彼、もとい、彼女だろうか。
私の救世主は、
どこか寂しそうに微笑んでそう言った。
大丈夫よ、
いつか分かる日が来るわ。
彼、もとい、彼女だろうか。
私の救世主は、
どこか寂しそうに微笑んでそう言った。
背伸びなんかしないで。
アンタはもっと、ゆっくり大人になればいいんだから。
ほっそりとした見た目よりもずっと大きく、少しひんやりした広い手が髪を梳くように頭を撫ぜる。
涙が込み上げる。喉を焼くような熱い気持ちを飲み込んで、俯いていた。
絶対に泣くもんか。
そう思って。
・・・男を好きになんて、絶対ならないよ。
7年前のことだった。
今でも、悪夢を見るたびに当時のことを思い出す。
醜いピンクの色をした、腫れて膿切ったミミズの化け物が、ウジャウジャと私に向かって、大量に押し寄せて、体内に入り込もうとする。
その悪夢はいつも、
あの細身の背中に守られて消え去るのだ。
アキラ。
多分、私は。
ーーかれこれ10年前に近所に引っ越してきた、元・ドラァグクイーン。現・スナックのママ。
そんな人を。
ーー本名は知らない。彼(彼女)は、自分のことを「セレナーデ」と呼ばせる。
ずーっと年齢不詳で、細身で、やたら薄いドレスを女性よりもセクシーに着こなして。
いつもアヤシイ匂いのオリエンタルなお香の煙を身にまとっているような、でもとっても安心する気持ち良い香りのあの人が。
おそらく、私は。
そんな人に「恋」をし続けている。