桃太郎の気遣いに僕は少し拍子抜けする
桃太郎!!?
確かに俺は桃太郎だけど、そんなに驚くか普通?
いやだって僕、あなたに殺されてますし
お前、名前なんて言うの?
へっ?………あ、浦島太郎です。
浦島太郎ね………今日はここに泊まっていきなよ
あ、ありがとうございます
桃太郎の気遣いに僕は少し拍子抜けする
ところで何でそんなに驚いたの?
あぁ、それは……
何て言おう「あなたに殺されたからです」とかは無理だし、
………桃太郎さんが鬼を倒したと聞いて
結局、これが無難だった
あぁ、その話な。
凄いですよね、あの強い鬼を倒すなんて!
そうか!実際は一人じゃなかったんだが褒められると嬉しいな
そうですよ!
………でもどうして鬼退治なんて?
えっ?
いや、鬼と戦うなんて凄く勇気のいる事じゃないですか、一人でやることじゃないなと思って
……………
えっ?どうしました?
僕を見つめたまま、何も言わない桃太郎さん
もしかして、不思議に思われた?
そんな桃太郎さんに鬼と感づかれたかと思って、僕は少し身構える
お前、変わってんな
へっ?
いや、俺に会いに来るやつは普通、どうやって鬼を倒したか聞きにくるんだけど、浦島君ときたら、何で鬼を倒したかを聞くんだもん
いや、気になったもんで
……………俺も、最初は鬼を退治するつもりなんて無かったよ
そうなんですか?
あぁ、だけど、鬼が村を何度も襲うから交渉に向かったんだよ
交渉に?
だって俺達と鬼って昔は共存してたんだろ?
そうなんです!
うおっ!
し、しまった………つい取り乱してしまった……
どうした?いきなり身を乗り出して?
すいません。忘れてください
本当、お願いします
分かったよ。えーっと、どこまで話してたっけ………そうそう!昔は鬼と共存してたって所だったな
だから交渉して平和に共存して暮らせる為に鬼ヶ島に向かったんだ。ところが、鬼達は話も聞かずに襲ってきてな。
鬼達よ!俺の名前は桃太郎!
誰だお前?人間が入ってくんじゃねえ!
俺は鬼と交渉をしに来た
交渉だぁ~、知るかそんなもん!折角、餌の方からやって来たんだ、美味しく頂いてやる
待て!争う気はない!
うるせぇ!
……………結局、こうなるのか…
それは、それは酷かった
元々、鬼を殺すために来たと思った桃太郎は実は交渉するために鬼ヶ島に来た。その事実は僕にとって衝撃的だった
そうだったんだ……
というか俺、殺しは嫌いなんだよ
鬼ヶ島で最後に殺したレンって少年の鬼も
っ!!
唐突に自分の名前が出てきて体が強張る
本当は殺すべきじゃ無かったって後悔してるんだ。
僕も殺しは嫌いです。共存は僕の夢でしたし、
……………
桃太郎さんも本当は優しい人だったんだ、その事が分かり僕は胸が高鳴る
そしてもう1つ、僕は嬉しい事があった
*僕を最後に殺した………つまりマナはまだ生きている!
それは何より嬉しかった
あの、桃太郎さんは鬼を全員倒したんですか?
遠回しに言ってみたけど、大丈夫かな?
いいや、宝物庫に隠れてた女の鬼を連れて帰った
っ!!マナは何処にいるんですか!?
マナ?
あっ、
しまった、早まってマナと口走ってしまった
いやぁ~、未だ見ぬ鬼は何処にいるんですか~って言ったんですよ
そう?
そうです!
………まぁいいや、その鬼なら村から少し離れた小さな小屋に閉じ込めてるよ
見に行っても?
無理だ
ですよね
でも、浦島君は運が良い。実は明日、その鬼を生け贄にするんだよ
………………………えっ?
今なんて言った?マナを生け贄にする?
鬼は災いの源と言われてるからね。新月の明日、神に鬼の命を捧げるらしい
そ、そんな……
明日、マナが死ぬ……
俺も村長に抗議したんだが、村の皆に突っ張り返されて…
桃太郎さん
ん?どうした?
……もう…寝ませんか?
まだ早い気もするけど
寝ましょう
…………分かった。それじゃお休み
桃太郎は素早く布団を用意して眠りにつく
お休みなさい
そろそろ桃太郎さんも寝たかな
起き上がり、周りを確認する
スーー、スーーー
よし、よく眠ってる。
足音をたてないようにソッと家を出た
勿論、マナに会いに行くために!
………………