ナキが顔を上げると、そこにいたのはナキ達の隣に住む聡美(さとみ)おばさんだった。その後ろには二人の警官が立っており、深々と頭を下げる。無数の手は、この人達のものだったのか。ナキは安堵した。警官の言葉を聞くまでは。
ナキちゃん!!
ナキが顔を上げると、そこにいたのはナキ達の隣に住む聡美(さとみ)おばさんだった。その後ろには二人の警官が立っており、深々と頭を下げる。無数の手は、この人達のものだったのか。ナキは安堵した。警官の言葉を聞くまでは。
ナキさん。貴方のお母さんと、弟さんが、お亡くなりになりました
言葉を失った。周りには沢山の人がいるのに、目の前は真っ暗になった。
ウソですよね? 尋ねる声すらも失って、おもむろに顔を上げると、警官は言葉を続ける。
帰り道、信号無視した車と衝突し、二人共病院に着く前に……申し訳ございません
警官は、悪いのは自分ではないものの、深々と頭を下げてナキに謝った。
聡美おばさんがナキを抱きしめ、
うちにおいで
と、声をかけてくれたが、彼女の誘いにナキは首を振った。
お願い。今日一日、この家で考えさせて
ナキに面と向かって言われてしまった以上、聡美おばさんもそれ以上はおいでと言えなくなった。
そう。辛くなったら、何時でもうちにおいでね
聡美おばさんは多少の心配を持ちながらも、警官と共にナキの前から去って行った。
皆が去った後、ナキは自室へと戻り、机の引き出しを探った。
その中から一つのカッターを見つけ出すと、今度は浴室へと移動する。浴槽に湯水を入れる最中、ナキは白い左手首へとカッターを深く刻み付けた。
激しい痛み。だが、その直後に安堵する。
これで、二人の下へ行けるのだ。
カッターが浴室に落ちる音は激しく流れる湯水の音でかき消され、ナキはゆっくりと眠りについた――。
――続