もう残された時間も少ないのだろう。
不思議と怖いとは思わない。
もう光を捉えることが困難になった私の目は、
家族が今、どんな顔をしているのかもわからない。
ああ、また瞼が重くなってきた。
最近はよく寝ているばかりだ
もう残された時間も少ないのだろう。
不思議と怖いとは思わない。
もう光を捉えることが困難になった私の目は、
家族が今、どんな顔をしているのかもわからない。
ああ、また瞼が重くなってきた。
最近はよく寝ているばかりだ
目を開くとそこは真っ暗だった。
最初は何が起きたのかよくわからなかったが
そうか、視力との別れが来たのか
長い付き合いだった。
この目に色々なものを見せてくれた。
次々と昔見た光景が瞼の裏に映った。
たくさんの光をありがとう。
視力と別れてからは聴力がたよりだった。
声のトーン息遣いで家族の気持ちを察していた。
それも、もうすぐ終わりなのだろう。
音が微かにしか聞こえないのだ
最後にあの曲が聞きたいなぁ
久々に家族へ願いを言ってみた。
すごく嬉しそうな声が聞こえた気がしたよ。
そして
聴力とも別れを告げた。
たくさんの音をありがとう。
視力と聴力と別れたことで
言葉も失ってしまった。
自分が言葉をきちんと話せているかもわからない
家族の言葉も伝わらないし伝えることができない。
言葉との別れはあっけなあったが、
一番おしい別れだった。
これから人生最後の出会いが待っている。
この出会いをみんな恐ろしいと思うだろう。
しかし、私の心は穏やかだ。
もう見えないはずの目には私を思って泣く家族が映っている。
もう聞こえないはずの耳には私を呼ぶ声がする。
もう伝えられるかどうか分からない言葉を口にする。
ありがとう、楽しい人生だったよ。
・・・・・・・・・・・・・・・
そして私は"死"と出会った