ある日の美術の授業終了後…
ある日の美術の授業終了後…
嶋尻さん!随分と仕上がってきたみたいね!!
それが、まだ納得できない部分が結構あって、困ってるんです…
藍堀先生と、それに…美琴さん!
郷中先生!こんにちは。
あら私ったら…もう部活の時間ですよね!
すぐに片付けます…
それは、美術の課題作品ね!
はいっ。でも、納得できない部分が多くて…
そうなんだ…
差し当たり、加工進捗度は70%といった所かしら?
加工進捗度…って、工業簿記の総合原価計算で出て来ますよね!
美琴さんは、戸山先生から工業簿記を教わっているんだったわね。
はい。
加工進捗度は、「仕上り程度」とも言われるもので、製造工程上の加工の進み具合のことを指します。
その通り!
藍堀先生。課題作品ができていないのは美琴さんだけですか?
いえ。作品の良し悪しはありますが、とりあえずは完成しているのは21名で、美琴さんを含めて9名の生徒は完成しておらず、進み具合も美琴さんと同じ位です。
それだと、工業簿記に置き換えやすいわね。
では仮に、月初から制作をスタートしたとして、今が月末だったとする。
キャンパスと絵具代で総額150,000円の材料費がかかり、30名の生徒が全員プロ画家で、給料として総額81,900円を支払ったとする。
費用はこれ以外にかかっていないと想定し、月末時点で製造途中の、9名分の作品の原価がいくらで、結果的に今月完成した21名分の作品の原価がいくらなのか?
これを算出するのが「総合原価計算」ね。
材料費と給料の合計が231,900円で、ここから月末に完成していない作品の原価、つまり「月末仕掛品原価」を差し引いて、今月の製品の製造原価を算出するということですね。
大まかに言えばそういうことね。
難しいのは、月末仕掛品原価を算出する際、「材料費」と「加工費」を別々に考えて計算しなければいけない、という点ね。
材料費は、今回の例で言うところの「キャンパス代」と「絵具代」ですよね。
で、「加工費」って何なんですか?
簡単に言えば「『材料費』以外の製造費用」のことね。
「材料費」以外は、すべて「加工費」になると考えていいんですね?
そういうことよ。
それでは、まず「材料費」の「月末仕掛品原価」を算出してみましょう。
今月かかった材料費は150,000円で、製品の製造に着手したのは30個(名分)よね。
1個当たり何円になるかしら?
150,000円を30で割ればいいんだから…
5,000円です!!
正解!
そして、月末に製造途中になっている個数が9個だから…
今度は5,000円に9をかければいいんだから…
45,000円です!!
そうね!
なので、150,000円から45,000円を差し引いて、今月の材料費の製造原価は…
105,000円になるわ!
次に「加工費」だけど、ここで最初に出てきた「加工進捗度(仕上り程度)」を使うの。
総合原価計算では、材料のほとんどを製造過程の始点(加工を始める時)で投入するわ。
今回の例だと、絵具は使った分だけ消費されるから総合原価計算のルールとは異なってしまうけど、仮に絵具は全て使い切ることを前提条件として話を進めるわ。
なので、材料は生産過程の始点ですべて投入されたことになるから、単純に投入した総数で割り、月末仕掛品の個数でかければよかったの。
ころが、加工費はというと、これは本来の絵具の使い方と同じで、使った分だけ消費されると考えるわ。
つまり…
加工進捗度の分だけ、月末仕掛品に加工費を使った
と考える訳。
加工進捗度が70%で、月末仕掛品として残っている制作途中の作品が9個ある、ということだから…
9個×70%=6.3個
加工費として月末仕掛品原価に算入するのは、6.3個分ということですね!
正解!!
その6.3個を「月末仕掛品換算量」と言うわ!
そして、加工費として計上するのは、今回30名に支払った給料81,900円だけ。
ということは、81,900を30で割って、6.3でかければ…
ストップストップ。それじゃダメなの。
加工費は、加工進捗度の分だけ使ったことになるんだから、30で割ってはダメなの。
だったら、どうやって算出するんですか?
完成品から逆算して考えていくわ。
普通は、始点で投入した30個をスタートにして、月末に製造途中となった9を引いて、21個完成したと考えますけど…
加工費のスタートは、完成品の21から
ということですね!
その通り!!
完成した製品の数は、材料費・加工費に関係なく変化しないでしょ?
だから、加工費の計算の際、製造個数は完成品から逆算して算出するのよ。
完成したのが21個で、月末仕掛品の換算量が6.3個。逆算をするということは、この2つを足せばいいんですね!
ということは、今月の製品製造量の換算量は…
21+6.3=27.3
27.3個 ということですね!
加工費が81,900円だから、これを27.3で割り、6.3でかければ加工費の月末仕掛品原価が出ますね!
81,900÷27.3×6.3=18,900
加工費の月末仕掛品原価は、18,900円です!
よくできました!
よって、81,900円から18,900円を差し引いて、今回の加工費の製造原価は…
63,000円になるわ!
材料費の製造原価が105,000円でしたから、63,000円と合わせて、今月の製品の製造原価は…
168,000円ですね!
正解!
1個当たりは…
168,000円÷21=8,000 で
8,000円ということね!
なるほど!!
何だか、自分の作品に納得しなかったおかげで、工業簿記のことが分かっちゃいました!!
それは良かったわ!
ちなみに、今回の例は月初めに前月から繰り越してきたものが無かった場合でしたけど、有った場合ってどういう風に…
さぁ!今日も元気に制作に専念しますか♪
俺、まだ半分も描いていないんだよなぁ…
美琴ちゃん、部活が始まっちゃうから、その話の続きは、部活後でいいかしら?
私も今日は部活の日だったんだ!
すいません。部活終わったら、また来ていいですか?
もちろんよ!待っているわ!!
ありがとうございます!
さぁみんな!準備を始めるわよ~
郷中先生、藍堀先生。失礼しました~
また後で来ま~す♪
chapter11 に続く