浦島太郎

桃太郎!!?

桃太郎

確かに俺は桃太郎だけど、そんなに驚くか普通?

浦島太郎

いやだって僕、あなたに殺されてますし

桃太郎

お前、名前なんて言うの?

浦島太郎

へっ?………あ、浦島太郎です。

桃太郎

浦島太郎ね………今日はここに泊まっていきなよ

浦島太郎

あ、ありがとうございます

桃太郎の気遣いに僕は少し拍子抜けする

桃太郎

ところで何でそんなに驚いたの?

浦島太郎

あぁ、それは……

浦島太郎

何て言おう「あなたに殺されたからです」とかは無理だし、

浦島太郎

………桃太郎さんが鬼を倒したと聞いて

結局、これが無難だった

桃太郎

あぁ、その話な。

浦島太郎

凄いですよね、あの強い鬼を倒すなんて!

桃太郎

そうか!実際は一人じゃなかったんだが褒められると嬉しいな

浦島太郎

そうですよ!

浦島太郎

………でもどうして鬼退治なんて?

桃太郎

えっ?

浦島太郎

いや、鬼と戦うなんて凄く勇気のいる事じゃないですか、一人でやることじゃないなと思って

桃太郎

……………

浦島太郎

えっ?どうしました?

僕を見つめたまま、何も言わない桃太郎さん

浦島太郎

もしかして、不思議に思われた?

そんな桃太郎さんに鬼と感づかれたかと思って、僕は少し身構える

桃太郎

お前、変わってんな

浦島太郎

へっ?

桃太郎

いや、俺に会いに来るやつは普通、どうやって鬼を倒したか聞きにくるんだけど、浦島君ときたら、何で鬼を倒したかを聞くんだもん

浦島太郎

いや、気になったもんで

桃太郎

……………俺も、最初は鬼を退治するつもりなんて無かったよ

浦島太郎

そうなんですか?

桃太郎

あぁ、だけど、鬼が村を何度も襲うから交渉に向かったんだよ

浦島太郎

交渉に?

桃太郎

だって俺達と鬼って昔は共存してたんだろ?

浦島太郎

そうなんです!

桃太郎

うおっ!

浦島太郎

し、しまった………つい取り乱してしまった……

桃太郎

どうした?いきなり身を乗り出して?

浦島太郎

すいません。忘れてください

浦島太郎

本当、お願いします

桃太郎

分かったよ。えーっと、どこまで話してたっけ………そうそう!昔は鬼と共存してたって所だったな

桃太郎

だから交渉して平和に共存して暮らせる為に鬼ヶ島に向かったんだ。ところが、鬼達は話も聞かずに襲ってきてな。

桃太郎

鬼達よ!俺の名前は桃太郎!

誰だお前?人間が入ってくんじゃねえ!

桃太郎

俺は鬼と交渉をしに来た

交渉だぁ~、知るかそんなもん!折角、餌の方からやって来たんだ、美味しく頂いてやる

桃太郎

待て!争う気はない!

うるせぇ!

桃太郎

……………結局、こうなるのか…

桃太郎

それは、それは酷かった

元々、鬼を殺すために来たと思った桃太郎は実は交渉するために鬼ヶ島に来た。その事実は僕にとって衝撃的だった

浦島太郎

そうだったんだ……

桃太郎

というか俺、殺しは嫌いなんだよ

桃太郎

鬼ヶ島で最後に殺したレンって少年の鬼も

浦島太郎

っ!!

唐突に自分の名前が出てきて体が強張る

桃太郎

本当は殺すべきじゃ無かったって後悔してるんだ。

浦島太郎

僕も殺しは嫌いです。共存は僕の夢でしたし、

桃太郎

……………

桃太郎さんも本当は優しい人だったんだ、その事が分かり僕は胸が高鳴る
そしてもう1つ、僕は嬉しい事があった

浦島太郎

*僕を最後に殺した………つまりマナはまだ生きている!

それは何より嬉しかった

浦島太郎

あの、桃太郎さんは鬼を全員倒したんですか?

浦島太郎

遠回しに言ってみたけど、大丈夫かな?

桃太郎

いいや、宝物庫に隠れてた女の鬼を連れて帰った

浦島太郎

っ!!マナは何処にいるんですか!?

桃太郎

マナ?

浦島太郎

あっ、

浦島太郎

しまった、早まってマナと口走ってしまった

浦島太郎

いやぁ~、未だ見ぬ鬼は何処にいるんですか~って言ったんですよ

桃太郎

そう?

浦島太郎

そうです!

桃太郎

………まぁいいや、その鬼なら村から少し離れた小さな小屋に閉じ込めてるよ

浦島太郎

見に行っても?

桃太郎

無理だ

浦島太郎

ですよね

桃太郎

でも、浦島君は運が良い。実は明日、その鬼を生け贄にするんだよ

浦島太郎

………………………えっ?

浦島太郎

今なんて言った?マナを生け贄にする?

桃太郎

鬼は災いの源と言われてるからね。新月の明日、神に鬼の命を捧げるらしい

浦島太郎

そ、そんな……

浦島太郎

明日、マナが死ぬ……

桃太郎

俺も村長に抗議したんだが、村の皆に突っ張り返されて…

浦島太郎

桃太郎さん

桃太郎

ん?どうした?

浦島太郎

……もう…寝ませんか?

桃太郎

まだ早い気もするけど

浦島太郎

寝ましょう

桃太郎

…………分かった。それじゃお休み

桃太郎は素早く布団を用意して眠りにつく

浦島太郎

お休みなさい

浦島太郎

そろそろ桃太郎さんも寝たかな

起き上がり、周りを確認する

桃太郎

スーー、スーーー

浦島太郎

よし、よく眠ってる。

足音をたてないようにソッと家を出た

勿論、マナに会いに行くために!

桃太郎

………………

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