これが大ナマズ…っ!!
とてつもない大きさだ…
こんなもの3人だけじゃ、到底動かないぞ…
動いてる…!
寝返りの真っ最中ってわけだ…
寝相の悪いナマズだこと…
そりゃ、こんなにゴツゴツした岩盤が寝床じゃ仕方あるまい…
朝華。とりあえず、ZZZチェンジだ。その方がパワーは出る
そうね
ZZZチェンジ!
なにそのコスプレ
やっぱハズい…
それ眠井博士の趣味ですか?
…うるさい
なにもしないわけにはいきませんから、押してみましょう
絶対、動かないよ…こんなの…
じゃあいきますよ!…そーれ!
〜10分後〜
無理!
壁押してるみたい…
他に手段は…
めええええ
めええええ
名状しがたい禍々しさですね、この羊…
さっきから数が増えてる…。夢と現実の反転が完了しつつあるのか…
…イイユメシープ
…
そうだ!
どうかしたか、朝華?
イイユメハンマーでナマズを叩くの! 刺激を与えれば、逆方向に寝返り打つかも
…ほう! 名案かもしれん
でも、その程度の刺激では、このデカいナマズは…
イイユメシープを複数個集めて、ひとつのハンマーを作れば!
なるほど。大きさも威力も倍増だ
では急いでハンマーを!
いつもより大きめに作っております。
重い…
よし! これならいける!
朝華、任せたぞ!
おっけー…
おりゃああああ!!
ちょっと、動いた!
もう1発だ!
それっ!
あ、また逆方向に戻っちまう!
だめだめだめ!
よし!その方向だ!
なんだろう…。モグラ叩きみたいだな…
連打だ!
いくよぉ〜!
やった! 元の方向に寝返りを始めたぞ!
よかった…。……しかし
どうしたの? 半津賀博士
今回、元の方向に戻ったとしても、またすぐに寝返りをしてもらっては困る…
そうだな…。少なくともあと数百万年は静かに眠っていてもらわないと…
どうすれば…
寝相の悪いナマズだこと…
そりゃ、こんなにゴツゴツした岩盤が寝床じゃ仕方あるまい…
それだ!
イイユメシープって、ハンマー以外も作れるんでしょ?
…まあ。
ハンマーが物理的攻撃には1番効果的だったからハンマーにしただけで、本来は“イイユメツール”だから…
布団をつくるの!
…布団?
イイユメシープのふわふわの羊毛で、寝心地のいい寝床を作ってあげるの
なるほど、それならしばらくナマズの寝相も…!
グッドアイデア! さすが私の娘だ!
じゃあイイユメシープを集められるだけ集めて!
これだけか…。まあ十分だと思うが…
少しずつイイユメシープの数が減ってる…
夢と現実が元に戻りつつある証拠だ…
てことは、お父さんとも…
…早く布団を作ろう
…うん
クッションじゃないよ布団だよb
できた!
どうぞ! 大ナマズさん!
これでいいのよね…?
僕らにできるのはここまでだ…
…さあ、帰ろう
お父さ…
!?
朝華…。どうやらお別れのようだ…
そんな…
また夢で会えるさ
ほんと…?
…
…1人にしないでよ!
大丈夫…。もう朝華は1人じゃない
…
早く帰りなさい。みんなが待ってる…
じゃあな…
お父さん…っ!!
おりゃああああ!
あれ…?
あれ? 怪人たちが消えていく…
もしかして、朝華さんたちが…
うわああ!
鉄モグラ!
…ただいま!
ねむたん!
朝華さん!
無事でよかった…
…ということはうまくいったのね!
うん
あれ…? チーシャは…
…
…そっか
…大丈夫。また、夢で会えるから
まあなにはともあれ、一件落着ね!
はー…。疲れた…。ヒーローごっこは向いてないわ
よく言うよ…。ノリノリだったくせに…
さーて! いつも通りの現実が戻ったことだし『ソルティ・パンプキンズ』のライブ行こうー
チケット…チケッ
…ない!
なんで!
あれは一時の夢だったのよ、残念
悪夢以外は元に戻らなくてよかったのに!
ちょっとだけ夢側に寝相を傾けておけばよかったかもね
そうね
ところで東城
ん?
鉄モグラ出発直前の“あのセリフ”は、告白ってことでいいのよね?
え、あ…なんのことかな…
とぼけるな! 私はちゃんと聞いたからね!
私も聞いたぞー
僕も聞こえたな
え…っ
じゃあ、朝華さんも…
お断りします
え…
…
どんまい! 東城!
血も涙もないな
まあそれが朝華さんらしいと言えばそうなんだけど
うふふ
うわあああ!なんでだよぉおお…
弱虫は嫌いよ…?
…うぅ
いつも通りの日常が戻ってきた。
あれから私は、
久しく見ていなかった夢を
また見るようになった。
子供の頃見たのは、
嫌な夢ばかりだったけど、今は違う。
空は澄んでいて、
暖かい大地には
草木が青々と茂っていて、
美しい建物がそびえていて、
そして賑やかな仲間もいる。
めええええ
…こいつさえ出てこなければ、
完璧な夢なんだけど。
でも、見ているうちに少しだけ
可愛く見えてきた …気もする。
あれからチーシャには会っていないけれど、
きっとまた会えると信じてる。
この羊を羊飼いみたいに追っかけたら、
チーシャのところに
連れてってくれたりしないかな。
いや、きっと羊は何も知らない。
今日もまたいろんな人の夢の中で、
自分勝手に跳ね回るだけだ。
羊毛フェルトは未だに下手だ。
さすがに少しは上達したと思うけど、
お母さんにはまだまだ敵わない。
いつか、お母さんみたいに…
?
あれ…なんだろう…
あ…
…
…今度はもっと上手に作ってあげるからね
『眠井朝華はフエルト羊の夢を見るか?』