手紙を書いた―――
憧れのあの人に
自分の気持ちを少しでも
知ってもらいたくて―――
便箋を買うのに一週間も悩んでしまった
それだけ、時間をかけたのに
結局、最後は色や柄の無い普通の便箋を選んだ
彼女の好みなんてわからなかった
話したこともなければ
まともに近づいたことすらなかったから
この便箋の白さは――
僕の空白なんだ
何も知らないから色をつけることができなかった
彼女との空白
それでも、その空白に想いを綴った
ただ、知って欲しかった
僕は彼女を好きになったことを
手紙を書いた―――
憧れのあの人に
自分の気持ちを少しでも
知ってもらいたくて―――
便箋を買うのに一週間も悩んでしまった
それだけ、時間をかけたのに
結局、最後は色や柄の無い普通の便箋を選んだ
彼女の好みなんてわからなかった
話したこともなければ
まともに近づいたことすらなかったから
この便箋の白さは――
僕の空白なんだ
何も知らないから色をつけることができなかった
彼女との空白
それでも、その空白に想いを綴った
ただ、知って欲しかった
僕は彼女を好きになったことを
モブキャラクターの憂鬱
その③
あいつら来ねえな……
捕まえたら2-C前で待ってるって
言ってたんだが
早くしねーと
昼休み終わっちまうぜ?
こりゃぁ、捕まえるのに手間取ってるな
連絡の取りようもねぇし
どうする?
まぁ、待つしかねぇだろ
はぁ
げっ
げって何よ……
ていうか、どこ行ってたの!?
一緒に
お昼食べるって言ってたでしょ?
お前ら……
いつのまに
春奈と仲良くなるために仕方なくよ!
変な誤解しないで!
その言い方じゃ
誤解されても仕方ないと
思うぜ?
黙れ!
へいへい
冗談だけどな
アンタらねぇ……
いい加減諦めろ!!!
登ったり降りたりで
疲れるからやめて!!
向こうもへばってきてるみたいだよ
ど、どいてくれぇ!!!!!
おい!アイツ!
えっ!?
一樹!!ソイツ止めてぇ!!
あぁ!くそ!待ち伏せかよ!!!
って!!あれは!!
な、なに!?
か、神崎さん
お前知り合いなのか?
だ、だれ?
っ……
くっ……
おい!捕まえろよ!
いや、アイツ
……泣いてたのか?
ほらほら!!君たちも走った走ったぁ!
お、おう
ちょ、ちょっと!
いっちゃった……
も、もう……
動けない……
さぁ!観念しやがれぇ!
石塚、アイツだけど
いや、知らねぇ
ちっ……
なんだよ!お前ら!!
どうして、僕についてくるんだよ!!
君、石塚に用があったんだろ?
別に……
俺には用があったように見えたけど
そう見えただけだろ!
俺は別に用事なんてなかったし!!
仮にあったとしても!
それが僕を追う理由になるのか?
まぁ、大した理由にはならねーな
だがよ
檜山が話しかけた時
なんで、逃げた?
それは……
逃げられたら気になっちゃうよね
……
はぁ……
神崎さんと一緒にいるのが
気に入らなかった
だから、忠告し行った……
それだけだよ……
そうか
くだらない、用事だな
現実世界の石塚の知り合いか、
召喚魔術と関わりのある人間かと
思ったが……
両方、ハズレだったようだな
なるほど、嫉妬って奴か
なに、笑ってんだよ!
笑ってねーよ
お前
なんだよ!
好きなのか?神崎のこと
……あぁ
ずっと……
好きだった……
そうか
わりぃ
俺、めちゃくちゃ邪魔だったか
そうだよ!!目障りだ!
あぁ、目障りなら
俺よりも藤宮の方が
……アイツは
僕の力じゃどうしようもできないから
……?
アイツに近づこうとしても
どういうわけか上手くいかないんだよ
毎回……
だから……
諦めた……
まぁ、主人公だしねぇ……
可哀想だけど
モブ君には敵わない相手だよ
そうか……
けど、安心しろ
俺は神崎のコト
狙ってるわけじゃねーし
アイツも俺のこと全然
興味ねーから
俺のことは気にしないで
がんばれよ
うんうん
がんばれ……
もう……がんばったよ
十分……
え?
だけど……ダメだった
フラれたんだよ
あっさり……
お前……もしかして
ラブレターの……
なんで……
お前が知ってるんだよ……
別にどうでもいいけどさ……
神崎さん……
僕のコト忘れてたし
……
あ!!そうか!この人!!
ラブレター渡して振られちゃう
モブキャラクターだったんだ!!
どうりで、思い出せないわけだ
あ?
いや、なんでもない
もう、諦めるのか?
答えられなかったんだよ……
どこが好きかって聞かれて
情けないな……
容姿以外でどこに惚れたのか聞かれてね……
何も言えなかったんだ……
きっと、悲しかったのは
フラれた僕じゃなくて神崎さんの方なんだと思う……
最悪だよ……本当に
……
まぁ、
普通はルックスから入るよなぁ
は?
うんうん!
やっぱり、可愛い子だと
凄く気になっちゃうよね!
なんて野郎だ……
きっかけなんて
大体そんなもんだろ
……
……
まぁ、アレかな
告白するの早すぎたんじゃない?
仕方ないだろ!!
向こうは学園で一番人気の人なんだぞ!
近づきたくても
近づけなかったんだよ!
確かに
取り巻きとか多いよなアイツ
手紙だって……
ちゃんと読んでもらえるか心配だったし……
手紙に書いた待ち合わせ場所に
彼女が来た時……
それだけで、奇跡だと思ったよ
……嬉しかったよ
こんな僕の手紙を読んで来てくれたんだから
単なる少年Aが
主要ヒロインと
仲良くなんかなれるはず
ないよな……
ラブレターを渡せたのも
奇跡なんかじゃない
神崎がモテるっていう設定を引き立てるために
用意された残酷なシナリオだったんだ
はぁ
石塚、悪かったね
え?
まだ、謝ってなかったからさ
君達の仲が良いっていうのは
僕の誤解だったんだね
いや、謝るつうか
お前は俺になにもしてないし
ううん、僕は君に嫉妬していた
羨ましかったんだよ
神崎さんと一緒にいるのが……
あの、藤宮を差し置いて
正直なところ……
邪魔だし消えてほしいくらいに思ってた
だから……
本当にすまない……
あぁもう!気にすんな!
俺らこそ追いかけ回して悪かったな
はぁ
なんか、すっきりしたよ
色々、溜まってたもの吐き出せてさ
それにさ……
ん?
いや、なんでもない
きっかけか
あの時から
ずっと考えてた
何を言えば正解だったのか
初めから正解なんて
なかったんだな
だって、僕は……
綺麗な神崎さんを見て
その時、恋をしたんだから
やべ、チャイムなっちまった
あ、そうだ
お前、名前教えてくれよ
え、僕の?
君以外に誰がいんのよ
早くしろよ
僕の名前は――
うらはし、まこと
お、そっか!
よろしくな!浦橋!
あぁ
んじゃ、まこっち!
早く教室もどろうぜぇ
ま、まこっち?
それ、僕のこと?
つづく