申し訳ございません。現在あんまんの入荷が交通事故により遅れていまして

 残り1つとなっております。

雅臣

...

 いや、在庫ぐらい確認しておけと言いたい。
それに加え一個しかないなら、お勧めするべきではないだろうに…と思った。

雅臣

一個しか無いならお勧めしないでください。

申し訳ございません。当店のアルバイトの仕事の一部でして...

しばし流れる沈黙。

仕方ない。ここは隣の子に譲ろう。

ほかにも商品はあるんだ。

雅臣

なら、俺にはこっちの唐揚げください。
あんまんはそちらの女性に。

 正直食べたかった物が手に入らなかったのは残念だが、そう口にした。

申し訳ございません。唐揚げお1つですね、ありがとうございます。

 唐揚げの入った袋を手に下げ、店を後にしようとする。

美姫

あの、待ってください

雅臣

...はい?

美姫

ここのあんまん、好きなんですか?

雅臣

ええ、まあ好きですけど

 嘘をついた。

 ここのコンビニのあんまんは初めて買う。

美姫

譲ってくれてありがとうございます!ここのあんまん大好きなんですけど、人気ですぐ売り切れちゃうんですよ!

 そう言いながら、彼女は俺の手を握ってきたので、俺の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

 な…何でこんなにドキドキしているんだ?しかも、体中が熱い…。もしかして…、これは俺の好きなアニメの『出会いは唐突にコンビニから…。』の好きなキャラ『城谷さん』の出会い方と似ている…。

 確かに、城谷さんに少し似ているのかも…。どうしよう、ニヤニヤが止まらない…

美姫

あの~、どうかしましたか?

雅臣

あ、いやいや何でもないですよ…。そ、それより良かったですね。

美姫

本当に有難う御座います!!

(とびっきりの笑顔)

"ぐう~"

 やばい、思いっきり腹なったし…。彼女見てるし…。

美姫

お腹空いてたんですか?すみません…。

雅臣

いやいや、大丈夫ですよ。俺、唐揚げあるし。

美姫

でも…。あっ!!じゃあ……はいっ!!半分こです!!

雅臣

えっ…、いや、でも…

美姫

でも好きなんですよね??だから、半分こ!!

 嘘で好きなんて言うんじゃなかった…。申し訳なさすぎる。でも、こんなかわいい子から貰えるなんて最初で最後かもしれないし…。

雅臣

じゃ、じゃあ…頂きます。

美姫

はい!

 その時だった。彼女の手に俺の手が重なってしまった。

 まただ…。また、俺の心臓の鼓動が増した。

゛ドクンドクン゛

…このままでは彼女に聞こえてしまうんではないだろうかというくらい…。

美姫

では、またどこかで。

彼女は笑顔で頭を下げ、お店を出てしまった。

…俺は半分のあんまんを見つめながらこう思った。このまま別れてしまって良いのだろうか…?

俺はお店を出て、彼女を追った。


すると…彼女はコンビニを出てすぐの横断歩道で信号待ちをしていた。

雅臣

あのっ!

俺はいつの間にか彼女を呼び止めていた。

美姫

…はい?あっ…さっきの…。

どうされたんですか?

雅臣

…よ、良かったら、一緒に…あんまん食べませんか?

(…って俺は何を言っているんだ!?)

自分が言った発言に俺は顔が熱くなった。

(どうせ…断られるんだ…落ち着け。)

すると…彼女は

美姫

喜んで…!

と微笑んだ。

雅臣

…あ、あそこで食べませんか?

 俺は震えそうになっている全身を必死で堪えながら、桜並木が綺麗な土手を指差した。

美姫

良いですね!私、ここの桜並木、大好きなんです!!

 タイミングよく、信号が青に変わる。

美姫

行きましょう!

雅臣

えっ!?

 俺はコンビニで彼女から食らった不意打ちを、再度食らうことになった。

 彼女は俺の手をしっかりと握り、青になった交差点を俺を誘導するような形で桜並木に向かい歩き出したのだ。

 再び、俺の心臓の鼓動が早くなる。

雅臣

落ち着け…落ち着くんだ…

 そして、俺の鼓動が高まったまま、橋の中央に差し掛かったその時…

 手で繋がれた俺と彼女を、突風が襲いかかる。

 だが、次の瞬間…

美姫

ねぇ!見て…

雅臣

!!

 突風に煽られ舞い上がった無数の桜の花びらが、橋の中央で立ち止まった2人を包み込んだ。

第3話へ続く…

第2話「胸の鼓動」(担当:鬼島 百名)

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