私が20の時のお話です。



当時お付き合いしていた数個上の彼と
その日は、遠方へ出掛ける予定でした。

彼が私の家へ、車で迎えに来ている間
私と彼は通話をしながら

ねえ、まだ着かないの?

そんなに急かないの、まだかかるよ

なんて会話をしていたのですが
急に彼の声が途切れてしまったのです。


不思議に思い、耳に当てていたスマートフォンを離し
画面を見てみると
" 接続状況が不安定です " との文字が。


私の家に来るまでに
トンネルが2つ程ありますので
今丁度その辺を通っているのだろうと考え
それほど気にはしませんでした。


一度通話が切れ
その後直ぐに着信があったので、電話をとると

トンネルだったから電波悪くてさー。

とのこと。

やっぱり、と言葉を発そうとした時
電話口の彼が「 着いたよ 」 と言うのです。

随分早いなとは思ったのですが
あまり気にはせず
部屋を後にしようと鍵を手にしたのですが

ねえ、窓開けて

と外から彼の声が聴こえるのです。

スマートフォンに耳を当て
「 なんで窓を? 」と聞いてみても返答はなく
ただ、ひたすら外から
窓を開けてくれ と言うのです。

私はアパートの二階に住んでいましたので
仕方なく窓を開ける為、カーテンをあけた瞬間

血塗れの顔を窓に張り付かせ
コチラを見る知らない男が
目に飛び込んで来ました。

私は驚き、恐怖で後ろに倒れ
目を背けようとしたのですが
何故か窓から目が離せないのです。

アレ? モウ、スコシダッタ、ノニ?

そう言葉を残して、その男の姿はスッと消えました。

いつの間にか彼との通話も切れていたようで
放心状態の私の元に、また彼からの着信が。

電波悪いのか知らないけど、全然繋がらなかったんだ


彼は、一度通話が切れてから
私に電話を掛けても繋がらず
苛立っていたようでした。



あの時、彼の声で私に電話を掛けていたのは
あの時、窓に張り付いていた男は誰だったのか

未だに私は分かりません。



読者の皆さんも、友人や家族
私と同じで恋人から電話が掛かってくる事が
しばしばあるかと思います。




さてそれは
本当に「自分が知っている相手」なのでしょうか?

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