教室の窓は俺と世界を隔てて薄く透けていた。
教室の窓は俺と世界を隔てて薄く透けていた。
外では蝉が鳴いていて、涼しい室内では教師が喚いている。
俺は窓の向こうに世界を見ていた。
今日から二学期が始まる。
日常が、始まるのだ。
窓に映って、教室の中が見渡せた。
教師が教壇の上から生徒を数人並べて怒鳴っている。
ふいに目があった。
窓ガラスに映る。二つ前の席の女の子だ。
困ったような笑みを浮かべてこちらに同意を求めている。
や な く う き
俺は窓ガラス越しに肩をすくめる仕草を返した。
それだけで伝わる。幼なじみだからかもしれない。
沙希は委員長なんて務めてるくせに優等生らしからず、教師の説教中に文庫本を取り出して読み始めた。
俺もまた視線を外に逃がす。
彼女は俺の幼なじみだ。名前は天河沙希。
生まれた時から家がお隣さん。
長い付き合いだ。
怒鳴り声。
どうやら長期休暇の宿題の数が揃わなかったらしい。
俺のもさっき集められた。
もちろん、きちんとやってあるやつをだ。
つまらなかった。
そんなくだらないことで世界の終わりみたいに怒鳴りちらす教師も、くだらないことすら片付けられないやつらも、そんなのに付き合わされる俺も。
つまらなかった。
死ね。