藤代

葛西先輩、あたしに話ってなんですか?

葛西

えっと、実は藤代に訊きたい事があって

藤代

何でしょう?

葛西

藤代は、大学を卒業した後も、小説を書き続けるかい?

藤代

小説ですか?なんでまた

葛西

演劇は高校で満足してたみたいだから、もしかしたら小説も大学でやってるだけで満足しちゃうのかなって思って、それで

藤代

……実は、今まで話した事は無いんですけど、あたしが演劇からちょっと離れた理由って言うのが満足したって言うの以外にあるんです

葛西

え?そうなのかい?

藤代

はい

葛西

その情報は私のセキュリティクリアランスにも開示されているかな?

藤代

開示請求があるならば開示します

葛西

それなら、聞かせて欲しいな

藤代

実は、高校の時演劇部で、少し居づらい思いをしてたんです

葛西

え?そうなの?
少なくとも友部とそのお友達とは仲が良いように見えるけど

藤代

はい。先輩と、あと後輩達とは上手くやれてたんです

葛西

と、なると。同学年の子に何かされたのかな?

藤代

直接なにかされたわけでは無い……いや、直接もあったのかな?
なんか、同学年の子には煙たがられてるような感じがしてて、それで

葛西

なるほど。もしかして、同学年の子は女子かい?

藤代

はい、そうです

葛西

それだと、友部達と仲良くしてるのが気に入らなかったとか、そう言う感じなのかな

藤代

直接そう言われたわけじゃ無いんですけど、ただ後輩が、あんまりバレンタインとかに友チョコを配って誤解を招くような事はしない方が良いって言ったのは、それに気づいてたからかも知れないんです

葛西

なるほど

藤代

そう言う事があって、演劇サークルとかに入るのがちょっとこわくなっちゃって。小説を書きたかったって言うのは勿論あるんですけど、演劇サークルは避けたかったんです

葛西

そうか。もしかして、そう言う事が無かったら、演劇は続けてた?

藤代

そうですね。仕事にする気は無いですけど、サークルには入ったかも知れません。
でも、たらればの話はしても無駄ですし、現に今は演劇に携わる事はしたくないんです

葛西

……そっか

藤代

あ、葛西先輩は演劇好きなんですよね?なんか、こんなこと言っちゃってすいません

葛西

いや、実は私も、もう演劇には携わりたくないんだ。
役者で無ければ。って言う気はするけど、でも、また演劇に携わって、理想を押しつけられたくない。
もう偶像にはなりたくないんだ

藤代

……なるほど。
そう言えば、先輩が小説を書きたいと思ったきっかけって、何なんですか?

葛西

藤代は、私が高校の時に台本を書いてみたいって言ったの、覚えてる?

藤代

はい。確かその時、書けば良いんじゃないですか?みたいなこと言った気がします

葛西

そうだよ。それで、台本を書くのに、漫研の人達の力を借りたんだよ

藤代

漫研ですか?
あ、ストーリーの組み方とか、そう言う?

葛西

うん。組み方を教わって、それで台本も書いてみて。
結局完成はしなかったんだけど、それが縁で知り合った漫研の子が、自分の進路を先生達に伝える手伝いもしてくれたんだ

藤代

え?先生達は先輩をどんな学校に進める気だったんですか?

葛西

演劇科のある学校だよ。でも、私は心理学がやりたくて

藤代

なるほど

葛西

それで、その時手伝ってくれた子が小説を書いてたんだ。
とても綺麗な話を書く子でね、私はその子と同じ世界を見たかったんだ

藤代

それで、小説を書き始めたんですね

葛西

そうなんだ。
藤代は台本を書いてたって聞いたけど、小説を書こうと思った理由ってある?

藤代

あたしですか?小説は昔から好きだったんですけど、やっぱりあたしもきっかけは漫研ですね

葛西

そうなのかい?

藤代

うちの高校の漫研は、漫画だけじゃ無くてイラストや小説、それに小論文や書も載せてて、こんなに自由に本にして良いんだって思ったんです。
その時、漫研の部長に、あたしの書いた物も載せてみたいかって訊かれて

葛西

それで、載せてもらったの?

藤代

いえ、演劇部は掛け持ち禁止だったんで載せては貰わなかったんですけど、でも、それでいつか小説を書いて本にしたいって思ったんです

葛西

そっか。
ねぇ、自分で自分の本を作ってみて、どうだった?

藤代

なんか、自分の好きな物を自分だけで形に出来て、すごく嬉しかったです。
先輩はどうでした?

葛西

私も、自分の作った箱庭が形になって嬉しかったな。
それに、それを手に取ってくれる人が居るなんて、それ以上の事は無いよ

藤代

大学を卒業しても、小説を書きたいですか?

葛西

うん。書けるうちは書き続けたいな。
あの子と同じ世界が見えてるかはわからないけど。
藤代はどう?

藤代

あたしも、続けたいです。
もしかしたら演劇部の時みたいに煙たがられたりする事もあるかもしれませんけど、小説なら、そう言う人を気にしなくても良いですから

葛西

私ね、ずっと一緒で無くても、同じ事を頑張って続ける人が、近くに欲しかったんだ。
だからお願い。まだ暫く、私と一緒に小説を続けておくれ

藤代

はい。同人誌即売会に出るにも、まだ1人じゃ心許ないですし

葛西

お互い、独り立ちできるときまでよろしくね

藤代

こちらこそ、よろしくお願いします

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