前略、じーちゃん 
 元気なのだ?正式な魔王になってから
毎日慣れない仕事に追われロウドウに
超怒られたり、怒られたり、怒られたり
大変だけど前に比べて有意義な
時間をおくってるのだ。






そういえばじーちゃんと
ヤキュウやったの覚えてるか?

その時に出会った女の子と
今でもちょいちょい会ってるんだけど
最近、その子と会う度に
凄く苦しいのだ。


.....なんでなのだ??

ガサガサ

魔王リュド

おっかしいのだー....
じーちゃんのボールここらへんの
筈なのに.......

魔王リュド

何が「あれは昔有名な選手に
貰った物だから...」なのだ!!!
じゃあそんな大事なボールを
俺と使うなっつーのだ!!

俺は草むらをかき分けてかき分けて
探し続けた。進むにつれて
屋敷から離れた見慣れない森にまで
いつの間にか来ていた。

魔王リュド

おっ、合ったのだ!じーちゃんのボール

丁度木々のど真ん中に落ちていた
小汚いじーちゃんのボール。




それを拾い上げようとすると
そのすぐ横で何かが
倒れているのに気づいた

魔王リュド

...な、なんなのだ...?これ。
真っ白でもふもふっとしてて....
人間、じゃないよなこんな所に
魔人でもこんなに小さくないし....

ぷにぷに.....あ、柔らかい.....。

もふもふした女の子

.........いたい.......

魔王リュド

わっっ
喋ったのだ!!!!

もふもふした女の子

..............。

魔王リュド

..............。

痛そうに頭をさすりながら起き上った
もふもふはなんと女の子で




ここら辺では見かけない
綺麗な髪の女の子だった。
その子はぱちぱち数回瞬きすると
俺の持っているボールに
視線を移した。

もふもふした女の子

.......それ.....

魔王リュド

こ、これか?さっき俺が打った
ボールなのだ。結構飛んじゃって
探して.......

もふもふした女の子

キッ!!!

魔王リュド

....へっ?

ぶわぁぁちーーーーーーーん

ぶわぁぁちーーーーーーーん

ぶわぁちーーーーーーん....

これがクロから貰った初のビンタである

魔王リュド

クーーーロちゃんっ!
何隠れてるのだー??

クロ

びくぅぅっっっ!!!

それから俺は数日間
時間を見つけてはその子に会いに行った
会いに行く度「うわ.....今日もいる...」
みたいな嫌な顔をされたけど気にしない!!!



他の奴らに聞いて分かったのが
名前がクロちゃんっていう事

戦争が終わってしばらくしてから
雪原に住む魔女・魔法使いが
散り散りになりクロちゃんと
その家族がこの森に来た事


元は人間なので
一部の魔人に差別を受けて
いじめられていた事だった




それで気になったというか.....
放っておけなかったというか....
歓迎は、されてないけど....。

クロ

.....またいじめに来たの.....?

魔王リュド

いじめに来た訳じゃないのだ!
俺はそんな事しないぞ??

クロ

.....こないだ私にボールぶつけた....

魔王リュド

あれは事故!!!別にクロちゃんを
狙った訳じゃないのだ!!

クロ

.....魔人、きらいっっ...
あっち行って!ここは
私の場所なの.....!

魔王リュド

だから俺は

クロ

..........................

うぅ....そっぽ向かれたのだ....


少しでも友達になれたらと思ったのに...
悪いのはほんの一部の魔人で
いい奴らもいっぱいいるって事を
知ってほしいのだー....

魔王リュド

ロウドウっなんか、こう......
女の子が喜びそうな物って
何かないか????

ロウドウ

はぁ??????????

魔王リュド

こう....距離をグッと縮めるような...
これがあれば警戒心も解ける!な....

ロウドウ

はーー......魔人の女性なら貴金属
あげとけば2~3回で懐きますよ

魔王リュド

誰がガッツリ肉食の同種の女の
話をしてるのだ。しかもそんな
リアルな話超嫌なのだ

魔王リュド

俺が言ってるのは、それより
ちっちゃくて雪原からきた色白の
女の子で........

ロウドウ

ああー....たまにお会いする
あの子ですか。
何度かお話した事がありますよ
物静かですが礼儀正しいお嬢さんで...

魔王リュド

...............え、は?
何度か.......?

ロウドウ

?ええ、買い物の帰りに
彼女が住んでる近くを通るので
たまに話してますよ。
お母様も彼女と一緒で色白で
おっとりとされた......

魔王リュド

えっ?待て待て待て、何なのだ
その家族ぐるみの近所のお付き合い...
えっ俺全然何も聞いてないのだ

ロウドウ

.........聞かれてませんから。

ズズーーーーーーーー。

何が、ズズーーーーーだ!!!
なんでお前の方が俺より
クロちゃんと話してるのだぁぁぁぁぁ!!!!?

見た目が素敵な紳士だからじゃないですか?
私も元は人間ですし。あなたより話し易かったんでしょう

ほう!れん!そう! 報連相は大事だろーー!!!!
言えよう!俺に言えよう!
俺達家族みたいなもんだろー!!

気持ちが悪いのでその家族って言うの
止めて貰えませんか.....???

クロ

..........。何してるの.....?

魔王リュド

待ってたのだ!クロちゃん!
今日はクロちゃんともっと仲良く
なる為にいい物を持ってきたのだ!

クロ

むぐぐぐぐぐ....ぎりぎりぎり......

わぁ、すごい警戒されてるのだ......
大丈夫大丈夫、めげないめげない...

魔王リュド

ほら、クロちゃん俺ん所の
執事と仲が良いだろ?そいつが
クロちゃんにって作ったのだ!

クロ

....ろうどうさん.....???

魔王リュド

そのロウドウの作ったクッキーなのだ!
滅多に作らないけど超美味しいのだ!

クロ

!!!!!!!!!

包みをクロちゃんの目の前で
広げると身を乗り出して
目を輝かせるクロちゃん



ロウドウがクロちゃんの
お母さんから入手した
「甘いものに目がない」が
見事に成功!



はじめは離れた場所にいた
クロちゃんも警戒しながら
徐々に徐々に近づき
にっこり笑う俺に何もないと
感じたのかちょこんと
横に座るとクッキーをかじり始めた

クロ

もっもっもっもっもっもっもっ

魔王リュド

やったのだ!クロちゃんが
警戒を解いて隣で食べてくれたのだ!
これで..........

......ん?




何かが引っ掛かった。


そうだ、最初は魔人の誤解を
解くためにクロちゃんと
友達になろうとして
こうして、並んで、一緒にいて
後は、それだけ。






何なのだ?この違和感、
「それだけ」?胸が突っかかる
言葉だ。


クロ

.....どうしたの....??

魔王リュド

....いやっクロちゃんに
喜んで貰えて良かったなって!
これで俺、クロちゃんと、トモダチに
なれたか??

クロ

ん.....!ともだち...認定.......!

ロウドウ

ちょっと!

ロウドウ

ちょっと魔王!
さっきからお食事ですよ!って
言ってるのに聞こえてないんですか!?
ボケたんですか!?

魔王リュド

俺いらなーいのだー.......
今食欲ねーのだ......

ロウドウ

あの!?魔王が....!?食欲が無い....!??
.........死亡フラグ........!!!?

魔王リュド

なんのフラグも立ってないのだ!!!

ロウドウ

はーあ.....じゃどうしたんですか?
珍しいじゃないですか?
食欲がないだなんて。
これから約束があるのでしょう?

魔王リュド

まぁな、クロちゃんが
今日は星が沢山降りてくる日だから
一緒に見ようって......



.....なんか、クロちゃんと
友達になれたのはいいのだ。
でもそっからモヤモヤって言うか
心臓がツンとするのだ

ロウドウ

ほう?

魔王リュド

上手く言えないけど....
これは俺が思っていた結果と
違っていたと言うか....

俺の横に、さっきまでここに
クロちゃんがいたのに明日に
ならないといない

その状態が苦しいのだ。
どんな擦り傷より、切り傷より
刺し傷より、内側から
削られて痛いのだ

ロウドウ

.........これはこれは、何とも
ご自分の気持ちには馬鹿みたいに
鈍感のようで。

魔王リュド

人が悩んでる時に馬鹿みたいは
なんなのだ!

ロウドウ

貴方、そもそも何故そんなに
悩んでるのです?

魔王リュド

だから、クロちゃんの事で......

ロウドウ

お馬鹿ですか!もうその方が
好きで好きで仕方ないからそうして
悩んでるんでしょう。恋をしてなければ
話をしてても胸が痛む訳がないでしょうが

魔王リュド

こ、恋って!!!?俺が?????
そ、そりゃクロちゃんといるとソ
ワソワしちゃうし

振り返った時の揺れた髪がキュンと
くるっていうか....手が俺より
小さいとことか可愛いしっ......
二人でいる時間が柔らかくて
温かくて...心地いいけどっ...

ロウドウ

バッチリフラグ
立ってるじゃない
ですか!!!!!!!!!

魔王リュド

どっどうしようなのだロウドウっ!!!
俺っクロちゃんが好きみたいなのだぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!

ロウドウ

分かってますよ!そんな事!!!
いいからさっさと行ってきなさい!!
このお馬鹿!!!!!!!

魔王リュド

うわぁぁぁぁあああああん!!!執事が辛辣なのだァァ~~~~!!!!!!

俺はロウドウの怒鳴り声で
背中を押された様に約束していた
場所へ走った







確かに今日は星が綺麗なのだ







自分でもおかしいのだ、
会ったばかりの女の子に
どうしてここまで







疑問ばかり頭に浮かぶのに
身体は真っ直ぐ
道を走ってる


ああ、もう少しで約束してた
場所なのだ.....
どうしよう、なんて言えばいい?
俺は彼女が嫌がってた魔人だ。





なんて...............

クロ

....やっと来た...!ちょうど今降ったとこ....ぴったり.....!

なんで、そんなタイミングで

魔王リュド

ぜー.....ぜー....ク、ロちゃん......
ごめっ........

           君は   

クロ

?...どうして謝るの.....?
遅れたの怒ってない.....

魔王リュド

.......クロちゃん
笑わないで欲しいのだ.....
俺な................

クロ

???

ネム

わぁ!すごいッス!ほんとに
星の欠片が落ちてるッス!

ロウドウ

一番輝きが綺麗なものを
拾うとといい事があるそうですよ

魔王リュド

ロウドウって、意外に乙女思考だよな。

ロウドウ

せめてロマンチストと言いなさい

ネム

あっっポー!!それ僕が見つけた
やつッスよ!!!返すッス!!!

ポー

ぴゃーぴゃっぴゃっ!お前のモノは
ポーのモノ!なのらー!

クロ

リュド....何笑ってるの......??

魔王リュド

でへへへへー思い出し照れしてるのだ

クロ

? ????

魔王リュド

あの時のクロちょーーーーー
可愛かったなーーって

クロ

!?

魔王リュド

笑ったクロも凄く可愛かったけど
あの後初めてキスした
時のクロの顔も....

クロ

っっっっっっっっ....!!!!!!!!

ドゴッ

ガスッッッッッ

なんでーーーーーーーーーーーーーーー?????!!

ロウドウ

......やれやれまったく。
懲りない人ですね。

ポー

ぷきゃっこれにリュドたんと
魔女が別れますよーにって
願ってやるのら......

ネム

僕、明日も頑張るッス....。

魔王リュド

うわぁぁぁぁぁぁん!!!もうっ
変な事言わないから許してくれなのだ
クロ~~~~~~!!!!

クロ

.....知らない。

前略、じーちゃん
今度長期の休みが取れたら
クロと一緒にじーちゃんの所へ
遊びに行くのだ



その時はまだ見習いだけど新しく入った
執事も連れて行くので
楽しみに待ってるといいのだ!






それまで元気にしててくれ

またな



                 リュド

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