山本隆

んん~

山本隆

んん?

俺は、傍にあったスマホを取る。画面には、山本充と出ている。ま、まさか?

そう思って、枕元の目覚まし時計を見る。

山本隆

や、ヤバい!

慌てて通話ボタンをタップする。

山本隆

もしもし?

桑原充

寝ていると思って、掛けてみたけど、ビンゴだった?

山本隆

お、おう。ビンゴだった。ご、ゴメン!

桑原充

だよね。約束の時間、11時30分だけど、12時まで待つよ。

山本隆

ええっ!でも、俺が悪いんだよな。今すぐ行く!

桑原充

肇は、既にいるから、早くした方がいいよ。

俺は、通話を終了させると、タンスを開けて、服を出す。

山本隆

まずい!肇が相当怒っている!

着替えが終わると、机の上に置いてあったスマホと財布をズボンのポケットに入れて部屋を出た。

俺は、リビングの扉を開けた。

山本隆

母さん、なんで起こしてくれなかったんだよ!あ、いきなりで悪いけど、車出して!

返事はない。

山本隆

あれ?

俺は、辺りを見回した。テーブルの上に置いてあるメモに気づき、読んでみる。

友達と出かけてくるね!

山本隆

なんてこった!もう全力疾走しかないな。

俺は、リビングを飛び出した。

俺の家は、高台の上にある。待ち合わせ場所の駅の改札まで、普通なら1時間30分はかかる。急がないと。

傾斜を下って行くと、視界の端に、大きな荷物を背負ったおばあさんが入った。俺は、一度通り過ぎたが、おばあさんの下に戻る。

山本隆

おばあさん、荷物運ぶの手伝うよ!

おやおや、有難うね。

完全に遅刻だな。だが、あいつらは、許してくれるだろう。

俺は、荷物を運び終えると再び走り出した。暫く走ると、工事中の看板が現れた。

山本隆

げっ、工事中?

隣には、通行止めの看板もある。

山本隆

こっちが近道なのに……いいや、行くしかない!

俺は、そのまま進む。腕時計を見ると、針は、11時47分を指している。

山本隆

急げ、急げ!

俺は、走りだす。

待ち合わせ場所が見えてきた。が、躓いて転んでしまう。

山本隆

痛たた……でも、後少しだ。

起き上がって走ると、待ち合わせ場所に着く。そこには、友人の橘肇と桑原充がいた。

山本隆

お、遅くなってゴメン!

俺は、息を切らしている。腕時計を見ると、針は12時を指している。

橘肇

ピッタリだな。だが、始めの約束の時間
には間に合わなかったな。この馬鹿!

山本隆

本当にゴメン!

桑原充

そう言っておいて、隆と付き合うん
でしょう?

橘肇

勝手に思っていろ!

山本隆

フォロー有難う、充。でも、この時間設定は流石に無茶だと思った。

桑原充

隆なら出来ると思ったからだよ。

充は、手をひらひらさせる。

山本隆

今日のお昼ご飯、奢るよ!

橘肇

ほう。なら、サーロインステーキでも、ご馳走になるとしよう

桑原充

僕も!400グラム!

橘肇

それはいいな。

山本隆

じょ、常識の範囲でお願いします。俺、破産しちゃうから!

桑原充

奢るって言ったのは、隆だよ。

橘肇

遅刻魔のお前と付き合っているんだ。これ位は、当然だ

桑原充

肇、顔が何でもいいって言ってる。

橘肇

な、何を言う!

桑原充

本当は、僕も何でもいいんだけどね

山本隆

肇、充、本当に有難う!

橘肇

まずは、目的地へ行くべきだと思
うが?

桑原充

その方がいいね。

山本隆

俺、1番!

俺は、定期を取り出して、改札を潜った。

やってしまった

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