私は、クロードさんに言われて、慌てて残りのクッキーを食べた。

 その直後、サフィラさんを含めた残りの住人が食堂に入って来た。

マリー

 ジャスミンさん。

 こんなことになってしまってすみません。

 マリーさんが私に駆け寄って来た。

ジャスミン

 いえいえ、私は大丈夫です。それよりも、マリーさん達の方が心配です。ご家族を亡くされるなんて……。

 私は、マリーさんが心配だった。

マリー

 私たちは大丈夫です。

 マリーさんは微笑んでくれた。

 でも、その笑顔は、どこか悲しみが感じられた。

サフィラ

 これで生存者全員が揃いました……。 

 揃った住人を確認すると、必然的に殺させた人物がわかった。殺されたのは見習いメイドのクレアであった。

ジャスミン

クレアさんが殺されたんですか?

サフィラ

 そうです……。

アーサー

今夜はここで一晩明かすしかないようだね。

マリー

そのほうが安全ね。

ユース

 ダメだ。犯人がわからない以上、この中の誰かが犯人かもしれない。

 もしかししたら、ジャスミンさんが犯人って言うこともありえる。

 そうしたら、俺たちは犯人と一緒に寝ることになる。

 俺は部屋に戻る。その方が安全だ。

クロード

待ちなさい、ユース。

 ユースは乱暴にドアを閉め、食堂を出て行った。

クロード

 しみません。無礼な態度を取らせてしまって……。

ジャスミン

 いえいえ。気にしていません。

 私が来てから起こったことですし、疑われるのは当然です。

サフィラ

 では、私とシルビアで見回りを行います。

 皆さんも部屋に戻った方が安全ですね。でも、鍵をかけるのをお忘れなく。

サフィラ

 では、一人ずつ案内しますので。

 アーサー様、こちらへ

 アーサーさんは食堂を出た。

 続いてマリーさん

 そして、クロードさん

 そして、シルビアさん

 最後に、サフィラさんが私を案内しに来た。

ジャスミン

 サフィラさんは怖くないのですか?

 平然と廊下を歩くサフィラさんに聞いてみた。

サフィラ

 ええ。怖くありませんよ?

 サフィラさんが笑顔で言う。

ジャスミン

 そうなんですか。 凄いですね。

サフィラ

 いえいえ。

 犯人、もしくわ原因がわかっている小説を読んでも、ジャスミンさんは怖くないでしょう?

ジャスミン

え? それってどういう……?

 私がジャスミンさんに聞き返すと、ジャスミンさんは立ち止まった。

サフィラ

 だから、犯人がわかっているなら怖くもなんともないと思いませんか?

 そういって、ジャスミンさんは、廊下の先を指差した。

 私は、サフィラさんの指差した先を見た。

ジャスミン

……。

 暗くてよく見えない。

 でも、何かが廊下の突き当たりで山積みになっていた。

サフィラ

ほら、もっとよく見えるようにしてあげます。

 サフィラさんは手に持っていたランプを山積みになっている何かにめがけて投げた。

 廊下の先でランプが割れ、山積みになったものが浮かび上がる。

ジャスミン

ひぃっ!

 浮かび上がったのは、さっきまで食堂に居た皆の変わり果てた姿だった。

ジャスミン

じゃあ、犯人は……。

 私が振り向くと、腹部に激痛が走った。

ジャスミン

かはっ……。

 サフィラさんが、私の腹部に果物ナイフを深くまで突き刺していた。

サフィラ

 フフフッ。私はここから出たいのよ。悪く思わないでね。

 私は、その場に倒れこんだ。意識がだんだん遠のいていく。

 廊下が私の血で赤く染まってていく。

ジャスミン

そん……な……。

 廊下を歩いていくサフィラさんは、どこか楽しげだった。

ジャスミン

ここは……。さっきの部屋……?

 私が再び目を覚ましたとき、私はベッドの上で眠っていた。

 窓の外は赤い月が夜の森を照らしていた。

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