演奏するのは彼女だとしても、その他の雑務は山ほどある。

当日に向けてビラを刷って、ポスターを作って、その張り出し許可をもらって、音楽室の使用許可をもらって。

そういう細々とした仕事は大体のところを僕が引き受けてこなした。

結局その音楽室を僕らが使えるのは当日の最終の半時間だけで、他は吹奏楽部や合唱をやる団体に取られてしまった。

体育館の舞台でやれよと思ったけど、そちらは演劇部やミスコンで埋まっているらしい。

それから、僕と彼女は一緒に昼休みを過ごすようになっていた。

イジメ回避のためが八割で、恋人っぽいことがしたいという布川の主張を受け入れたのが二割。

公には、というよりイジメる側には文化祭のための準備と言い訳して見逃してもらった。

彼女らは不満を隠そうともしなかったけれど、文化祭を盾に何とか押し通した。

失敗したら困るのは文化委員である主犯格の彼女で、それが分かる程度の知能はお互いにとって幸いなことに、まだ残っていたらしい。

娘を人質を取られた母親のような怨念こもる視線をもらったので、文化祭以降は布川のみならず僕もその標的に含まれるのかもしれない。

今から憂鬱だった。

その時は一緒にジャズでも聴きましょう


去年の僕をすでに知っている布川はそう言って笑った。

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