漸く、このクラスともお別れか・・・

卒業式が終わり、3年C組は疎らに人がいるばかりだった。

実をいうと彼はこの三年間、同じクラスの幼馴染に告白をしようと一大決心をしている。
両ほほを叩き、彼女の席まで重い足取りで進む。

~でね、今晩家で卒業式のお祝いでなんでも私の好きなもの食べれるんだ。

ふーん、そういえばそうと、あんた言ったの?

友人の言葉が胸に突き刺さり目を泳がせる幼馴染。
誰かに告白する予定だったのか

い、言えるわけないじゃない!だって、だって・・・・遠距離になるわけだしその。

友人が彼に気が付いたのかにやにやと幼馴染の肩を押す。

噂をすれば、ホラ、王子様のご登場だよ。
行った行った。

後はごゆっくりーと教室を二人して追い出された。

え、えっとあの伝えたいことがあるんだけど

う、うんなにかな?

緊張してとりとめのない話を切り出した僕。それでも彼女は真剣に聞いてくれた。

もしも、もしもだよ。この先ずっと腰のまがったおばあちゃんになっても君のことをいつまでも好きでいる自信があるって言ったらドン引きする?

しばしの沈黙が流れ、顔が熱い。
彼女は下を向いて耳まで真っ赤にして小さな声で答えた。

私が先に言うつもりだったのに・・・
ずるいよ。
でも、よく聞いて、私あんたのこと好きだけど来年から遠いところに引っ越すのだから

だから?

あーもう!じれったい。
だから、大学卒業するまでこっちに戻ってこれないからその時までとっておこうと思ったのに!

ご、ごめんなさい。

彼女の気迫に負け、あやまると彼女は笑って僕の手を取り駆け出した。

お別れするまでデートとかしたくなかったんだけど気分変わったから付き合ってね!
私、遠距離恋愛なんて無理だから今日だけ特別お試しでね。

彼女が隣にいないと何もできない自分。だから遠距離恋愛なんて無理だった。
だからこれが最初で最後のデートなんだ。

やれやれ、漸く付き合ったかあのバカども・・・

数年後、教室の目の前で公開告白した二人の武勇伝が語り継がれていることを知る由もないだろう。

もしもの話

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