視聴者が『私も誰かを驚かせてみよう!』って思ってもらえるようにしたいんだよ

はい

 監督が力説している。

もう一回ね!あともっと顔!表情を何とかして!

頑張ります












 

take2






 

 


 何かが、

 ぬめっとした何かが背中に当たった。

 僕は直立で固まる。

 恐る恐る振り向き…………





うわあああぁぁぁぁぁ!




 カメラを放り出し、一目散に入り口に向かって走り出した。






 真っ暗なトンネルで、道に迷ったのだろうか。

 入り口にたどり着けない。

 僕はあせる。




そ、そうだ、携帯……!




 ズボンのポケットを探る。















カーット! ダメダメ、もっと慌てて!

はい、すみません……

撮り直し!

















 

take3













 


 

そ、そうだ、携帯……!




 ズボンのポケットを探る。


あった!




発信。




ツーツーツーツー……

ダメだ、電波が……

 僕はもうダメかもしれな……




 あきらめかけたそのとき。

















 

いやー、どうでした? 怖かったですか?




 派手な格好をした人が

「真夏のトンネルドッキリ大作戦☆」

 なんてプラカードを掲げてやってくる。


は、はぁ?

お化けドッキリです!

え? じゃあ、このトンネルに霊が出るとか……

ぜーんぶ嘘☆



 よ、よかったぁ……。

 僕は安心してふにゃふにゃとその場に座り込む。



ありゃりゃ、大丈夫? キミ、ゆーれいなんて信じない! なんて豪語していたからこんなことになっちゃったんだよ









カーット!

種明かしはもっと明るく!






 

take4











 

よ、よかったぁ……

 僕は安心してふにゃふにゃとその場に座り込む。

ありゃりゃ、大丈夫? キミ、ゆーれいなんて信じない! なんて豪語していたからこんなことになっちゃったんだよ

じゃあ、やっぱり霊なんていないんだ!

そーんなこと言ってると、また……

う。い、います。ゆーれい存在します!










カーット!

編集で面白くしよう! 君たちはオンエアを楽しみにしていたまえ!

はい。ありがとうございました

ありがとうございました!


















  

……面白い番組だと思う?

さぁ

霊って本当にいると思う?

さぁね






 

トンネル大作戦!

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