エクリール

おい、朝だぞ

ZZZ………

エクリール

………こいつの寝起きの悪さは相変わらずか

一向に起きない主人を見て、エクリールはあきれてため息をつく。
仕方なく耳栓を着け、机の目覚まし時計をつかむ。

そして、杖を持っていない方の手で思い切り分投げた。

大きな音と共に、実験器具が何個か吹き飛んだ。
時計は原形を保ちつつ、ねじが何本か抜け落ちた。

エクリール

……………………………

エクリール

爆発するんじゃないのかよ…………

耳栓をする必要もなかったなと、エクリールは線を外しながら思う。
しかし、なんだろうこのフェイントは。
嫌がらせのつもりだろうか。

う…………う~ん

エクリール

まさか、今ので起きたのか?

我が主としては、だいぶ眠りが浅い方か。
ともあれ、これでようやくサジェス・エフォールの朝が始まる。

サジェス・エフォール

やあ、デュレ。おはよう

デュレ

サジェス…………君を探してたんだ…………

サジェス・エフォール

ボクをかい?

デュレ

昨日のあの合同実験だよ………。火は水にあたると消えるのは知ってるけど、なんで水が熱せられると消えちゃうの…………。もう理解できなくて…………………

エクリール

夜通し考えていたのか?

デュレ

はは…………ははは…………………

どうやら、図星のようだ。

アルエット・コネッサンス

おはよう、サジェス

サジェス・エフォール

アル!どうして学園に?

ランセ

こりゃ、まだサジェスは寝ぼけてるな

アルエット・コネッサンス

ちょっと前に、特別優等生として学園に復帰したのよ。アプレさんの特別顧問も兼ねてね

アプレ

アルエットさんの教え方すっごく上手くて分かりやすいです!あの風の神童に教えてもらうなんて感激です!!

そういってアルエットの周りをくるくる回るアプレ。
アルエットも人と接するのが怖くなくなったのか、アプレをニコニコしながら見守っている。

しかし、魔法の依頼はサジェスと二人で受けている。
エクリールとの仲も良くなり、アルエットの世界もとてもきれいに彩られてきていた。

バティール・ヴァルテュー

おはよう、みんな

デュレ

おはようございます

サジェス・エフォール

おはよう、バティール学園長

バティール・ヴァルテュー

今思ったけど、私の名前が呼ばれたのこれが初めてじゃない?

バティール・ヴァルテュー

サジェスちゃん、時間は大丈夫なの?今日から来るんじゃなかったの?

サジェス・エフォール

えっ……………ああっ!!

サジェス・エフォール

ヤバいよ!もうすぐ来ちゃうじゃん!朝ごはん食べていないのに~!!

バティール・ヴァルテュー

分かってると思うけど、優先順位は朝ごはんよりお客さんよ。早く玄関ホールに行きなさい

サジェス・エフォール

ご飯食べたかったのに!行くよ、エクリール!!

エクリール

あ、ああ…………

本当に半泣きで食堂から出て行ってしまうサジェス。
主人を追いかけようとするエクリールに、学園長が言った。

バティール・ヴァルテュー

サジェスちゃんとの仲、心配いらなさそうね

バティール・ヴァルテュー

一時は本当にどうなるかと思ったけど…………

エクリール

………ええ

エクリール

皇太子には…………感謝しています

エクリール

あの人の計らいで、私は今もサジェスの傍にいられるのですから

エクリール

元々、サジェスに監視をつけたのも、諸外国からの干渉を避けるためのフラッペ元騎士の勝手な指示でしたから

バティール・ヴァルテュー

でも、そんな軍人の貴女ですら友達として接してきた。あの娘は本当に人を引き付ける魅力があるんだと思う

バティール・ヴァルテュー

けど、ペルラン皇太子殿下も分からないわね………。あくまで軍の所属としながらも、貴女を完全なサジェスの従者という任務に就かせるなんて

エクリール

きっと、それも他の国の間諜に対するけん制でしょう。なにせ、サジェスやアルエットを狙う可能性も無くなってはいませんから

バティール・ヴァルテュー

…………にしても、随分素直に笑えるようになったわね

エクリール

そうですか?

バティール・ヴァルテュー

ええ

サジェス・エフォール

はあ……はあ……間に合った…………

シャンス・スーリール

…………サジェスさん?

サジェス・エフォール

間に合ってなかったか……

シャンス・スーリール

どうかしました?もしかして、忙しかった?

サジェス・エフォール

いやいや、こちらの手違いさ。気にしないでくれたまえ

シャンス・スーリール

なんですか、その変な声……

サジェス・エフォール

ともあれ、退院おめでとう。体はもう大丈夫かい?

シャンス・スーリール

ええ。風邪が思ったより長引いちゃって、ついでだから完治してから退院してねってフェイールさんに言われて

シャンス・スーリール

だから、今はとっても元気です!

サジェス・エフォール

良かった

シャンス・スーリール

それでサジェスさん、この前もお話しましたけど…………

シャンス・スーリール

私を、サジェスさんの助手にしてください

シャンス・スーリール

正直、今でも魔法が憎いです。でも、サジェスさんがあの時見せてくれた景色が忘れられなくて………

シャンス・スーリール

私も、魔法の可能性を信じてみたくなったんです

シャンス・スーリール

魔法もあまり使えないし、サジェスさんほど頭も回らないけど………どうか、お願いします

そういって、深々と頭を下げるシャンス。

サジェスはそっと、彼女の肩に手を置いた。

サジェス・エフォール

いいに決まってるだろう?

シャンス・スーリール

えっ………

サジェス・エフォール

事情も聞いてるし、発火魔法を専攻していたんだろう?なら、ボクが教えられる

サジェス・エフォール

魔法を憎む気持ちも分かるよ。だから、リハビリ感覚で少しずつ魔法に触れていこう

シャンス・スーリール

………はいっ

サジェス・エフォール

さて、今日は何を研究しようかな~

世の中には、二種類の人間がいるとされる。

凡才と天才。



別に凡才だから、天才だからと言って差別するつもりはないが、私はこう思うのだ。


凡才と天才で区別するなら、サジェス・エフォールは間違いなく天才であると。

The End...

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