卒業証書を天に伸ばした先輩は晴れやかな顔で笑っていた。

出会いがあれば別れもあるものよ

 これが学校の先輩として聞ける最後の話かもしれないのに。

 私は頬をつたう涙を拭う。これじゃどっちが卒業生かわからない。

そんなこと言って。これでお別れなんて寂しいです

 先輩は初めて会ったときと同じようにふわりと笑った。

どうせ可愛い後輩の顔見たら、私のことなんて忘れちゃうわ

 その時の私はその笑顔にうまく答えられなかった。それからいくらかの時が過ぎて、また桜が舞い始めた。

あの、その

 ふわりと笑う。

新入生? 緊張してる?

 桜の舞う渡り廊下ですれ違った彼女の顔を私は見た。伏し目がちに見つめる顔は期待と不安で満ちみちて、今にもあふれ出しそうになっている。

先輩、これから、よろしくお願いします!

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