周囲のウルサイ声に目覚めると、直ぐに後頭部の痛みを感じた。

…まさか、殴打されたのか!?

そんな身体の異変に気付いてから、自分が椅子に縛り付けられている事に気付いた。

だから!花沢さん!その薬を試す的な実験発想はよくない!

でもね。ミナミちゃん。私達の存在が公になるのもダメでしょ!

だからって、実験はダメっしょ

ならばいっそ、ひと思いに!

さっきの女が突然、こちらを振り返り目が合う。

わぁぁぁ!!

あぁぁぁぁ!!!

起きてたんですか、それなら、一言声はかけてくださいよ

いや、そんな冷静にはなれないですって…

…このまま眠ってくれていれば簡単に済んだものを

えっ?えっ?

あーーーっとっと、まぁまぁ、落ち着いて

いや、落ち着くってか、とりあえず、コレ解いてもらえないですか?

ダメよ。貴方は秘密を知ってしまったの

…そっちが、勝手に喋っただけでしょ。そうですよね!

…えっと

……うぅ

まぁ…な

それでも知った事には変わらないわ

まるで吐き捨てる様に言葉を発すると、女は手にした注射器を俺に向けてきた。

なに!?えっ!?注射器!!!嘘でしょ!?

大丈夫。ちょっと、この薬で記憶を消去するだけだから。針のチクっとした痛みだけよ

あぁ。それ。そーゆー薬なんだ

そうよ

てっきり、殺っちゃうヤツかと思ってた

さすがに正義の味方が殺人はあり得ないわ

いや、一般人を縛ってるのも『あり得ない』んですけど

ははは。言えてる~

あのねぇ!!私は本気よ!

ってかさぁ。花沢さんが機械系に天才的なのは解ってんだけど、薬でしょ?それって、本当にこの記憶だけ都合よく消せんの?

それは…試してみて…

だったらダメだって!

そうだ!そうだ!このマッドサイエンティスト花沢め!

こっちも、エースを失って大変なの!もうこれ以上の問題はゴメンよ!!

…え?…あの…エースを失ったって…まさか…戦死…とかですか?

あー…夜逃げだよ

え?

突然、来なくなっちゃってさ。まぁウチは給料安いですからね~。それとも、花沢さんのキャラにストレス感じたかな~

それなりの対価は払っているはずよ

まぁまぁ。アッチにもコッチにも様々な事情があるって事で

突然、室内に音が鳴り響いた。
このサイレンは…なんだ?…警報か…!?

ま、まさか!

おいおい。こんなタイミングで襲撃かよ

総員配置について

了解

はい!

…ちっ

敵の数はーーーおそらく2体です!

でも、エースは不在だよ。どうすんの?

あいつら、まさか状況知ってて攻めてきたんじゃねーだろうな

いや、それは………

こっち見んなよ!疑うなよ!

やはり、直ぐに判断しておくべきだったわね

そっちが勝手に間違えて連れてきた事実はお忘れなくっ!

みなさん!!!集中して!!まもなく射程圏内に入ります!

くっ!!………カンバヤシっ!やれるか!?

エース不在じゃ、やっぱ俺かよ!くそったれ!心の準備はできてたよ!

敵は2体だ!落ち着けよ!

わかったよ!やってやんよ!

3……2……1!来ます!!

目の前の巨大モニターに、とある映像が表示された。



…画面全体は薄暗く…所々に光が見えるところから察するに、『宇宙空間』なのだろうか。
画面の上部には、白色の物体が2体…その物体は右に左にゆっくりと移動をしている。

画面の下部には、『凸』の様なものが1つ、そして白色の物体との間に、緑色の四角いものが4つ横並びに配置されている。

えっ?、、、あの、、、

アイツら、本当に2体だけだ、舐めやがって!

あの~

シールドは4枚展開してます!カンバヤシさん落ち着いてください

ミナミ!言われるまでもねぇぜ!

あのぉ、、、これって

アンタ!さっきから五月蝿い!このスパイ野郎!

いや……だから

くそっ!アイツら上手く避けやがる

落ち着いて!!

白色の物体は、定期的にビームの様なモノを画面下部に向かって吐き出していた。

これって、昔のゲームの…『スペースインベーダー』っすよね?

なっ!何故、アンタがその名前を知ってるの!?やはりスパイだったか!

突然、襟首を掴まれ、乱暴に身体を揺さぶられる。

あわっ!!っとっと、待って待って!みんな知ってるでしょーよ!

えぇぇい!何をわけのわからぬ事をっ!

うるせぇぇ!!集中できねーだろうが!

お前!たった2体にてこずってんじゃねーよ!良く見ろよ!

しっ…シールド1枚が完全に破壊されました!!

はぁぁぁ?さっさと撃てっての!

うるせー!!……こんにゃろう…狙い撃つぜっ!!!

1機撃破!!

見やがれ!一撃だ!バカヤロー!

いや、基本一撃で壊れるんだよ。ばかやろう…

もう一機も…これでっ!!

敵影ゼロです。防衛成功!カンバヤシさん!やりましたね!

うぉぉぉぉぉぉ!!!

超巨大なモニターで『スペースインベーダー』を、椅子に縛り付けられた状態で見るという、普通じゃ考えられないほど、意味不明な状況、これは一体、何なのだろうか…。

僕はただ、喜ぶ彼らを見つめるしかなかった。

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