幸せショート 第3話

オオバコ カエルッパ






作:三山 冽

キャラクター:かさこ









カエルのカエトくんは、

原っぱにある
お池に住んでいます。



 海のほうに、
お散歩してきました。


 とってもよいお天気です。


 風が吹いてきました。


 海の匂いがします。




青い海に出ました。


うわーっ!

大きいなー!

気持ちがいいなー!


深呼吸をしました。


 目の前に、
砂浜が広がっています。

 波打ち際に向かって、
歩いてゆきました。

 砂浜では、人間が、
竿に何かを干しています。


イカでした。

たくさんあります。


 きっと、あとで
食べるのでしょう。


 カエトくんは、
イカを食べません。


 食べるのは、


 ハエ。

 ケムシ。

 ミミズ。

 バッタ。

 などです。

あんなふうに、
たくさん
干してあれば
いいのになー


と思いました。


いつでも、好きなときに、


食べられるんですから。



しばらく行くと、


別の人間が、
また何かを干していました。





サカナです。

たくさんあります。




カエトくんは、
サカナも食べません。



他に好きなものは、


 イモムシ。

 クモ。

 コオロギ。

 などです。



美味しいもののことを
考えていると、
唾が出てきました。




 グーッ。



 おなかが鳴りました。







それからしばらく行くと、

またまた人間が、
何かを干していました。



 おうちの前です。
お店のようです。



 カエトくんは、見て、




うわわっ!



びっくりして、
心臓が止まりそうに
なりました。





竿に下がっているのは、
何十匹という

カエルでした。




ひどい!

なんで、
ぼくの仲間を、
そんなふうにするの?


悲しくて、

悔しくて、

涙が出てきました。


干している人間に、

腹が立ちました。





 でも……。







さっき自分は、

大好きな食べ物が、
あんなふうに下がっていれば
いいなと、思ったのです。


 海に住んでいる
イカやサカナたちも、


仲間が
干されているのを見たら、

悲しんだり、

怒ったり、

するのでしょう。



 カエトくんが好きな、


ハエや

イモムシや

ミミズも、


同じように
思うのでしょう。



 でも、食べなければ、



生きてゆけません。




みんな、
おんなじなんだ

カエトくんは、

淋しい気持ちで、
仲間たちを
見上げました。



真っ赤な夕日が、
海に落ちようと
しています。



 暖かくて、
大きくて、力強い、


お日さまです。





 じっと見ていると




そうだよ。
みんな、
おんなじなんだよ


と、



お日さまが言いました。






夜になりました。



真ん丸お月さまが、
出ています。



金色で、静かで、

優しい光を、

投げかけてくれています。






そうです。

みんな、

おんなじ

なんですよ

と、お月さまが
言いました。


カエトくんは、

なんだか安心して
しまいました。


まぶたが
重くなってきて、

柔らかそうな
葉の陰で、眠りました。



葉は、
そろーっと
下がってきて、


カエトくんの
おふとんに、
なりました。



オオバコです。






カエルッパ、
ともいいます。



カエルを
元気づける葉っぱです。









おしまい










作:三山 冽

キャラクター:かさこ



幸せショート第3話 オオバコ カエルッパ

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