自分は生まれた意味をいつも探している。時よりボーとしては、ねじの切れた人形のように動かないで考えている。生まれてから十年以上経つが、まだこれといって答えを見つけ出すことが出来ていない。
自分は生まれた意味をいつも探している。時よりボーとしては、ねじの切れた人形のように動かないで考えている。生まれてから十年以上経つが、まだこれといって答えを見つけ出すことが出来ていない。
生まれてきたからには何か使命が与えられている、と誰かが言った。確かにそういう風に言っておけば、自分は無価値に生まれていたのではないと思える。
ただし、いつか気づく時が来るのだ。使命なんて存在しない。ただの綺麗事だったんだって……。
そこいらの人間なんてそんなもんだろう。綺麗事を並べ、善行を重ねているように周りに見せつけ、腸を覗いてみれば穢れに穢れていたという落ちが。
だから自分はこう結論付けた。隠すことは醜いこと。穢れていることなんだって……。現に目の前で寝ている夫婦は、表向きは子供思いで、人柄も良く、近所の評判だった。愛想の良い笑顔はそれはそれは幸せの象徴だったとさ。
が、そんな幸せなストーリーも蓋を開けてみるとあらびっくり。
子供は夫婦のストレス発散の道具でしかなったのです。髪を引っ張られたり、腹を踏みつけられたり、挙句の果てにはレイプされかけたりと……なんとも嘆かわしいね。
今回そんな他人の家事情に詳しい自分がここにいるのは豪華な家の一階。家主である彼らには失礼な態度されたが今は大人しくなってもらった。大理石の床に広がるのは真っ赤な絨毯。時間が経てば経つほど、その色は汚くなっていくが今なら十分問題ない。天井の明かりで美しい赤色をしている。
ま、腸は真っ黒だけどね
ふかふかのソファから立ち上がり、家の中を荒らして回る。こっちの目的は殺しだけじゃないからね。もちろん、金銭はもらっていくよ。
自分はただ殺したいだけの異常者ではないからね。ちゃんと目的があって人を殺して、金を持っていく。
ある押し入れの中を探っていると、写真立てが出てきた。中には四人の家族がニコニコとこちらを向いて笑っている写真。皮肉なものだね、事情を知っていると。
自分は写真立てを適当な場所に投げた。どちらにしろ、こんな家にはもう用はない。後ろからパリンッとさっき投げた写真立てが割れる。
自分は再びリビングに戻ってきた。あらかた家じゅうの金銭は取りつくした。あとはここから出るだけ。予め持ってきておいた黒の手提げカバンにお金を詰め込み、準備に入る。
だがその前に。
お腹空いたなー
お腹がグゥと唸り、食料を要求する。自分は鼻歌混じりに冷蔵庫へと向かい中を開ける。中に置いてあった適当なハムやソーセージを手に取り、口に運ぶ。
うわぁ……つめたっ
そんなことを言いながら、水の入ったペットボトルを手に取り、キャップを外してから一気に飲み干す。まるで獣のような食べ方だけど、呑気に皿に盛りつけてる暇なんてないよね。こうしている間にもご近所さんが異変に感づいてくるかもしれない。
ある程度お腹の方も膨れたら、ごみをゴミ箱に処理していく。
そしていよいよ、リビングに戻り、カバンを持ち上げる。
んんーー!!
おっと、目を覚ましたようだ。自分は膝に手をついてその人に声を掛けた。その相手はここの家の夫人。饒舌な彼女は明るく、しかもその美貌から地域の人気者だった。だが、家では子供に対しての彼女の口ぶりは明らかに醜くかった。
お前は生まれてきたのが間違いだった。産むんじゃなかった。このクズで鈍間が、親を労わることもできないクズが。死んでしまえ。彼女の暴言の荒らしは迷惑どころか公害レベルで耳障りだった。
だが、彼女の口にはガムテープが貼ってある。これなら声は上げれても喋ることもできない。それに両手も腰の辺りにロープで縛って、足も使えなくしておいた。
どう?お体は
う……ううぅ……!!
必死に何かを訴えているように見えるが自分には何が言いたいのかさっぱりだ。涙で顔をクシャクシャにして体を芋虫の様に動かすが進む事もできない。
子育てってさぁ、大変なの?
そんな彼女にふと疑問に思ったことを聞いてみた。この夫人は腹を痛めて産んだ子供に対して、ぞんざいな扱いをした。そこにあるのは無意味で損しか生まない結果にも関わらずだ。
んーー!!
夫人は頑張って声を上げる。時には顔を振って伝えたり、時には目をぐるぐる動かしたりと答え方を変えて伝えようとしているが、自分はそれを聞くつもりはなかった。
これは一方的な質問だ。ただ質問して、相手が反応するのを見るだけ。相手が答えたからって特にどうこうするつもりではない。
旦那さんと自分、一人を助けてやるって言われたら誰を助ける?
んーーーんーーん!!
即答だった。まさに人間の本性とはこういう時に出るものだ。この女は何より愛していたはずの夫よりも、自分を助けてくれと要求してきた。
ぷっ
思わず吹き出しそうになる。滑稽でしかなかった。だって、散々仲良く子供をいたぶっていたのに、いざ自分の身が危なくなったら大切な人をすんなりと差し出すのだから。
ねぇねぇ、隣見てみて
夫人は一瞬呆然とした表情で自分を見た後、彼女は隣へと視線を移した。そして表情を一変させる。そこには見捨てられた夫の鬼のような顔があった。
自分と彼女との質問との間に彼も意識を取り戻していた。夫は顔を真っ赤にして、恨めしそうに夫人を見つめる。
……ッ!!
うぅぅぅ!! ううぅぅぅ!!
脅えた顔をする彼女に夫は体を動かそうとする。しかし、彼も夫人と同じ状態になっているため、動こうにも動かせない。挙句の果てには両者共、自分の意見を押し付けるように言い合う。何を言っているか分からないが、それはもう滑稽だった。
だが、このままにしておくのは可哀想だ。ここは元凶の自分が彼らのよりを戻す手伝いをしよう。
喧嘩はダメだよ。仲良くしなきゃ
しかし、自分が言っても彼らの声は収まりはしない。未だに意味の分からない言葉を発してお互いを蔑み合う。予想通りの反応だった。自分は膝から手を放し、腰を上げる。
仕方ないなぁ、じゃあちゃんと話せる場所に連れて行ってあげるよ
そう言いながら、自分はこの二人に手を伸ばす。この時でもお互いの罵声は響き合っていた。