ー子供の頃ー
ー子供の頃ー
まーくん!!こっちだよー!!
みーちゃんは木の上から僕に手招きをしてくる。
待ってっ!!みーちゃん危ないよ。
僕は急いで木を上ろうとした時…
あっ…!
みーちゃんの声がしたので、僕は木の上にいるみーちゃんを見た。
ー…っ!?
みーちゃん何して…!
みーちゃんは今にも木の上から落ちそうになっていた。
…落ちちゃったの…。
僕の頬にみーちゃんの涙が落ちてきた。
…どうやら、泣いているようだ。
…まーくんからもらった指輪が。
木の下には小さな小川が流れている。
美姫が落としたと言っていた指輪が、時間差で木の上から落ちてきて、その小川に入った音がした。
…待ってろ!必ず僕が見つけてくるから!!
え!?
美姫に言葉を投げかけながら上着とズボンを脱いだ僕は、勢いよく小川へと入っていった。
小川といってもやはり子供の僕にとって川というのは娯楽であり同時に脅威そのものだ。
それこそ少し力を抜けば体をもっていかれそうになるほど。
指輪…どこにいったんだ?
水面は濁っておりとてもではないが綺麗とは言い難い。
見えない…もう流された?
まーくん!私も探すよ!
斜め上…位の位置だろうか?彼女の声が聞こえてくる。
あ!まって!あぶな
注意喚起の声に反応する様子もなく美姫は降りるために枝の上を動く。
大丈夫だよ~!これぐらい怖くないもん!
違う、そんなことじゃない!
美姫が動くことによって枝が大きくしなる。
美姫!!!
美姫の姿が目の前に一瞬だけ映り、大きな水しぶきが上がった。
おい!!美姫!!
水の中から呼吸を乱した美姫が体を出し、両手を後ろについてその場に座り込んだ。
う…はあ…はあ…
どうやら運が良い事に、美姫が落ちた所は少し水位が深かったらしい。
お前…
打ち所が悪かったらどうするんだ!!!もう危ないことはするなよ!!!
うん…ごめん…ゴホッゴホッ
…でも、もし溺れていたらまーくんに人工呼吸してもらえたのかな?
雅臣はそれを妄想しそうだったが、美姫の為を思いしっかり叱ることにした。
お前…こんな目にあってよくそんな事が…あ…
そう言いかけた時、美姫の左腕の近くにキラキラと光る物を見つけた。
それを拾い、見てみると…
落とした指輪だった。
美姫っ!あったよ!
俺は美姫に指輪を見せた。
美姫はそれを見ると、嬉しそうな顔をし…そして泣き始めた。
俺は焦った。
…な、なんで、泣くんだよ。
…だって、見つかったから…嬉しくて…っ!
そう言って、美姫は指輪を抱き締めた。
俺は駆け足で自宅に戻ると、ベランダに干してあったバスタオルを1枚、強引に洗濯ハンガーから取り去り、再び美姫のいる土手へと急いだ。
…みーちゃん!!ハァ、ハァ…寒く…ない!?
小学生の俺でも、さすがの全力疾走で自宅と土手を行き来するのはきつかった。
俺は、肩で息をしながら美姫に尋ねる。
…まーくん!私は大丈夫だよ!!
そ…そうか…なら、よかったよ…
自宅から持ってきたバスタオルを美姫の肩に掛けた俺は、美姫の横へ座ると大の字になって天を仰いだ。
まーくん!凄い汗だよ…私なんかのために…
美姫のために持ってきたバスタオルで、俺の額に浮かぶ汗が拭かれていく。
まーくん、指輪見つけてくれて、ありがとう。私、この指輪、死んでも失くさないから!
みーちゃん、そんな、大袈裟な…
大袈裟なんかじゃないもん!だって、私はまーくんのお嫁さんになるって、決めてるんだから!!
あっ!…言っちゃった…
…
みーちゃん。俺も、みーちゃんのことを幸せにできる大人になってみせるよ!そして、それが果たせた時に、必ずみーちゃんを迎えに行く
ほんと!?
ああ、約束だ!
俺と美姫はこの時、指切りをして結婚の約束をしたのだった。
※過去から現代へ
子供のころの約束、その続編と行こうじゃないか!!
俺は、笑ってあの日の約束の再開を宣言した。
えっ、それって…本当に!?
まぁ…そうだな、子供の頃が第一章なら今までが第二章ここから先が第三章だ。
たいていの物語やゲームである程度決まっていることがある。
どういうこと?
なんていえば良いのかな…一章は傑作、二章は駄作、三章は集大成ってなるのが小説とかでも多いいんだよ
つまり?
一章で俺は君の夫になる宣言をした、みーちゃんは俺の嫁さんになってくれるって言ってくれた。
そこまでいうと美姫は顔を赤くする。
だけど二章で俺は堕落してみーちゃんは婚約者…望んでいないけど出来てしまった。お互いにとっての駄作だ。
う…うん
なら、ここから先は集大成、HAPPY ENDしか認めない、あいつにみーちゃんをあきらめても らって結ばれちまおう、少なくとも俺はそうしたい。
そして美姫は…
…なんだかまーくん…昔と変わんないね。
だろ?成長したのは体だけだと思ってる。
美姫は首を振って
ううん…昔みたいに頼れ…
そこで美姫はふらつき、その場に倒れ込んだ。