百合ヶ丘

演劇部の公演を観に行きたい

住吉

……百合ヶ丘先輩、先日あれだけ演劇部と揉めたのに観に行くつもりですか?

百合ヶ丘

本当に葛西先輩が今日の文化祭まで引退させて貰えてないのかどうか、確認した方が良いと思って

内原

うん、それは気になる。大丈夫かなぁ

住吉

行くのなら、先輩方だけだと争い事が起こりそうなので私も行きます

内原

うーん、市ヶ谷君、1時間くらいひとりでここ見てられる?

市ヶ谷

うん……それくらいなら大丈夫。
それよりも、気をつけて……

住吉

さすがにお客さんがたくさん入っていますね

内原

まぁ、なんだかんだでこの学校の演劇部はそこそこレベル高いからね

百合ヶ丘

演目はなんだろ。……『交換部品』?
どんな話なのか想像も付かない

内原

オリジナルの台本って訳じゃ無さそうだけど

住吉

取り敢えず、劇を観ている間は喧嘩腰で居るのはやめておきましょう

葛西

以上をもちまして、演劇部の公演を終了とさせて戴きます

百合ヶ丘

……結局、葛西先輩は引退させて貰えてなかった

内原

観られたのは嬉しいけど、理不尽さもある

住吉

取り敢えず、演劇部の人達に絡まれる前に引き上げましょう

内原

そうだね。葛西先輩を巻き込みたくは無い

市ヶ谷

おかえり……どうだった?

百合ヶ丘

葛西先輩、やめさせて貰えてなかった

市ヶ谷

……そう

百合ヶ丘

確かに、私だってもっと葛西先輩が演じてるところ観たいけど、理不尽すぎる

内原

葛西先輩、結局顧問の先生に丸め込まれちゃったのかなぁ

市ヶ谷

……困ったね……でも、これは葛西先輩自身の問題だ……僕達が口を挟むにも限界がある

住吉

私が思うに、葛西先輩は丸め込まれたわけでは無いと思います

内原

え?なんで?

住吉

今回の演目、『交換部品』ですが、あの話は人間を洗脳してあたかも交換可能な部品にすることが出来るという皮肉が込められた作品です

百合ヶ丘

確かにそうだったけど、それが何か?

住吉

あの作品を選んだのは顧問とリーフレットに書いて有りました。
これは私の推測でしか有りませんが、葛西先輩は顧問と、演劇部に反発して、その当てつけとしてあの作品が選ばれたように感じます

内原

うーん、確かに。葛西先輩の役、あのブラック企業に洗脳されて手先になってるって感じのやつだったし

百合ヶ丘

なに?大人しく言う事聞いてろって言いたいのあいつらは

市ヶ谷

百合ヶ丘さん落ち着いて……これはあくまでも住吉さんの推測だから

住吉

はい。今までの演目がどういう物なのかがわからないので、単純にああいった傾向の劇をやる事が多いだけかも知れませんし

百合ヶ丘

まぁ、何にせよ演劇部は良い印象無いね。
葛西先輩をこの時期まで無理矢理引き留めてた事実には変わりが無いし

住吉

そうですね

内原

取り合えず、過ぎちゃった事はもうどうしようも無いから、今後は葛西先輩がちゃんと行きたい学校に受かるように応援しないとだね

葛西

やぁ、漫研のみんな。お邪魔するよ

百合ヶ丘

あっ、葛西先輩いらっしゃい!

内原

演劇部の方は大丈夫なんですか?

葛西

えっと、あの、今はちょっと演劇部と距離を置きたいんだ

市ヶ谷

……何かあったんですか……?

葛西

公演の後、顧問の先生と喧嘩しちゃって、それで

住吉

喧嘩ですか?

葛西

私は演劇の学校じゃ無くて、心理学をやれる学校に通うって言って、それで、もう演劇部には行かないって言ったら、その

市ヶ谷

なるほど……

住吉

頑張りましたね。お疲れ様です

葛西

……うん

内原

演劇部の人に会いたくないなら、暫くここに居ても大丈夫ですよ

百合ヶ丘

そうですよ。もしなんか言いに来たら追い返してやります

葛西

……うん。ありがとう

市ヶ谷

今まで耐えることも多かったでしょう……でも、葛西先輩は休んでいる余裕は有りません……今から、追い上げないと

葛西

……うん。頑張るよ。
でも

内原

でも、なんですか?

葛西

少しだけ、ここで泣いて良いかな?

内原

はい。安心してください、誰にも言いませんから

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