なぜ。恋が、国を滅ぼせるのだろうか。
先生の低い声。眠る生徒と午後の校舎に漂うあたたかい風。
楊貴妃とクレオパトラ。
今日のテーマは傾国の美女。
中学生のとき、どうしても納得がいかなくて、社会の先生に詰め寄ったことを、時折思い出す。
なぜ。恋が、国を滅ぼせるのだろうか。
先生の低い声。眠る生徒と午後の校舎に漂うあたたかい風。
楊貴妃とクレオパトラ。
今日のテーマは傾国の美女。
中学生のとき、どうしても納得がいかなくて、社会の先生に詰め寄ったことを、時折思い出す。
先生、国を守ることよりも「愛」というものに溺れる人の気持ちがわからない。
なぜそんな無能な人が将軍や王様になれるんですか。
授業終わり。ざわめく教室。
先生が質問に戸惑ったように笑う。
彼らは非常に有能だったから将軍になったんだよ。でも、男は基本的にどうしようもないところがあるからねえ・・・
そんな・・・たくさんの人の運命を背負ってるのに。あまりにも無責任だ。
彼らも一人の男性だったんだよ。
どこまでいっても、何度考えても、釈然としなかった。映画を見たり、本を読んだり。
恋愛というものに不可解さを覚えたのは、確かそれがキッカケだった。
大丈夫よ。いつかあなたにもわかるときが来るわ。
母に聞いて、返って来た答え。
それはありとあらゆる色んな人から、ことあるごとに聞かされる言葉となった。
いつかわかる。
いつか恋をする。
漠然とした不安と罪悪感と、
社会における女性の評価に小さく憤りながら。
あれから10年。私は社会人になった。
いまだに「恋」は、謎のまま。