ー10年前ー
ー10年前ー
やーい、お前の家って、お金持ちなんだろ!?
だったら、うまいものでも持って来いよ!
そうね、私はゴ○ィバのチョコレートが良いかしら!?
だったら、私は…
…
小学校の教室の隅っこに追いやられた美姫が、数人のクラスメイトに囲まれている。
…
家が近所で幼馴染みの美姫が、クラスメイトにいじめられているというのに、俺は助けに行けずにいた。
…かわいそうに…あの一団に睨まれたら、おしまいだよな
下手に関わったら、私たちまではぶられちゃうし…
状況がわかっていて、誰も動こうとしない。
先生に言いに行けば、後から『チクった』とも言われかねない。
おい!黙ってないで何とか言ったらどうだよ!
…お願い、やめて!!
…やめて!ですって!?あなた状況分かっているの!?
私たちの言うことを聞かないとどうなるか、一回味わってもらおうじゃないの!
美姫ににじり寄る一団。
もう、見て見ぬふりは限界だった。
…やめなよ
立ち上がり、彼女の前に立つ。
あ?なんだよてめー
か、彼女が嫌がっているじゃないか
俺の言葉と共に、美姫をいじめていた集団が笑い出す。
なによ!彼女がいけないのであって、私たちは悪くないわよ。
そーそー。この子お金持ちなんだって。だから、少しくらい私たちにおいしいもの食べさせてくれてもいいじゃない
そして再び笑い出すいじめっ子集団。
…言っていて、恥ずかしくないんだろうか?後ろを見ると、美姫はおびえていた。あまりいい気分ではない。
ここで、俺は反撃に出てみることにする。
…可愛そうに
笑い声が止まる。
は?
だってそうだろう?お前らおいしいもの食べたことないんだろう?家が貧乏だから。だから自分の家より裕福な林さんに、食べ物を恵んでもらおうとしているんだろう?
一団が一気に皆黙り込む。なんて返そうか言葉を選んでいるようだ。
なんだかそれって、この間授業でやった”乞食”みたいだなと思って
なんですって!
ドアの開く音が教室に響き渡る。
おい、お前ら!聞いたぞ!!林を皆していじめているそうじゃないか!
あのときのまーくん、かなりかっこよかったよ!
ありがとう、でもな…
もし、その場に俺がいなかったらお前はどうしてた?
えっと…それは…
そのまま何もせずに黙っていたかもしれない…
美姫は俯いてそう答えた。
あれは確かに周りが悪い。だけど同じことが起こった時に対処できるのは、自分自身しかいないんだ…
…そうね…
…ところで、今大学に通っているんだよね。調子はどうだい?
うん、今はすっごく楽しんでるよ♪
ちなみに、まーくんはどうしてるの?
俺は…
雅臣は現在の自分をどう説明しようか悩んだ。
専門学校をこの前卒業したんだけど、就職に失敗してしまって
あ...そうなのね...
それで、今は?
今は、就職失敗のショックからの病み上がりだから、専門時代にやってたバイトは辞めてて…そろそろ探そうかと思ってる
…またやってしまった。バイトを探してるなんて、嘘だ。
どうして、俺は美姫の前で見栄を張るようなことを言ってしまうのだろう。
すると、美姫は何かを閃いたように、こう答えた。
じゃあ、私が働いてるカフェに応募してみない?
え…?
カフェか…。 カフェ俺には向いていない気が……。あ、でもホールだったらいけるかも…うーん。
まーくん?私、またまーくんと一緒に色んな事したいなぁ。
うーん…。まぁ、考えとくよ。
そう…。じゃあ、考えといてくれると嬉しいわ!
俺は彼女が帰った後、部屋に戻り、彼女が働いているカフェについて考えていた。
…どういうカフェなんだろう。
俺はパソコンを開き、検索して見ることにした。
…えーと、確か‘‘Dream Memory’’っていう名前だったかな。
これか。
検索してみた結果…検索結果の一番上に出てきた。
即座に俺はクリックをする。
これって…美姫!?
画面には、いかにも『お洒落な街角のカフェ』という外観が映し出され、テラス席に座った客にコーヒーを提供している、美姫の姿が映し出されていた。
…まぁ、美姫、可愛いから、モデルとして起用されても可笑しくなさそうだし、な…
その後、俺はそのカフェの店内画像やメニューなど、一通りページを閲覧し、情報を確認した。
…よし!ここは一念発起して、応募してみるか!美姫とも話せるようになるし…
翌日、俺は美姫とあんまんを分け合った、あのコンビニに行くことにした…
第6話に続く